サッカージャーナリスト河治良幸
ジュビロ磐田のルヴァン杯V・ファーレン長崎戦のスタメンを読み解く!リーグ戦から大幅入れ替えも
ジュビロ磐田は17日のルヴァン杯ファーストラウンド2回戦で、V・ファーレン長崎とのアウエーゲームに挑む。J1の名古屋戦から中3日、さらに長崎戦から中2日でJ1のアビスパ福岡戦があるため、大幅なメンバー変更が見込まれる。
前々節の京都戦で今シーズン初めて出場、名古屋戦で後半17分からセンターバックでプレーしたDF森岡陸は「ルヴァンもありますし、自分の良さを出して信頼を高めていきたい」と前向きに語る。これまでリーグ戦で出番のなかった選手たちにチャンスが回ってくるだけに、アピール次第では今後のリーグ戦に向けた評価や序列を変えていく転機になりそうだ。
21歳の新外国人FWウェベルトンなど、残念ながら怪我で出られない選手をのぞいて長崎戦のスタメンを考えてみた。また普段のリーグ戦と異なり、ベンチに9人まで入れるというのはルヴァン杯ならではのレギュレーションだ。その分、リーグ戦に比べると横内昭展監督の選択肢も広がるので、試合展開に応じた5枚の交代カードの使い方も見どころになる。
神戸から加入のGK坪井がアピールできるか
GKはここ2試合リーグ戦でベンチ入りしている坪井湧也をチョイスした。ここまでのリーグ戦でさすがの存在感を示してきた川島永嗣とは違ったタイプだ。昨シーズンのJ1王者であるヴィッセル神戸から期限付き移籍してきた24歳のGKは洗練されたビルドアップとカバー範囲の広さで、ポゼッションをベースとした磐田のスタイルを進化させるポテンシャルを備えている。キャンプ途中に負傷して開幕は出遅れたが、スタメンに予想したディフェンスラインの選手たちとも練習試合で組んでおり、連係面に不安はないだろう。昨年のルヴァン杯3試合で神戸のゴールマウスを守っている。チャンスの起点になるフィードなどでもアピールしたいところだ。
右サイドバックは西久保か、川﨑か
4−2−3−1の4バックは右サイドから西久保駿介、森岡陸、鹿沼直生、高畑奎汰という並びに。西久保は4月7日の京都戦で初スタメン、続く名古屋戦でも先発したが、後半23分に交代で退いており、20歳という年齢を考えても中3日の試合で、十分にフィジカル的なパワーは発揮できるだろう。身体能力が非常に高く、縦に攻め上がってのクロスでFWのフィニッシュを演出するだけでなく、逆サイドからのクロスに飛び込んで、得意のヘディングでゴールを狙うこともできる。守備では1対1の強さも特長だ。ただ、新戦力ながら怪我で出遅れていた川﨑一輝もフィットしてきていると見れば、ルヴァン杯ではこの攻撃的サイドバックにチャンスが与えられるかもしれない。
センターバックは森岡が一番手
センターバックは名古屋戦で永井謙佑、パトリックというJ1でも名の知れたFWを相手に奮闘した森岡がスタメンの一番手か。その名古屋戦で復帰した伊藤槙人が起用される線も無くはないが、フィジカル的な負担を考えて、ベンチ入りしない可能性もある。もう一人はボランチが本職ながら、昨年もセンターバックで存在感ある守備を見せた鹿沼直生が、ここでチャンスを得るのではないか。もし伊藤が長崎遠征に帯同しなかった場合、高卒ルーキーの朴勢己が、ボランチと両にらみの形で備える形だろう。左サイドバックは京都戦の後半アディショナルタイムに磐田デビュー、名古屋戦でも途中出場した高畑奎汰のスタメンが既定路線だ。
長崎の強力アタッカー陣をどう食い止めるか
長崎がルヴァン杯でどこまでベストに近いメンバーを使ってくるか分からないが、やはりJ2で6得点のFWエジガル・ジュニオ、昨シーズンのJ2得点王であるフアンマ・デルガドを擁するアタッカー陣の破壊力はJ2レベルのそれではない。強力FWとの対戦を心待ちにする森岡をはじめ、磐田の若いディフェンスラインが、しっかりと食い止めて良い形での攻撃に繋げられるかは注目どころだ。ダブルボランチは藤原とレオ・ゴメスか
ボランチは怪我人が出ていること、副キャプテンの上原力也がJ1で8試合フル出場であることから、一人はリーグ戦3試合連続スタメンの藤原健介か。セットプレーのキッカーとしても頼りになり、左利きの高畑と二人で蹴り分ける構図が想定できる。もう一人は守備能力の高いレオ・ゴメスだろう。前向きに攻撃を組み立てながら、中盤でのボール奪取も精力的なコンビとなる。
ただ、この二人が揃って90分やりきることは考えにくい。その意味では上原、平川怜も含めてベンチに誰が入るかは気になるが、センターバックのところでも名前をあげた18歳の朴はオプションだ。
またリーグ戦ではここまでサイドバックでスタメン起用されている大卒ルーキーの植村洋斗も本来はボランチの選手であり、ルヴァン杯ではこのポジションでチャンスをもらう余地はあるだろう。ただ、ここまでリーグ戦の主力であることから、中2日の福岡戦に備えてスタメンは考えにくい。
ベンチ外が続く金子翔太は…
2列目はここまでリーグ戦でベンチ外が続くMF金子翔太をいわゆる10番ポジションに。右は藤川虎太朗、左にリーグ戦でジョーカー的な起用が続く古川陽介という3人をチョイスした。選択肢としては右サイドのドリブラーであるブルーノ・ジョゼもいるが、今年から変則的なトーナメント形式になり、ここで負けたらいきなり敗退ということを踏まえると、古川をスタメンで出すなら、ブルーノはベンチに取っておきたい。また攻撃のオプションとしては筑波大から来年の加入が内定している角昂志郎がベンチ入りするか。
最前線、石田が出番を得るか
FWはここまでリーグ戦7得点のジャーメイン良と新外国人FWマテウス・ペイショットがともに、名古屋戦でフル出場したことから、彼らのスタメンは週末の福岡戦を見据えても考えにくい。そうなるとセカンドトップが本職ながら非凡な得点力を備える石田雅俊が、ここでようやく出番を得るか。そのほか、U-18のエースで、トップチームに二種登録しているFW山本将太、昨年もゼロトップ的な形で起用されたこともある藤川が、前線で起用されるオプションもある。
まずは何より、アウェーの地で長崎に勝利して、次のステージに進むことが大事ではあるが、今回チャンスをもらった選手たちが躍動的なプレーで横内監督にアピールできれば、ここからのリーグ戦に向けた良い意味での競争の活性化につながっていきそうだ。
タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。世界中を飛び回り、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。