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昔ながらの親しみやすさと最新のセンスが交差する沼津の地域密着型セレクトショップ「 Fashion Plaza SERIZAWA」

こだわりの手作りお菓子にフラワーアレンジメントやキャンドルづくりなどのワークショップも!

沼津を流れる狩野川の、河口左岸に広がる我入道地区は古くからの漁師町だ。今でこそ住宅街へと姿を変えているが、以前は一番線・二番線・三番線といったメインストリートがあり、一番線は住民の生活を支える商店街として多くのお店で賑わっていたそうな。

商店街のほとんどのお店が姿を消すなか、家族で肌着やエプロンを商っていた一軒の洋品店が『Fashion Plaza SERIZAWA』として、今もなおこの地域のファッションを支えるセレクトショップとして引き継がれている。

洋館風の外観

私がSERIZAWAの存在を知ったのはおよそ7年前で、初めてお店に入ったのは1年前。じつに6年の空白が存在するのだ。

お店は我入道郵便局がある通りのローソンから少し入ったところ、駐車場の並びにあり、建物の側面からは何のお店か分からなかったのがこの空白の一番の理由だ。洋品店だと知ってからも、「こんなところで洋服売ってるの?年配向けのお店かな?(……かくいう私もすでに年配の域に到達!)」と勝手に決めつけていたのだ。

そんな私に、満を持したように2人の知り合いから「あの場所からは想像できないオシャレなお店だよ」「お菓子も美味しい!」と各人に猛烈に推され、いよいよお店に足を運ぶことになった。それが去年のことだ。

Fashion Plaza SERIZAWA店内

お店の大きなショーウインドーからは流行りのファッションを纏ったトルソー(マネキンのようなもの)と、お菓子コーナーのディスプレーがまず目に飛び込んでくる。

店内は手前から若者向けのカジュアルファッション、ちょっとフォーマル、ミセス・マダム向けにレイアウトされ、すべての年代の洋服がカバーされている。またバッグやシューズ、小物、オーダーなどの企画品も展示され、見ているだけでワクワクしてしまうのだ。

定番コーナーには靴下やハンカチが所狭しと並び、リーズナブルなプレゼント用としても大活躍至極だ。入り口右側には、カウンターがある小部屋が印象的なお菓子コーナーと、フラワーアレンジメントやキャンドルづくりなどのワークショップを行なうカルチャーコーナーがある。

手書きアート『己書』のワークショップ

 SERIZAWAのお菓子は『OkoyokO』というブランドで、毎週末に店舗での販売はもちろんLINEやInstagramでも発信している。人気の秘密は、見た目の可愛らしさと飽きのこないシンプルな美味しさだ。

クッキーは季節やイベントをモチーフに、カラフルにそして繊細にデザインされ、用途に応じてパッケージ(量)をチョイスできるのが嬉しい。こだわりは、卵や発酵バター、小豆といった素材だけでなく、ケーキに使用するフルーツなどはできる限り地場のものを使うことだという。

「小さな頃からケーキづくりが好きで、最初はお勤めをしながら週末に少しだけ作ってお得意さまに食べてもらっていました。そのうち個別にリクエストをいただくようになって……SERIZAWAでならできるかなと思い、会社を辞めお菓子づくりに専念することにしました。素材などのこだわりは、お菓子づくりを学んだ先生の教えを引き継いだものです。たくさんのお客さまにとても喜んでいただいて、もっと多くのバリエーションをと試行錯誤しているところです」。お菓子担当の洋子さんが思いを語ってくれた。

季節やイベントに合わせたクッキー

クッキーのデザインノート

 OkoyokOのお菓子はSERIZAWAの進化にもおおいに貢献している。

「お店が今のスタイルになったのは最近なんです。以前は60代以上のマダム向けファッションがメインでしたが、自分たちに近い世代やもっと若い世代のお客さまにも来てもらえるようなお店にしたいと考えていたところ、2019年にお菓子を始めてから若いお客さまが来てくださるようになりました。これをきっかけに若者向けのブランドを開拓し、もっと多くの方に来ていただけるようワークショップを企画しました。同時期にLINEを活用したりネット販売で販路を広げ、コロナ禍前に今のスタイルができ上がりました。商いを続ける、残していく上ではこれがとても大きかったです」。

結婚するまではアパレル会社で働いていたという『SERIZAWAのおしゃれ番長』こと、仕入れ・デジタル担当の美佳さんはこう振り返る。

さらに店長の圭介さんは「お店の創業は70年近く前になります。祖母の代から始めて、両親と2人の叔母、今は私と妻、姉2人の4人で守っています。お店が今のスタイルになり、続けてこられたのも、相談に乗ってくれた会計事務所のスタッフ、地域の方々のアドバイス、そして地域を盛り上げたいという同じ思いを持った商工会議所の手厚いサポートがあったからこそです。時代に合わせて変化は余儀なくされますが、地域に根ざし多くの方に喜んでいただきたいという先代・先々代の思いを心に秘め、これからも続けていきます」と語ってくれた。

写真右から店長の芹澤圭介さん・洋子さん・真澄さんの3姉弟、左は圭介さんの妻・美佳さん

 創業から現代に至るSERIZAWAの進化は、さながらガラケーからスマホへ時代に合わせて移り変わっていった携帯電話の進化と重なって見える。

戦後の服がない昭和の時代に洋品店を始め、平成を経た令和の今、さまざまなことにチャレンジし取り入れるポジティブ精神……これこそが進化の根底なのだろう。

また、夫婦とその姉妹というスタッフ構成がそのまま引き継がれているところにも、何かしらの縁を感じた。ファッションに精通している圭介さん・美佳さん夫妻、楽しく美味しいお菓子を作る洋子さんとそれをサポートする真澄さん姉妹……。

「誰が欠けても今のSERIZAWAは成り立たないんです」。ポツンと呟いた圭介さんの言葉が心に沁みた。家族だからこそ、この地で育った人間だからこそ、本音で本気でお店の継続と地域への貢献を願っているのだと感じた。

これから先、どんなチャレンジで私たちをワクワクドキドキさせてくれるのか……楽しみである。

(ライター/reiko)

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■Fashion Plaza SERIZAWA
住所:沼津市我入道一本松町189-2

Face to Faceは富士・富士宮・沼津で発行している地域月刊新聞です。記事に登場するのは、あなたの街にいるかもしれない「ふつうの人」。地域に暮らす人々が共感できる、十人十色の物語を伝えています。

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