「震災を語ることはできなくても語り継ぐことはできる」阪神・淡路大震災から30年...受け継がれる"教訓のバトン" 若い世代が広げる防災の輪=静岡県

阪神・淡路大震災は住宅の耐震化やボランティア、地域で助け合うことの大切さなど静岡の防災対策にも大きな影響を与えました。30年という節目の一日を神戸市で東部総局の青島悠記者が取材しています。

<東部総局 青島悠記者>
私はいま「神戸港震災メモリアルパーク」に来ています。この場所には地震で崩れた港の様子が当時のまま残されていて、震度7の揺れのすさまじさと被害の大きさを今に伝えています。30年という時間が経つ中、課題となっているのが震災記憶の風化と継承です。

30年前の震災を知らない若い世代の防災の取り組みを、神戸、そして静岡で取材しました。

<青島記者>
「阪神・淡路大震災から30年を迎えようとしている神戸市東遊園地です。多くの灯籠に灯りが灯され始め、静寂と祈りに包まれています」

阪神・淡路大震災の追悼行事の会場には早朝から多くの人が訪れ、灯篭に火が灯されました。

地震が発生した午前5時46分には犠牲者に黙とうが捧げられました。

<訪れた人>
「どうしても人は忘れちゃいますので、忘れないことをこうやって節目で思い出す、なにかきっかけを必ずどこかで作っていくことが重要なのかなと思います」

<訪れた人>
「これから南海トラフとか起きるって言われているので、どういう風に対策していくかっていうのは、私たちにかかっているのかなって思います」

6434人の死者を出した未曽有の災害。戦後初めての大都市直下型の地震で威力は凄まじく多くの建物や高速道路さえも倒壊ました。地震直後には大規模な火災が起き、街は変わり果てた姿となりました。30年という長い時間と多くの人の手によって街は復興を遂げました。

一方、今の神戸には震災後に生まれた若い世代が増えています。

そうした中、1月17日に行われた兵庫県主催の追悼行事では静岡県出身の高校生がスピーチしました。

<兵庫県立舞子高等学校3年 細谷悠彬さん(静岡県出身)>
「私たちは震災があったとは思えないほどきれいなまちで過ごしています。しかし、30年前、私たちのまちは大きな災害を経験しました」

細谷悠彬さんは防災の専門学科がある兵庫県立舞子高校に通っています。将来は、研究者として南海トラフ地震の被害を減らしたいと考えています。

<細谷悠彬さん>
「静岡にとって南海トラフ地震は昔のことなのでそんなに教訓が伝わっていない。阪神・淡路大震災や東日本大震災の教訓をどんどん取り込んでいけば経験がない中で何か作り上げられると思う」

1月17日の式典で、細谷さんは震災を知らない若い世代が教訓を語り継ぐ大切さを訴えました。

<細谷悠彬さん>
「私たち(若い世代)は震災を語ることはできません。しかし、多くの語りに共感し、思いを寄せ、語り継ぐことはできます。教訓のバトンを受け取り、さらに後世まで伝え続けること。それが未来を担う私たち若い世代が『今できること』です」

神戸市内では細谷さんと同じ環境防災科の生徒たちが防災教育の取り組みや、ステージで呼吸を整える体操などを紹介し、訪れた人に防災の大切さを伝えました。

<兵庫県立舞子高等学校環境防災科1年 藤野夢斗さん>
「僕たちが中心となって減災や防災に関して発言や行動をして、防災の輪が広がっていくんじゃないかなと思います」

<静岡県東部地域局危機管理課 植田城治主査>
「きょうは、地震から命を守るということについて考えていきたいと思います」

若い世代の防災の取り組みは静岡県内でも広がっています。富士市内の高校では2024年12月、建物の耐震をテーマに講座が開かれました。

「紙ぶるる」というペーパークラフト教材で建物の揺れや筋交い効果などを学びました。

<生徒>
「家のほうは僕が対策を教えて、対策をしていこうかな」
「逃げる道に自分たちで行って確かめることが大切」

生徒自身が主体的に学び事前の対策や災害時に、その知識を生かしてもらいたいと学校は考えています。

<富士市立高等学校防災担当 伊藤誠教諭>
「もし災害が起きた時に高校生は非常に力になりますし、防災においてはリーダーになってもらいたいと思っています」

いつ起きても不思議ではない地震災害。私たち一人ひとりが考え備え続けることが求められています。

<青島記者>
「震災を語ることはできなくても語り継ぐことはできる」

舞子高校の細谷さんのことばです。

取材をした私も阪神・淡路大震災を経験していない一人ですが、同じ若い世代の多くの人たちが真剣に、そして楽しく防災に取り組む姿がとてもに印象的でした。いつ来るかわからない巨大地震から命を守る。

今を生きる私たちが震災の記憶や教訓を伝え続けていく必要があります。

「あしたを“ちょっと”幸せに ヒントはきょうのニュースから」をコンセプトに、静岡県内でその日起きた出来事を詳しく、わかりやすく、そして、丁寧にお伝えするニュース番組です。月〜金18:15OA

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