静岡県浜松市の企業が建設した「農業用ハウス」には地球温暖化への対策が施されていて、室温を維持するために地下に蓄えられたエネルギーを活用します。従来のハウスに比べて二酸化炭素の排出量が大幅に減りました。
低温調理を施されたサワラの上に添えられたのは色とりどりの食べられる草花です。浜松市浜名区のレストラン「レンリ」は多くのメニューにきれいな花を添えています。
<LENRI 町田通シェフ>
「こちらは裏に自社のハウスがあるんですけど、そこから摘んできた花を使用しています」
メニューの幅を広げる食材を生み出すため必要とされる農業ハウス。「レンリ」を経営する会社「愛管」が敷地内に建設しました。
<愛管 宮下裕行さん>
「まずイチゴ栽培を、その下にレタスのようなものを作ってレストランに提供しています」
1年を通して20から30種類の作物を育てるこのハウス。施設には温暖化への対策が施されています。
<愛管 宮下裕行さん>
「こちらのハウスはCO2を削減するという目的でイノベックスさんのヒートクラスターというものを使っておりまして、それで冷暖房をやっています」
ヒートクラスターは地下の熱を効率的に利用して空調などを行うシステムです。このハウスには農業設備などを手掛ける「イノベックス」が開発した空調設備を取り入れています。
<愛管 宮下裕行さん>
「こちらにエアコンの戻り水が入ることになって、地中だいたい40mくらいまで通ることで冬場だと温かい水が戻ってきてエアコンの省エネにつながることになる」
ハウスの外には地下40メートルまで掘られた穴に水が通るホースが設置されています。地下40メートルは地中の温度が年間を通して15℃から17℃くらいで安定しているため、夏には冷たい水が、冬には温かい水が戻ってくることになり、この水が冷暖房をアシストする仕組みです。
従来の一般的な農業用ハウスは重油を燃焼させるボイラーを使って空気を温める過程で多くの二酸化炭素を排出するため地球温暖化を進める要因になってしまいます。しかし、このシステムでは課題の二酸化炭素はボイラーを使ったハウスに比べると最大で64%削減できるということです。
夏でも冬でもハウスの中は一定の温度を保ちやすくなり、育てたい作物に適した環境を作り出すことができるという仕組みです。
レストランを経営する「愛管」ですが、本業は配管工事や空調設備の設置のため地下にホースを通すのはお手の物です。
<愛管 宮下裕行さん>
「カーボンニュートラルの認知度が高まっていて、地球温暖化の影響もあるので、できるだけこのシステムを近隣の農家中心に広げていきたい。その際に愛管として施工を含めて携わることができると考えている」
建設コストはどうしても割高になるものの多くの場所で得られる地熱を活用し、二酸化炭素の排出を減らす農業ハウス。持続可能な農業と気候変動への対応を示す新たな一手です。