エンジニア人生からまさかの大転身!畑で夢を育む守屋さんの物語

あなたは「定年後」について考えたことがありますか?

様々な役割を求められる忙しい50代、日々に追われ、定年後のことを考える余裕などないかもしれません。しかし、人生100年時代と言われる現代、定年後の時間は新たな可能性に満ち溢れています。

そこで、50代から定年後の生き方を考える活動を「T活(ティーかつ。定年活動)」と名付けました。このコラムでは、SBSラジオ「鉄崎幹人のWASABI」と連動し、T活を通してユニークな定年後を謳歌している方々を紹介します。諸先輩方の生き方を知り、定年後の夢を膨らませてみませんか?

3回目のラジオインタビューでは、元エンジニアで果樹の自然栽培を実践されている磐田市在住の守屋貴於さん(65歳)のユニークなT活のお話を伺いました。きっとあなたの心にも新しい風が吹くはず!

エンジニアからのソーラーカーレースからの自然栽培実験家!

自動車業界のエンジニアとして、バリバリ働いていた守屋さん。まさに「仕事人間」だった彼に、ある日突然人生の転機が訪れます。それは「成長の限界」という一冊の本との出会いでした。その本を読んだ守屋さんは、あらためて石油などの資源には限りがあることを知り「もし地球がダメになったら…?」という危機感を感じ、太陽電池や電動の世界の「限界」を知りたいという思いから、ソーラーカーレースに挑戦することにしました。(さすがエンジニア…!)

オーストラリアの砂漠を3000kmも太陽光だけで走り抜けるという、とんでもないレースに参加した彼は、そこで衝撃的な光景を目にします。それは、深刻な廃棄物問題と、その砂漠の過酷な環境でも力強く生きる木々の姿でした。

「木ってすごい!太陽のエネルギーを取り込んで、家になったり、服になったり、食べ物になったりする。枯れてもまた種に戻って、勝手にグルグル循環してるじゃないか!」

この気づきが、守屋さんの人生を大きく変えました。まるで植物に導かれるように、彼はエンジニアの世界から、まったく新しい「自然栽培実験家」という道へと踏み出したのです。

「何もしない」が究極の農業?守屋流“奇跡の畑”の秘密

守屋さんが取り組む「自然栽培実験家・果樹畑」は、まさに植物の知恵と力を最大限に引き出すための「実験場」です。ここでのルールはいたってシンプル。いや、むしろ究極に大胆!

「畑に、何も持ち込まない」

農薬はもちろん、肥料(有機肥料も含む)も一切使わない。さらに驚くことに、エネルギーを使わないために、畑を耕すことすらしないんです!これが、究極の「不耕起栽培」。

彼がこの活動を「実験」と呼ぶのには、理由があります。「失敗」という概念が、守屋さんの中には存在しないから。「うまくいかないことも、ぜーんぶ経験値になるんだから、恐れることなんてないんだよ」と彼は言います。だから、誰もやらないような独自の道を、あえて選んで進んでいく。

静岡県磐田市の海沿いにある約800坪の畑と、長野県鬼無里の山奥にある約3000坪の畑が、彼の壮大な実験の舞台です。守屋さんいわく、植物は私たち人間が考える以上に賢い存在なのだとか。自分で共生植物を選んで、周りの微生物の力を借りて、自分自身を管理していると言うんです。植物の根の周りには、根菌という微生物たちがいて、植物が作り出す糖分を食べて、ミネラルを溶かして植物に送り返すという、まさに、持ちつ持たれつの共生関係が成り立っているそう。この素晴らしいシステムが機能するには10年ほどかかるそうですが、一度できあがれば植物は自立してグングン育っていくんだそうです。

工房近くの畑には、杏、桑の実、梅、ビワ、暖かい所で育つベリー類、鬼無里では根雪に耐えられる自生種のエビガライチゴ、山ほおずき、サルナシ、カシス、グースベリー、ブルーベリー等のベリー類等、40種類以上の果樹に山椒、生姜、等のスパイスやハーブ等のハーブ類を含むと60種類以上の植物が生き生きと育っています。特にこだわっているのが、接ぎ木ではなく「実生(種から)」で育てること。「その土地で一番強い植物を育てるには、種からが一番なんだ」と守屋さんは語ります。

