(文/論説委員・橋爪充 写真/写真部・久保田竜平)

特集「うたのことば」、第2特集「ハン・ガンを読む」だが、とにかく静岡県ゆかりの方が次から次に出てくる。源義経の生涯をたどる町田康さん(熱海市)の連載「ギケイキ」は第50回。奥州平泉で義経弁慶がいよいよ追い詰められている。2016年に単行本が発売された同作だが、完結の第4巻が出る日が近いのかもしれない。
短期集中連載と銘打ち、2025年の「しずおか連詩の会」に参加した星野智幸さんとシン・ミナさんの往復書簡。シンさんは2025年の夏に東京にある程度長く滞在していたようで、星野さんと何度か面会の機会があったようだ。直接意思疎通を図った相手が、いま目の前にはいない。お二人は、往復書簡という手段で互いの「不在」に向き合いながら自分を見つめ直す。相手のために費やしただろう時間の長さに気付き、やりとりそのものがいとおしくなった。
「しずおか連詩の会」(町田さんも参加していた)関係で言えば、2024年に静岡に来てくれた佐藤文香さんが「わたしたちを揺さぶる『うたのことば』」というアンケートに答えている。池田澄子さんの「月」にまつわる句を紹介。キリッと前を向くような態度がすがすがしい。恥ずかしながら、知らない俳人だった。句集を読むことにする。
同じアンケートに坂本慎太郎さんの「まともがわからない」を挙げているのが、ミュージシャンの崎山蒼志さん(浜松市出身)。意外な組み合わせ、そしてこの作品に出会った場所が浜松であろうことがうれしくなる。崎山さんは「きっかけ」と題した「これぞ随筆」といった文章も寄せている。現在の生活、日常を淡々と。ご自分の心の内を偏りなく分析している。
目玉は「ハイパーたいくつ」で第61回文藝賞に選ばれた松田いりのさん(浜松市出身)の受賞第一作「ハッピー山」だ。「ハイパーたいくつ」と同様に、いたって普通の世界がどんどん「ありえない世界」に変わっていく。前作に比してその加速度が増しているし、松田さんらしい「笑い」のキレも相変わらずだ。
自意識過剰な女子が、大学入学を機に知り合ったイケてる人々とキャンプに行く話なのだが、キャンプ場についてからの顛末は、どんどんホラー味が加わっていく。でも笑える。愉快。小説で描かれる世界が現実でなくて良かった、と思う半面で、ここに入り込みたいという気持ちも湧いてくる。引き裂かれた気持ちをどうしてくれるんだ。そんな気分で読み終える。傑作だ。






































































