「食べることでなぜ、ここにシカがいるのか理解してもらえば」食害対策から生まれた「ジビエ餃子」【しずおか産】
大井川が流れる静岡県川根本町に店を構える「和彩食堂あけぼの」です。
<和彩食堂あけぼの 榊原広之さん>
「おまちどうさま、ジビエ餃子です」
<島田支局 河田太一平記者>
「おいしそうな香りときれいなピンク色ですね。シカの肉の餃子をいただきたいと思います」
今回の「しずおか産」は、川根本町で獲れたジビエの肉がたっぷり詰まった「川根ジビエ餃子」です。
<河田記者>
「噛み応えがあるシカと紅ショウガの味がすごいマッチして、おいしい。若い方も食べる方が増えていますか」
<榊原さん>
「本当に若い方が興味を持って召し上がっていただいて。全然臭くないとか、普通の肉と(違いが)全然わからないとか。本当はもっと特徴があった方がいいのかもしれないが、それぐらい臭みやクセがなくて喜んでもらっている」
榊原さんがジビエ料理を始めたのは5年前。誰もが気軽に食べられる餃子を思いつき、店ではシカ、イノシシ、ゆず、豚の4種類を提供しています。
川根本町の鳥獣被害を防ぐために猟師が獲ったシカ肉です。
<河田記者>
「きれいな赤身肉」
<榊原さん>
「シカ肉なので、すごくきれいで一切筋とかもない。においも一切ないし、地元の猟師が本当にこだわってやってくれている証拠」
餡にはロースとももを使い、白菜、キャベツなどの野菜を1対1で合わせています。シカ肉餃子の皮は、紅ショウガの漬け汁で、ほのかなピンク色と香りをつけています。
<榊原さん>
「最初は外注で皮を作ってもらっていたが、色とかも選べなかったりしたので、だったら自分で作っちゃえって」
餃子の味を色で分けた方が見た目にも楽しい。そう考えた榊原さんは、イノシシ肉の餃子の皮に川根茶を練り込みました。
人気が高まるジビエ料理。川根本町でも、シカやイノシシによる農作物への被害があります。
<南アルプスジビエ牧場 殿岡邦吉さん>
「全部こんなふうに食害に遭っちゃってる」
Q.これは食べられた後?
「そうそう、白菜のおいしいところだけ全部やられている」
<被害に遭った男性>
「収穫3日前。これじゃあ半分以上、いや、全滅。情けない、本当に情けない」
猟師歴56年の殿岡邦吉さん。「川根ジビエ餃子」に使うシカやイノシシを獲っています。近年、川根本町の鳥獣被害は、減少傾向にあります。
<殿岡さん>
「肉を提供するために獲っているんじゃなくて、被害防止のために獲ったものを有効利用している。ジビエを食べることによって、なぜ、ここにシカがいるのか、なぜ、食材になっているのかということを理解してもらえば一番ありがたい」
殿岡さんは数年前から弟子を取り、若い猟師を育てています。子どもたちの食育のためにも、ジビエ料理を食べてほしいと言います。
<榊原さん>
「(ジビエの)肉自体があまりみなさん召し上がる機会がないので、決して高級なものにするつもりはなくて。普段から食べているものの延長にジビエがあるという、そういう形で1人でも多くの方に召し上がっていただけるように心がけてやっていきたい」
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