
(山本)夏山シーズンを終えた富士山ですが、今年は国内外から大勢の登山客を迎え、山頂に向かう登山道は行列ができるほどにぎわいました。山頂を目指すことはできなくなった一方で、夏が終わっても魅力的なのが、富士宮、御殿場、須走の主要3ルート周辺の樹林帯や、宝永山など富士山の山腹に点在するスポットで、山頂に登らない富士山が注目されています。
(山田)ちょうど今日(5日)、富士山初冠雪の話題が届きましたけども。
(山本)もう富士山の頂上は冬。富士宮から行くと6合目より上は今は登山道が閉まっていて、一般の人は入らないでくださいという形になっています。
基本的に山開きが静岡側は7月10日、山梨側は7月1日で、9月10日にはもう閉山ということで、登山道は閉鎖されます。一般の登山客が山頂を目指した登山ができるのは、この2カ月だけなんですね。
富士山というと、山頂を目指すというのがイメージとして皆さんの中にあるし、「日本一の山だし一度行ってみたい」「1回行ったけどもう1回行きたい」と言う方がいます。でも、実は山好きの方で「富士山って登ってて面白くない」と言う方も多くいます。
(山田)富士山は「見る山だ」って人もいますもんね。
(山本)実際、木も何も生えていないただの坂道をずっと登っていくというのが、慣れた方だとあんまり面白くないようで。そういった皆さんに聞くと、「もっと富士山の山麓を見なさいよ」ということでした。広大な山麓があり、すごく面白くて気持ちのいい空間だということを聞き、それを楽しんでいる方もたくさんいると分かりました。
静岡新聞の毎週水曜に、「しずおかアウトドアファン」というアウトドアの楽しみを紹介する特集ページがあります。9月27日の紙面で、山頂を目指す富士登山ばかりじゃなくて、その周りはどうなのかということを取り上げました。取材した記者が、グループと一緒に歩いて回ったところ、森の中を歩くような感じで、本当に自然が素晴らしいと言っていました。
私も十数年前に一度、この辺りを歩いてみたことがあるんですが、それまで抱いていた富士山のイメージと全く違いました。大きな木があり、すごく気持ち良かった思い出があります。
(山田)富士山は岩とか砂利っていうイメージがありますけども、そうじゃない緑豊かな富士山を楽しむということですね。
2カ月間に人が集中、環境への影響も
(山本)今年の夏はコロナが一段落して、登山客が結構戻ってきたというデータが新聞で報じられています。開山前からものすごく富士山が混むんじゃないかなと思って注目していたら、22万人を超える方が登ったそうです。静岡県、山梨県側からそれぞれ登った人を8合目のところでカウントすると、22万人ということです。多い年だと30万人が登りました。2カ月間にこれだけの人が集中すると、やはりいろんなひずみもあるんじゃないかなと思います。長蛇の列が山頂の前にできているのは、環境保全の面からは決してよくないとずっと言われています。
(山田)30万人も来たら、富士山も傷みますよね。
(山本)たき火をする人がいるなど、いろいろな問題も今年、改めてクローズアップされました。それも、2カ月しかないっていうところに関係していると思います。日本一高い地点を目指したいという気持ちは分かりますし、2カ月しかないから、そこに全国、世界から人が集中してしまうんです。
広がる森、紅葉…これからの季節も楽しめる!

(山本)今回お伝えしたかったのは、実は富士山はそれだけじゃなくて、9月10日以降のシーズンオフも十分に楽しめるということです。
(山田)なるほど、ここは山開きしてないときでも行けるってことですね。
(山本)もちろん富士山は山ですので、急に天候が悪くなることもあります。決して丸腰で安全ではないんですが、例えば裾野市の水ケ塚公園というところには広い駐車場があり、御殿場口の新5合目にも駐車場があります。そこからスタートして歩き回ると、富士山南東側の山麓には森が広がっていて、コースとしても面白いようです。
(山田)5合目まで車やバスで行って、そこから少し上がると、緑豊かなところが広がっていると。まさに今の時期、ちょうど良くないですか?
(山本)いいと思います。今回の紙面で、登山家の方にも寄稿をしていただきました。その方も、自分のイチオシの山歩きコースとして、この富士山山麓の御殿場口周辺のコースを挙げていただきました。
富士山ならではの植物があり、紅葉が綺麗だったりとか、5合目から上にはない植生が見られたりする。既にいろんな方が山麓のコースを紹介していて、秋の楽しみになっているようです。
(山田)富士山と紅葉なんて全然イメージなかったんですけども。
(山本)黄色く染まったカラマツが一面に広がり、これからの時季は絶景になると聞きました。
(山田)富士山登るのも小学生でも登れたりしますけども、トレッキングコースの方は、登山の初心者でも行けるんですか?
(山本)もちろん、山歩きのための靴や雨具などのきちんとした装備は必要ですが、初心者でも行けるようですね。同僚の記者が9月半ばにこの辺りに行き、小学校低学年のお子さんと一緒に楽しめたそうです。
(山田)僕、こっちの方が好きかもしれないです。行ってみたいですね。
(山本)夏は混むだろうなと思い、避けているうちに行かずに夏が終わっちゃったので、ちょっとこの秋は富士山に行ってみたいなと思います。
(山田)秋の富士山もいいですね。そう思うと、やっぱり山頂を目指すだけじゃないっていうことですかね。
(山本)どうしても山頂を目指すことに注目が集まりますが、それによって無理が生じているのも事実だと思います。せっかく地元に富士山というあれだけの山があるので、楽しみ尽くしたいですね。
(山田)皆さんも、こういう楽しみ方もあるよということで、出かけてみてはいかがでしょうか。今日の勉強はこれでおしまい!