「復活してもらえるなら無償でも」海から海藻が消える"磯焼け"が伊豆半島にも...海の恵み守るため官民連携で『藻場』再生へ【SDGs】

海から海藻が消える「磯焼け」が伊豆半島でも深刻になっています。海藻が生い茂る「藻場」を復活させようと官民連携での取り組みが進んでいます。

静岡県下田市田牛の2020年秋の海底の様子です。海藻が生い茂る『藻場』では稚魚が天敵から身を隠します。貝類にはエサになり、水質の浄化作用があるなど海にとって重要な場所です。1年後、同じ場所に潜ると海藻が無くなっていました。「磯焼け」です。

<県水産・海洋技術研究所伊豆分場 鈴木勇己主査>
「岩だけがゴロゴロ転がっているような、本当に『海の砂漠』みたいなイメージを持っていただければ。生物にとっても過酷な環境になってしまいます」

国や県の調査によると伊豆半島沿岸の藻場の面積は激減しています。その原因の一つにあげられているのが。

<県水産・海洋技術研究所伊豆分場 鈴木主査>
「黒潮の大蛇行による水温の上昇が考えられます。水温が上がると海藻の生育が悪くなって、磯焼けになってしまう」

磯焼けのもう一つの原因は魚による食害です。静岡県下田市の白浜です。網にかかっていたのは「ブダイ」です。

<漁師と分場職員>
「これ海苔じゃないですか?」
「海苔っぽくない、ガリガリやってんじゃん」
「やってますね」

ブダイの餌は海藻です。黒潮の大蛇行で水温が上がったことで冬でも活発にエサを食べます。ブダイによる食害が磯焼けにつながっているのです。

下田市白浜では2022年からブダイの捕獲を本格的に始めました。最初は1回の漁で250から300キロのブダイが獲れていましたが、今回は10キロと成果が出ています。

<白浜漁業管理運営委員会 山木拓也さん>
「少しでもこういったことをやることで、復活してもらえるなら無償でも、ボランティアでもやっていこうかなと思っています」

一方、県は『磯焼け』により消滅した藻場を再生するプロジェクトを立ち上げました。

<県水産・海洋技術研究所伊豆分場 長谷川雅俊主任>
「スレート板にカジメの幼体を接着剤でつけて、今養成している段階です」

伊豆の東海岸に多く生息しているカジメは、数年にわたって生きるため藻場の復活に適しています。

静岡県伊東市の富戸では、県が育てたカジメの幼体を海に戻して育てています。周囲にネットを張り、ブダイなどの食害対策も行いました。

<ダイバーと分場職員>
「こっちが新しく入れたほう、こっちがU字溝が古いじゃないですか、夏に入れたやつであまり変わらないでしょ」
「かなり成長がいいですね」

地元のダイバーや漁師も協力し、2025年度は伊東市と下田市、河津町で再生に取り組んでいます。

<富戸ダイビングサービス 猪狩克裕さん>
「見られるときに見られるものが見られらくなってしまっているという状況をお客さんも感じていて、このままではいけないという思いでこういったことを始めました」

官民で協力して海の環境を守る。順調に行けば夏頃には育ったカジメが種を出すとみられています。

「あしたを“ちょっと”幸せに ヒントはきょうのニュースから」をコンセプトに、静岡県内でその日起きた出来事を詳しく、わかりやすく、そして、丁寧にお伝えするニュース番組です。月〜金18:15OA

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