「無駄なく有効的に活動できるよう進めていきたい」9つの機関が残土処分場で過去最大規模の災害対応訓練 情報共有の課題が浮き彫りに【わたしの防災】

土砂災害が起きた現場で速やかに命を救うにはどう対処したら良いのか。消防や警察、建設業組合などが残土の処分場を使って過去最大規模の訓練を行いました。実践的な訓練からは情報共有の課題が浮き彫りになりました。

<消防隊員>
「ここを屋根とかにして、配置を決めるか」

土砂災害の現場を再現した訓練会場を設営しているのは掛川市消防本部の隊員です。

<掛川市消防本部 市瀬成吾消防士長>
「熱海の土砂災害や能登半島の地震で活動をした経験もある職員もいるんですけど、全員が土砂災害を経験できていない現状ですので」

掛川市は土砂災害のリスクを多く抱えていて、今回、大規模な訓練を企画しました。掛川市には、山間部が多く約1300か所の土砂災害警戒区域があります。ここ数年、台風による大雨で土砂が住宅に流れ込む被害が発生しています。

掛川市消防本部は、土砂災害への対応力を強化しようと地元の建設業組合の協力を得て残土処分場を会場に訓練を行いました。屋根を土砂で埋めるなどしてより災害現場に近い環境を作りました。

訓練の当日。会場には消防のほか警察や自治体など災害時に連携が必要な9つの機関が集まりました。訓練では、まず市民の通報を受けた市の職員がドローンで被害状況を確認。消防に救助を要請しました。

<消防隊員>
「家屋は何世帯あるかわかりますか」

<掛川市職員>
「まだわからない状態です」

消防隊員はドローンの映像だけではわからない、救助が必要な人の数などの情報を集めます。

<消防隊員と住人>
「あなただけですか?」
「家族がこの中に」
「家族があと何人いるかわかりますか?」
「あと3人、中にいます」

いかに早く、正確な情報を集められるのか。訓練の課題です。その後、指揮本部が要請し、災害救助犬などが現場に入って救助を進めます。

「同じ個所で反応しているので、間違いないと思います」
「承知しました」

各機関が速やかに連携し2時間の救助活動で目標としていた12人のうち10人を助け出しました。

<掛川市消防本部中央消防署 内藤雅行司令>
「(普段は)限られた施設での訓練になってしましますので、自然に近い場所で実践に即した訓練はできないのが現状」

ただ、今回の訓練では、指揮する隊員と活動する隊員との情報共有に課題がありました。

<掛川市消防本部中央消防署 中山建也司令補>
「ドローンの映像を見られているのは、操縦士とカメラ操作員の2名だけ。今後はモニターだったり大きな画面に映すことで指揮所にいる全員が、その映像から危険性や活動内容などを把握し、全体像をつかめると思う」

今回は、指揮本部のほかに、救助に特化した前進指揮所を初めて設置しました。2つの隊は無線を使って情報を共有しましたが、現場近くで撮影したドローンの映像はうまく共有できませんでした。

<掛川市消防本部中央消防署 岡本秀行副署長>
「隊を分けて行う時に、連絡手段や人員的にも限りがある。無駄なく有効的に活動できるよう検討をして、必要なところから進めていきたいと思う」

激甚化する災害に対し、どう対応を強化するのか。掛川市消防本部は今後、情報共有の方法を見直し、人員の配置などさらに検討を進める方針です。

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