構想4年、磐田市で男子サッカーの“裏インターハイ”を初開催した実行委にインタビュー「サッカー通してみんなが幸せに」
全国高校総体の出場を逃した男子サッカーの強豪校が全国から集う新しい大会「コネクティングコミュニティ杯in磐田」が8月4日までの5日間、静岡県磐田市を拠点に開催されました。4年前から構想を温め、コロナ禍を経て開催を実現した大久保翔悟実行委員長(磐田西高教諭、36歳)にインタビューしました。
大会には流通経済大柏(千葉)や前橋育英(群馬)など全国の強豪29チームが出場し、予選リーグと順位決定トーナメントを行いました。
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一問一答
ー大会開催のきっかけを教えてください。「4年前、浜松開誠館の青嶋文明監督たちと『各チームの本当の強化になるような大会をやりたいね』と話をしたのが始まりでした。
どんな大会にしていこうか、開催までのハードルをどう乗り越えていこうかと話し合っていたらコロナが…。3年間ストップしてしまいましたが、昨年3月に磐田市を拠点にした一般社団法人コネクティングコミュニティが大会の主催をやってくれることになり、再び動き出しました。
磐田市の協力を得たり、協賛企業を集めたり、下地を整えるようなことを10月ぐらいまでやり、『第2のインターハイ』みたいなものが実現できそうだと話が進みました。共催にNPO法人磐田市スポーツ協会、後援に市や観光協会、商工会議所などに入っていただきました。
青嶋さんと僕の思いとしては『現場至上主義の大会にしたい』ということでした。選手、指導者、保護者の方、もっと言えば会場運営スタッフ、お弁当を運んできてくれる方、宿舎の方々。皆さんが幸せになってくれる大会にしたいなと思っていました」
ー現場至上主義というキーワードが出てきました。その対極にあるのはどんな大会ですか。
「利益至上主義ですね。街にお金は落ちるけど、本当に試合内容は白熱したものになっているか、クエスチョンの大会もありました。今大会の試合を見た限り、上位に入ったチーム同士の対戦は本当に白熱していて、相当準備してきたなという印象を受けました」
ー運営で気をつけたことは。
「この暑さなので、やはり暑熱対策が必要でした。各会場でプールを出したり、氷を出したり。朝の早い時間のキックオフと、夕方の遅い時間のキックオフに分けたり」
ー開催までに何が一番苦労しましたか。
「いっぱいありすぎて…(笑)どういった規模で、どういったことをやるか。いくら計画を立てても実際にはいろいろな問題が起きて、机上の空論だったなということばかりでした。
6会場の運営スタッフの確保、およそ120試合の審判の確保のほか、23チーム約600人の宿舎の確保も大変でした。袋井で空手の全国大会があり、浜松で水泳の全国大会とフットサルの全国大会があり…。御前崎から浜名湖の方まで、宿泊場所が各地に散ってしまったので、そこは皆さんにご迷惑をおかけしてしまいました。
なので、暑熱対策として考えていた午前7時45分キックオフの試合は、遠い宿泊場所になると難しくなってしまいました。移動時間を考慮して朝食を午前5時に食べなければいけなくなったら、それこそ本末転倒で現場至上主義ではなくなってしまう。
目指したものとちょっと違う部分も出てきたので、試合の時間をコントロールさせてもらいましたが、限界があったのも事実です。来年に向けた課題です」
ー強豪校のトップチームが参加しました。どうやって集めたのですか。
「これはネームバリューもある青嶋監督の力です。青嶋監督を通して各強豪校の監督たちにも呼びかけていただきました。流通経済大柏の榎本雅大監督たちからも『もっと大きい大会にしていこう』と言っていただきました」
ー赤字にはなってないですか。
「各チームから3万円しか集めてないんです。なので約30チームで90万円。会場使用料や審判派遣費、ボランティアの方々の交通費のほか、初めての大会なのでテントやプール、ベンチを購入したりすると…。
ただ、強豪校の監督さんにはスポンサー集めにも積極的に協力していただきました。全チームに椅子やボール6個、優秀選手にはスパイクを贈ることができました」
ー終わってみて出場チームの評価は?
「満足して帰っていただいたと思います。お礼の電話をいただき、『プライベートでもいいから遊びにきなよ』という言葉や、『これだけのことをよくやってくれたね』という言葉をいただきました」
ー青嶋監督は『予選リーグ全試合を天然芝でできるのは大きなアピールになるのでは』と話していました。
「そこはめちゃくちゃ大きいですね。どの方たちもおっしゃられます。やはり暑さが全く違うし、ケガもしにくいですよね」
ーこうした大会で恒例となっている監督たちの懇親会も工夫したとか。
「そうですね。今大会は宿泊場所が散らばってしまったので、3日間に分けて行いましたが、例えば御前崎会場だったら日韓ワールドカップの時にベッカムが泊まった部屋を見てもらったり(笑)」
ー今後、どんな大会に発展させていきたいですか。
「『昔の静岡が強かった時は色があった』と自分の恩師からよく話を聞いていました。例えば、長池実さん(元藤枝東高監督)のサッカー、美和利幸さん(元浜名高監督)のサッカー、井田勝通さん(元静岡学園監督)のサッカー…。今大会は、全国の色がある指導者の方々が来てくれたことがうれしかったです。
私の口から『強い静岡を取り戻そう』とは言えませんが、サッカーを通して幸せになる人たちが増えてほしいなと思っています。全国の人たちが静岡に集まってきて、静岡のお弁当屋さんや宿泊施設、現場の方たちがさらに育っていって、その過程で静岡のサッカーも強くなっていく。そんな流れができればいいなと思っています。
ただ、来年はもう少し誰かに仕事を渡しながら、持続可能な形にしていきたいなと思っています(笑)」
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