語り:春風亭昇太

昭和56年に開館した芹沢銈介美術館。
人間国宝となった染色家、芹沢銈介からふるさと静岡市にその作品と収集品のコレクションが寄贈されたことをきっかけに、登呂公園の中にこの美術館が建設されました。
芹沢はあえて民芸的な建物を望まず、哲学の建築家とも呼ばれた白井晟一に設計を依頼し、すべてを白井にゆだねました。
白井は登呂遺跡の雰囲気や周囲の自然に溶け込むよう、平屋造りの建物を、石や木、水といった天然素材で構成し、最も好んだ京都の高山寺の石水院にちなんで、石水館と名付けました。
白井が紅雲石と名付けた韓国産の赤い御影石がふんだんに使われ、ゆるやかな銅板葺きの屋根がかけられています。
石の門を入って美術館入口へ向かうアプローチには石水館の水を表現する池と噴水があります。
白木の楢材の組天井が貼られた展示室は池を巡るように配置されています。
平成10年、旧建設省の公共建築100選にも認定されたこの建物は、夜にライトアップされた姿も美しいといわれています。
本来は分業で行う型染の全工程をひとりで行うことで、独自の世界観を細部までいきわたらせた芹沢銈介。
芹沢の作品、コレクションが展示されるこの美術館は建築物としても細部までこだわった見ごたえのある空間となっています。
静岡市歴史めぐり まち噺し 今日のお噺しはこれにて。