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河治良幸

サッカージャーナリスト河治良幸

静岡県勢で“サッカー森保ジャパン”23人を選考してみた。1トップのファーストチョイスは横浜FMの…

“サッカー王国”と呼ばれてきた静岡県は現在もサッカーが盛んな地域として知られる。Jリーグ創設から31年が経ち、全国的に普及する中で、日本代表の“静岡県勢”が少なくなってきている現実もあるが、魅力的な選手はたくさんいる。そこで今回は「静岡県勢だけで“森保ジャパン”の23人を選んだらどうなるか」というコンセプトでチームを作ってみた。

Jリーグなどでの活躍はもちろん、アンダーカテゴリーを含む代表チームに絡んだ経験なども参考にしている。また静岡県で育成年代を過ごした選手も「静岡県勢」として入れていることはご了承いただきたい。現在Jリーグで清水エスパルス、ジュビロ磐田、藤枝MYFC、アスルクラロ沼津に在籍する県外出身の選手も入れるか迷ったが、今回は静岡県の出身、または育成年代を過ごした選手を「静岡県勢」とした。

ゴールキーパー

GKは最も悩んだポジションだが、ジュビロ磐田ユースの出身である牲川歩見(浦和レッズ)を守護神に指名。レッズでは西川周作の影に隠れてはいるが、スペイン人のジョアン・ミレッGKコーチからハイレベルなスキルと守備戦術を学び、Jリーグのみならず、アジアや世界を舞台に挑戦する浦和のGK陣を支える。

梅田透吾(清水エスパルス、清水ユース出身)は不運な怪我などもあり、なかなか表舞台に立ててはいないが、鋭い反応やキックなど、近い将来、清水の守護神になりうるポテンシャルはある。

長沢祐弥(東京ヴェルディ、藤枝東高出身)は2020年シーズンに、J3アスルクラロ沼津でゴールマウスを守ったパフォーマンスが評価されて、翌年からヴェルディに移籍。出場機会は限られるが、試合に出れば安定したゴールキーピングを見せている。

右サイドバック

町田ゼルビアの右サイドバック鈴木準弥


右サイドバックはJ1昇格を決めたFC町田ゼルビアの主力である鈴木準弥をファーストチョイスに。鈴木はアスルクラロ沼津U-15の前身であるACNジュビロ沼津で育ち、清水ユースから早稲田大学を経て、ドイツでプロのキャリアをスタートさせた異色の経歴を持つ。J3時代の藤枝とブラウブリッツ秋田での活躍が評価されてFC東京に移籍し、さらに出場機会を求めて町田に移籍した。ハートの強い選手であり、来シーズンのJ1での活躍次第ではリアルに“森保ジャパン”の仲間いりを果たしてもおかしくない。

もう一人は左右サイドバックでマルチに無類の守備能力を発揮できる、富士宮市出身の吉田豊(清水エスパルス)を選んだ。清水では終盤に投入されるクローザー的な役割だが、秋葉忠宏監督にとってもサブというより、頼れる“12人目のレギュラー”という認識だろう。

左サイドバック

左サイドバックは掛川市出身の森下龍矢に 


左サイドバックは元日の試合に臨む”森保ジャパン”の招集メンバーでもある掛川市出身の森下龍矢(名古屋グランパス)、清水と磐田の両方に在籍経験がある松原后(ジュビロ磐田、浜松開誠館高出身)という攻撃的な2枚を選んだ。ポテンシャル的には山原怜音(清水エスパルス、JFAアカデミー福島出身)も推したいが、パフォーマンスの波に課題があり、期待も込めて現時点では次点としたい。

センターバック

センターバックは清水ユース出身の犬飼智也(柏レイソル)と“森保ジャパン”の主力でもある磐田ユース出身の伊藤洋輝(シュトゥットガルト)という、なかなか頼もしいコンビとなった。無論、伊藤は現在の代表でも、所属クラブでも左サイドバックがメーンになっているが、静岡県勢は同ポジションが充実しているので、持ち前の対人能力を中央で発揮してもらいたい。なお犬飼は静岡市の駿河区、伊藤は浜松市で生まれ育っている。

3、4番手は複数の候補がいて悩ましかったが、パリ五輪世代の中心的な存在である鈴木海音(ジュビロ磐田、磐田ユース出身)とJ1での実績十分の木本恭生(FC東京、静岡学園高出身)を選んだ。

