静岡県内で続く深刻な薬剤師不足に医療関係者らが頭を悩ませています。早いうちから学生にアプローチし、仕事の魅力を伝えるなどして将来的な人材確保に奮闘する病院やドラッグストアの現場を取材しました。
<薬剤師>
「泡が立たないように気を付けながら」
大型病院の病棟の一室で薬剤師が注射器の使い方を丁寧に教えていますが、その相手は高校生です。
静岡県藤枝市立総合病院では2024年から、高校生に向けた薬剤師の「お仕事体験会」を開いています。
「ここは先生から要望があったもの(薬)をつくるところになります」
高校生たちは薬の量を測る器具を使い、薬の調剤を体験。患者に処方する薬をそろえる薬剤室では、大量の薬を前に薬剤師から説明を受けました。
<参加した高校生>
「初めて注射器を触ったんですけど難しいなと思いました」
<参加した高校生>
「大変なんですけどみなさん楽しそうに働いているのでぼくも目指してみようと思いました」
病院が初めて「体験会」を開いた背景には、ある深刻な問題があります。
<薬剤師 松浦紘生さん>
「全国的に病院薬剤師が不足しており、特にここ静岡県ではその傾向が顕著にございます」
薬剤師不足。特に病院薬剤師が不足しており、静岡県の調査では「薬剤師が不足している」と回答した静岡県内の病院は33.8%に上りました。
<薬剤師 松浦紘生さん>
「やはり大きな問題のひとつが、調剤薬局やドラッグストアとの給料の差、特に働き始めた初年度、2年目とか最初のころでの給料の差が大きいというのが大きな病院薬剤師が足りないところの問題のひとつだと思っております」
病院によりますと、生涯賃金で比べれば大きな差はないといいますが、ドラッグストアなどとの採用競争が激しさを増しているということです。
一方、ドラッグストアでは。
<杏林堂薬局 赤星博樹人事部長>
「(採用は)難しいですね。かなり苦労をしております」
競合相手側も、採用活動はままらないといいます。
<杏林堂薬局 赤星博樹人事部長>
「静岡県はどうしても東京・名古屋という都市圏に近いこともありまして、外に出てしまうとなかなか静岡県に戻ってこないという学生が非常に多いものですから」
薬剤師2年目の今村さん。働く環境を優先したといいますが収入面の後押しもあったといいます。
<薬剤師 今村仁菜さん>
「学生時代に就職を決めたあとに奨学金制度ですとか、お金関連の制度がしっかりあったので、そういったところもひとつ選択の理由にはなっていたかなという風に思います」
<杏林堂薬局 赤星博樹人事部長>
「とにかく(学生に)静岡県に戻ってきてほしいと思っています。病院とかドラッグストアとか行先はそれぞれあると思うんですけど、まずは静岡県に、県外に出た学生さんが戻ってくれるような仕組みを地域全体で考えて実行していければなと思っています」
行政をはじめ、地域全体で底上げする解決策が求められています。