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<バレーボールSVリーグ>東レ静岡、連敗の中にも光明 。山田、重藤ら若手躍動、勝負どころの1点に課題

山田大貴選手(左)と重藤トビアス赳選手


バレーボールSVリーグ男子の東レアローズ静岡は11月9、10日、沼津市総合体育館(香陵アリーナ)での地元戦でサントリーサンバーズ大阪に敗れて5連敗、9位に沈んでいる。

オポジットのアラン・ソウザ選手をコンディション不良で欠き、苦しい戦いが続く中、ルーキーのアウトサイドヒッター・山田大貴選手(函南町出身、清水桜が丘高出)が2試合で計40得点(アタック)するなど光明もあった。「試合には負けたけれど、チームとしての形は見えてきた」と話す山田選手は9日、満場の観客に向けて「これからも信じてついて来て下さい」と呼びかけ、ファンも拍手で激励した。

見応え十分だった第1、2セット

両チームの先発メンバーの平均身長は2メートル超が3人いるサントリーの198センチに対し、東レは189センチ。サントリーは日本代表の高橋藍選手を故障で欠いたものの、218センチのドミトリー・ムセルスキー選手やポーランド代表のアレクサンデル・シリフカ選手、日本代表のミドルブロッカー小野寺太志選手ら強力な布陣を擁し、一方の東レは2戦目の第2セットからは日本人選手のみで臨むなど、高さ、パワーでは圧倒的に不利だった。

そんな状況でも、初日の第1、2セットは見応え十分の攻防になった。東レは第1セット、サーブが走った。ジャンプサーバーの山田選手は「細かいコントロールより、ベストのサーブを打ち続けることを意識した」と話し、フランチェスコ・レチネ選手も「サーブの感触はすごく良かった」と効果率26・2%を記録した。

加えてフローターサーブの使い手は、サントリーのデアルマス・アライン選手とシリフカ選手をサーブで狙い打ちして得点源を絞り、組織的な守備で対抗。セッター新貴裕選手は山田選手のスパイクに西本圭吾選手の速攻を織り交ぜながら着実にサイドアウトを重ね、25―23で奪取した。

第2セットも狙い通り。「相手のスパイクに対し1対6でしっかり守ること」(重藤トビアス赳選手)と集中力を維持してジュースの攻防に持ち込んだ。ところが、最後に決定力の差が出て31―33でこのセットを落とした。「チャンスが来た時に全員が焦ってしまった」と山田選手は言う。

阿部裕太監督が「2セット目を取りきれなかったところが敗因」と話すように、第2セットを取れていれば、その後の展開も変わっていたかも知れない。

山田大貴の潜在能力

ソウザ選手の復帰までにはもう少し時間を要すると見られ、阿部監督はメンバーを固定せず、日本人を中心に組み立てていく方針だ。大阪ブルテオンから期限付き移籍のセッター新選手を先発起用する理由について、阿部監督は「テンポ、スピード感」を挙げ、日本人選手の特長をより生かせると考える。新選手は「向こう(サントリー)のブロックが高いので、そこを避けながら、最後は気持ちの強いヤツに(トスを)上げた。(山田)大貴も結構呼んでくれたので」と勝負どころで山田選手に託した。

山田選手は高さ、パワーのあるスパイクで3枚ブロックを打ち抜き、クロス、ストレートへの打ち分け、時にはコート中央にふわりとフェイントを落とすなど相手が良く見えている様子だった。

サントリーのリベロ・藤中颯志選手は山田選手と対戦した印象について「勢いがある選手。高さもあり、(サントリーの)セッターが前なのか、オポジットが前なのかでディグ(スパイクレシーブ)のシステムが変わったりするが、そこをしっかり見ていて打ち分けてきた。セッターが前の時はしっかりセッターの上から打ってきた。そういうところが試合全体を通して、やられていたので厄介だった」と話してくれた。

阿部監督は「失点が減ってきているところに成長を感じている。今日を最低ラインにして頑張ってもらいたい」と山田選手のポテンシャルはこんなものじゃないと言いたげだった。

勝ちが付いてこない苦しさはあるが「優勝という目標はぶらさない」と西本選手。ソウザ選手に替わってオポジットに入る重藤選手も「コミュニケーションを円滑にしていけば、いいチームになる」と大黒柱の不在を言い訳にはしない。経験の少ない若手が成長し、自信を得ながら、クロスゲームで大事な1点を取り切る力を付けていくことが期待される。

(編集局ニュースセンター・結城啓子)

取材こぼれ話

世界一のリーグを目指して開幕したSVリーグ。外国人選手が同時にコートに2人立つことができ、よりレベルの高い攻防が繰り広げられている。今季、来日した東レ静岡のレチネ選手と、日本で7季目を迎えたサントリーのムセルスキー選手が開幕から約1カ月を戦った新リーグの印象について、試合後の会見で語ってくれた。

レチネ選手「思っていたより難しい。ヨーロッパとは違うことは来る前から分かっていて、正直なところヨーロッパよりレベルは低いんじゃないかと思って来たが、実際はそんなことはなかった。外国人選手はレセプションでターゲットにされ、ブロックもマークされることが多い。ただ、そういう難しい状況でプレーすることで、自分を成長させることができると思っている」

ムセルスキー選手「SVリーグの人気、興味は世界中で上がってきている。海外で日本でプレーしたい選手が増えてきているのも事実。ヨーロッパとはトスやゲーム全体のスピードの違い、バレーのシステムの違いがある。海外で日本との試合が嫌がられている理由は、どれだけ強いスパイクを打ってもブロックにかけられたり拾われたりする難しさがある」

レチネ選手vsムセルスキー選手



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