~経験を力に。定年後のキャリアと生きがいを見つける「T活」のすすめ~

「定年後の時間、あなたはどう過ごしますか?」
人生100年時代と言われる今、多くの人がこの問いと向き合っています。「セカンドライフ」という言葉に胸を躍らせる一方で、「シニア」や「老後」といった言葉に、どこか寂しさや戸惑いを感じる方もいるかもしれません。しかし、人生100年時代と言われる現代、定年後の時間は新たな可能性に満ち溢れています。
そこで、50代から定年後の生き方を考える活動を「T活(ティーかつ。定年活動)」と名付けました。このコラムでは、SBSラジオ「鉄崎幹人のWASABI」と連動し、T活を通してユニークな定年後を謳歌している方々を紹介します。諸先輩方の生き方を知り、定年後の夢を膨らませてみませんか?
4回目のラジオインタビューでは、「定年後のイメージを、もっとポジティブで創造的なものに変えたい」と、静岡で新たな挑戦を始めた女性たちを取り上げます。静岡フィナンシャルグループの社内ベンチャー制度を活用し、新たな事業を立ち上げようと奮闘する、静銀総合サービスの大西典子さんと鈴木久乃さんです。
お二人の活動から、これからの定年後の活動「T活」を豊かにするヒントと、新しい時代のキーワード「マチュア世代」について探ります。
きっかけは現場の声。「心のサポート」を事業に
大西さんと鈴木さんが立ち上げようとしているのは、キャリアコンサルタントや心理カウンセラーの資格を活かし、企業で働く従業員の心をサポートする事業です。企業と従業員に寄り添う、具体的なサポート体制
この事業は、将来的にしずおかフィナンシャルグループの取引先企業で働く従業員の方々を対象としています。企業単位で契約を結び、従業員は対面での面談やオンラインでのカウンセリング、研修などを利用できる形です。現在は事業化に向けた準備段階として、静銀総合サービスの役職員を対象に「社内カウンセリングルーム」を開設し、運営ノウハウを蓄積しています。
お二人は現在、静岡銀行本部タワー内の本社に出社して業務を行っていますが、「ご用命があればどこへでも参ります」とフットワークも軽く、今後の活動拠点も柔軟に考えているそうです。
「仕事の悩みはもちろん、ご家庭のことやご自身のキャリアについてなど、何でもお話しいただき、専門的な知識でサポートしたいと思っています」と大西さんは語ります。
鈴木さんは、「社内の人間には相談しにくい、評価に響くのが怖い、という声は少なくありません。第三者の私たちだからこそ、安心して話せる場を提供できるのでは、と考えました」と、事業への想いを明かします。職場の人間関係から夫婦関係の悩みまで、実際に多くの相談が寄せられ、「話を聞いてもらえて良かった」と涙を流す方もいるそうです。
「このままでいいの?」自分への問いかけが原動力に
お二人が専門的な資格を取得し、この事業を志した背景には、それぞれ強い想いがありました。大西さんは、子育てをしながら難関の国家資格に挑戦する同僚の姿に衝撃を受けました。
「彼女の姿を見て、『私、このままでいいのかな?』と自問自答しました。そして、今の仕事に活かせるキャリアコンサルタントや、人の心と脳の仕組みを学ぶNLP(神経言語プログラミング)などの勉強を始めたんです。」
一方、鈴木さんは人事部の相談室で働いた経験が原点です。
「病気の治療と仕事の両立で悩む方など、多くの方と面談する中で、自分の経験だけでは不十分だと痛感しました。しっかりとした裏付けのある支援がしたいと思い、両立支援コーディネーターなどの資格を取得しました。」
お二人とも、50代を過ぎてから新たな学びに挑戦し、それを社会に還元しようとしています。その姿は、まさにこれからの時代のロールモデルと言えるでしょう。

写真左から鈴木房乃さん、大西典子さん
新しい時代のキーワードは「マチュア世代」
「シニア」「高齢者」…これらの言葉に、あなたはどんなイメージを持ちますか? お二人は、こうした言葉に代わる新しいキーワードとして「マチュア(Mature)世代」という言葉を提唱しています。マチュアとは、英語で「成熟した」「熟した」という意味。
「40代、50代、60代は、これまでの人生で様々なストーリーを経験してきました。嬉しいことも、悲しいことも、すべてがその人を深く、豊かにしています。その経験を活かし、自分らしい生き方を楽しみ、輝くことができる。それがマチュア世代です」と大西さんは熱を込めて語ります。
果物が太陽の光を浴びて熟していくように、人もまた経験を重ねて味わいを増していく。そう考えると、年齢を重ねることが、より一層楽しみになりませんか?
あなたの「T活」を見つけるために
最後に、これから「T活(定年後の活動)」を考える方へ、お二人からメッセージをいただきました。「まずは、自分は何が好きなのか、何ができるのか、ゆっくり考えてみてください。そして、やれることに臆することなく挑戦してほしいです」(大西さん)
「何より、心も体も健康でいることが大切です。健康だからこそ、好きなことを見つけて楽しむことができます」(鈴木さん)
「もう年だから」と限界を決めるのではなく、「この経験があるから、これができる」「何をするにも自由なんだ」と発想を転換してみる。
あなたも、自分だけの「好き」や「得意」を活かして、豊かな「マチュアライフ」を始めてみませんか?