そのほか、アンダーカテゴリーでの代表経験が豊富な立田悠悟(柏レイソル、清水ユース出身)や現在の磐田でスタメンを張る伊藤槙人(浜名高出身)など、人材が豊富なポジションで、良い意味で誰を選ぶか意見の割れるところだろう。筆者の見解としては鈴木海音のポテンシャルと“大岩ジャパン”で発揮している能力をもっと磐田に還元してもらいたい。

ボランチ

どのポジションでも器用にこなす旗手怜央はボランチ候補に


ボランチは静岡学園OBの2人になった。大島僚太(川崎フロンターレ、静岡学園高出身)は2018年のロシアW杯のメンバーだが、コンディションの問題で出番が無かった。度重なるふくらはぎの怪我が無ければ、現在でもA代表クラスだろう。

旗手怜央(セルティック)は三重県の出身だが、静岡学園高で選手権ベスト8に輝くなど、強烈なインパクトを残して、順天堂大学から川崎を経て、欧州の舞台に飛躍していった。得意ポジションは4−3−3の左インサイドハーフだが、森保監督も4−2−3−1の左サイドやトップ下で起用するなど、旗手のポリバレントな能力を高く評価している。今回は構成バランスを考えて左のボランチにした。

ボランチの3、4番手は富士宮市出身で、現在はポルトガルで活躍する渡井理己(ボアヴィスタ、静岡学園高出身)と、沼津市の出身でジュビロ磐田の主力を担う上原力也を選んだ。ボールを動かしてチャンスの起点を作れる渡井と攻守のバランスワークに優れる上原はそのままコンビを組んでも面白そうだ。そのほか、静岡学園で同級生でもあった鹿沼直生(ジュビロ磐田)など、何人か入れたい有力候補がいるので、次回があれば人選が変わっているかもしれない。

二列目

パリ五輪を目指すU-22日本代表・三戸舜介


二列目はJFAアカデミー福島のOBで、中学時代を御殿場で過ごしたU-22代表の三戸舜介(アルビレックス新潟)、藤枝明誠高出身でJFLのホンダFCでプレーした経歴もある遠野大弥(川崎フロンターレ)、熊本生まれの大阪育ちながら、静岡学園高で10番を背負った名古新太郎(鹿島アントラーズ)の3人をファーストセットとした。

さらに清水のアカデミー育ちから西澤健太(清水エスパルス)と石毛秀樹(ガンバ大阪)を選んだ。もう一人は長谷川竜也(東京ヴェルディ)だ。沼津市の出身で、中高を静岡学園で過ごした長谷川は川崎で4度のJ1優勝を経験している。そのほか、静岡学園高から磐田に加入した古川陽介など、ここから代表レベルに成長していくことが期待されるタレントもいる。

1トップ

パリ五輪出場を視野に入れる植中朝日


1トップは植中朝日(横浜F・マリノス)と静岡県勢期待の星でベルギー移籍が決まった18歳の後藤啓介(ジュビロ磐田、磐田ユース)の2人に託したい。22歳の植中は福岡県の生まれだが、三戸と同じJFAアカデミー福島に在籍し、御殿場市の中学校に通っていた。推進力のある飛び出しと冷静なフィニッシュを武器としており、マリノスでの活躍次第で来年のパリ五輪に滑り込む期待もある。

FWにはともに清水ユース出身で、経験豊富な長沢駿(大分トリニータ)や代表経験者の北川航也(清水エスパルス)もいるが、23人ということで“森保ジャパン”で求められる攻守のタスクや将来性も加味して、この2人のチョイスとなった。

全国にサッカーが普及したことで、確かに静岡県勢から代表選手が出にくくなっているのも確かだが、4つのプロクラブを持つサッカーどころとして地元の熱がさらに上がり、日の丸を背負う静岡県勢の選手が一人でも多く出てくることを願っている。

ベルギー移籍が決まり笑顔を見せる後藤啓介


<河治良幸>
タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。 サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。著書は「ジャイアントキリングはキセキじゃない」(東邦出版)「勝負のスイッチ」(白夜書房)「解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る」(内外出版社)など。
 
シズサカ シズサカ

タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。世界中を飛び回り、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。

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