
サッカーU-20日本代表の冨樫剛一監督が“キングカズ”から学んだこととは…
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鬼頭:冨樫監督のプロフィールを紹介します。神奈川県ご出身、ヒデさんと同じ52歳。読売サッカークラブのユースで育ち、読売クラブ、ヴェルディ川崎、横浜フリューゲルスを経て、1997年、当時JFLのコンサドーレ札幌で現役引退しました。
引退後は2014〜2016年に東京ヴェルディの監督を務め、その後、日本代表ユース世代コーチを歴任。昨年から現在のチーム、U-20日本代表の監督を務めていらっしゃいます。
U-20W杯後、若い選手に伝えたこと
ヒデ:読売クラブで育ち、93年、ヴェルディ川崎でプレーしていた時代にJリーグが始まりました。ついにここまできたという気持ちになりました?冨樫:自分がプロになった年に、ちょうど三浦知良さんもブラジルから帰られて、同時に入団したんです。サッカー選手として日本に何かを還元したいという思いのレベルが、自分とカズさんではあまりに違いすぎて、自分は大丈夫なのかという不安の方が大きかったです。
ヒデ:カズさんはプロ意識の塊ですもんね。
冨樫:自分は「自分がプロとしてなんとかしたい」という思いしかなかったんですが、カズさんは「新聞の一面記事をサッカーにするために帰ってきた」って。まるっきり目標が違いました。
ヒデ:だからキングなんだもんね。「日本を背負っている」という選手と、「ついにプロになれたぞ」っていうサッカー少年とでは、その違いが結構大きく思えてしまうよね。そこでカズさんに出会えたのは良かったですね。
冨樫:そうですね。実際にこの話は、先日のU-20ワールドカップで負けた後、選手たちにも話しました。
ヒデ:選手たちはそのとき、雷に打たれたような表情をしてたんじゃないですか。
冨樫:「三浦知良選手はそういう思いを持ってプレーをしてたんだよ」っていう話をしたら、驚いてましたね。
上に行く選手が持つ特徴とは

ヒデ:ご自身はどんなサッカー選手でしたか。
冨樫:誇れるような活躍はできなかったなという思いです。だからこそ、指導者として何か伝えるものもあると思って、今ここに立ってはいるんですけども。
ヒデ:先日のU-20ワールカップを見て、松木玖生くん(FC東京)のようなエゴイズムがやっぱり必要だなってちょっと思いました。世界と戦うには必要不可欠なことなんでしょうか。
冨樫:そうですね。プロの選手、あるいは代表になっていった選手たちは自己主張がしっかりできる。大人相手でもしっかりと自分の意見を言える人間たちがやっぱり上にいっています。
ヒデ:その世代の指導はやっぱり難しいのでは。ちょっと背中を押せば羽ばたけるときもあれば、間違えたポイントを押してしまうとシュンとなってしまったり。
冨樫:特にU-20はプロになりたて、あるいはプロって何かっていうのをわかり始めた選手たちなので、育成の選手とはちょっと違う。かといって、一流のプロではない。選手たちと上手くコミュニケーション取っていかないと、プレーのところに表れないなっていうのはすごく感じます。
鬼頭:特に叱り方とかで心がけていることありますか。
冨樫:自分が育った読売クラブでは、指導者に怒られたり、何か罰を与えられたりしたことがありません。周りを見ながら、なんとか上手くならなきゃという環境で育ってきたので、自分も選手たちを怒ることはほとんどないですね。
選手たちはモチベーションみたいな、上手くなりたいっていう思いは必ず持っているので、その力をしっかりと1つにしてピッチの上に出すっていうことが、自分の仕事だと思っています。
選手にまず、しっかりとしたプレーの基準を示し、特に若い選手には責任を持たせてプレーさせること、そして失敗を許容することを大切にしています。最後、責任は自分が取るという中で、プレー時間を与えることが大事だと思っています。
ヒデ:「最後は俺が責任取るから思い切ってやってこい」っていうのは嬉しいよね。
J2清水の菊池脩太の良さは?
鬼頭:今回、清水エスパルスの菊地脩太選手もU-20の日本代表に選ばれていました。菊地選手の良さは。冨樫:非常にクレバーですし、試合の流れをしっかり読みながら、攻守にプレーできるところがいいところです。残念ながら、ワールドカップでなかなか使ってあげることはできませんでしたが、それでも何かあったら彼を使えるという安心感で、自分は采配をしてました。
鬼頭:静岡はじめ、全国に視察に行ったりもなさるんですか。
冨樫:もちろん情報はかなり入ってきますが、やっぱり実際に自分の目で見るっていうのはものすごく大事にしているので、最後はもう全国行脚でした。
鬼頭:じゃあ静岡にもいらっしゃった?
冨樫:もちろん。先日のエスパルス戦も行きましたよ。脩太には会えなかったですけれど。
13〜14歳の選手もチェック
鬼頭:何歳ぐらいの世代からチェックするんですか。冨樫:15歳から日本代表というのが始まります。でも、もう13、14歳のところから情報は吸い上がってきます。
鬼頭:普段はどんなスケジュールで動いてらっしゃるんですか。
冨樫:今はU-20ワールドカップも終わり、良かった点、悪かった点、これからの若い選手がどういうふうに世界に出ていくかみたいなものを発信する仕事がメインになってます。
ヒデ:将来的にはもちろんA代表の監督も目指しているでしょうし、Jリーグのチームをやろうと思ってるわけでしょ。
冨樫:この仕事はなかなか立候補してできるものではないので…。自分の目標は、日本のサッカー界に必要とされる人間でありたいということなので、そういう人間になれればなと。
ヒデ:20歳のときにカズさんの背中を見て思ったことが、今も大きな夢、目標になってる感じですかね。
冨樫:大きく影響を受けてますね。
静岡はサッカー文化が根付く街
鬼頭:現状では静岡にJ1チームがありません。何か一言いただければと思うんですけが。冨樫:私からすれば、静岡がサッカー王国だっていうのはもうほんとに小さい頃からですし、間違いなくサッカーが文化として根付いてる土地なので、あまり心配はしていないというか。
ヒデ:我々世代はほんとにやっぱり静岡が王国でしたもんね。
冨樫:そうですね。静岡の人たちはサッカーが上手いってずっと思ってるので。
ヒデ:最後に、サッカーファンやリスナーにメッセージをお願いします。
冨樫:U-20ワールドカップは残念ながらグループで負けてしまいましたけれど、彼らがその悔しさを持って、A代表、またJリーグ、そして世界に羽ばたいていくと思いますので、しっかりとその成長を皆さんで見ていってほしいなと思います。


サッカー大好き芸人、ペナルティ・ヒデと、サッカー中継のリポーターとしても活躍する鬼頭里枝の2人がお送りする番組。Jリーグから海外サッカー、ユース世代、障がい者サッカーなど幅広くスポットを当て、サッカーを通して静岡を盛り上げます。目指すは「サッカー王国静岡の復権」です!