さらに収穫した果物は奥様がジャムに加工して販売されています。自家栽培無農薬で育てられた果物のジャムはどれもまるで果肉そのものを食べているよう。桑の実のジャムは黒ぶどうのような甘酸っぱさでとても美味しかったです!パンやヨーグルトはもちろん、バニラアイスのトッピングや炭酸で割ってドリンクにするのもオススメだそうです。

長野の畑では、冬になると1.5mから2mもの雪に覆われることもあるそうですが、この雪が植物にとっては最高のお布団代わり。地温が0度以下にならないことで、植物が育つのに不可欠な存在になっているんです。

そして、守屋さんの農業の根幹にあるのは「観察」。昆虫も含めた生態系全体の役割を深く理解し、畑のすみずみまで目を光らせています。例えば、ちょっと怖いイメージのあるスズメバチやアシナガバチも、実は受粉を手伝ってくれたり、冬の間に体に蓄えた酵母を春に蜜を吸う時に土に戻すことで、ワイン造りにも貢献したりする、大切な自然の仲間なんだそうです。固定観念にとらわれず、自然のありのままの姿を受け入れる。それが守屋流“奇跡の畑”の秘密なのかもしれません。

農業が紡ぐ、人と地球に優しい“ご縁”のハーモニー

守屋さんのユニークな活動は、畑の中だけに留まりません。彼の「誰も知らないことを知っている」という特別な知識は、様々な人々との繋がりを生み出しています。特にオンラインの交流会では、ミュージシャンのような異業種の人々とも交流する機会がたくさんあるそうです。

なんと、その中には元チャットモンチーのドラマー、高橋久美子さんも!高橋さんは、農業が盛んで自然豊かな土地が太陽光パネルで埋め尽くされることに心を痛め、自ら農地を購入して畑を始めたそうです。その行動に守屋さんが深く共感し、そこから素晴らしいご縁が生まれたのだとか!

さらに守屋さんは、地元磐田市の名産である「コール天(コーデュロイ)」を広める活動にも力を入れています。昔ながらの工場と職人さんの技術、そして彼がエンジニアの目で見て「恐ろしいほどの精度」と唸る機械は、現代の技術でも再現が難しいほどの逸品なんだそう。

「マイクロプラスチックを出さない天然素材のコール天は、これからの時代にぴったりなんだよ」と語る守屋さん。化学製品からの切り替えを提案できる、環境に優しい素材としての可能性を追求しています。

そして、彼が栽培するアボカドの葉や桑の実などを使った植物染めも提案しています。植物の根から葉、実まで「すべて使える」という考え方で、食用だけでなく、染め物や繊維としても利用できることを教えてくれます。媒染液やアルカリ(石鹸など)との組み合わせで色が変化する面白さは、まさに自然が織りなすアート!

定年後を輝かせる!あなたの「やりたい」を見つけるヒント

守屋さんのT活を支える芯の通った哲学、それは「やることを一本通して、どんなに自分の条件が悪くなろうが何であろうが同じことを言い続ける」というブレない姿勢です。そして、人との関係においては「敵でもなければ味方でもない」という独特の視点を持っています。人の背景を理解し、安易に善悪で決めつけず、様々な立場や繋がりを常にフラットに見つめ直すことを大切にしているんです。

これから定年後の生き方を考える50代の皆さんへ、守屋さんからの熱いメッセージです。

「自分が本当に『これだ!』と思ったことをやってみよう」

もし「やりたいこと」がなかなか見つからない…と悩んでいるなら、子供の頃に「死ぬほど繰り返してやったこと」を思い出してみるのがおすすめです。そこに、もしかしたら定年後も夢中になれる「やりたいこと」のヒントが隠されているかもしれませんよ。

あなただけの「T活」を、はじめよう!

守屋さんのお話を聞くと「人生、いつ何があるかわからないから、やりたいことは何でもやる!」という力強いメッセージが胸に響きます。元エンジニアとしての探究心と、植物や自然への深い洞察力が融合して、彼独自のT活が花開いたんですね。

定年後の生き方に、決まった正解なんてありません。守屋さんのように、自分の興味や信念を追求して、新しい世界との繋がりを築くことで、あなたの「T活」もきっと、より豊かで充実したものになるはずです。

50代から定年後に向け準備する活動=T活を始めませんか?「T活のススメ」はユニークな先輩方の生き方を発見できるページ。新しい定年後の生き方にワクワクすることから始めてみましょう!

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