〇委員の意見〇
・ 浜松市出身の松井栄造の短い野球人生を通しての描写が、素直に描かれていた。多くの場面で、現代の子供たちに問い、その答が率直に発せられていたと思う。憲法9条、96条に関して議論がなされている我が国においてとてもタイムリーであり、興味のある企画だった。
・「戦争はもう絶対にしないという決意も最近はそういう方も少なくなってしまって」というご婦人の言葉が印象的だった。一方戦争について問われれば「行く」と答える子供に、危うさを感じた。これが風化という事態なのか。タイトルの「希求」は、日ごろあまり使われない言葉だが、タイトルに出てくるだけで、まさに無言の迫力。その語感、松井選手のそれは、現代の私たちのそれはと、波紋のように思いが広がり、見ている人に問うていたと思う。
・戦争で命を失った静岡県が生んだ野球界の英雄、松井栄造の生涯を通して、二度と戦争を起こしてはならないということを強く訴えようとする制作者の意図が非常によく伝わってきた。松井の人生と反戦へのつながりは、それほど自然に、かつ強く伝わるものにはなっていないと感じた。むしろ、残された家族が味わった、つらい思いにスポットを当てて戦争の悲惨さを訴えることはできなかったのかと思った。
・偉大な野球選手、松井栄造という人物とその野球の功績を掘り起こし、私たちに、その光芒を知らせてくれた。その光芒によって、戦争という闇がより鮮明に浮かび上がってきていて、戦争の悲惨さを訴えるには、非常に十分な佳作であった。松井選手の栄光とか悲劇を身近に共有した人たちと、戦争を知らない野球少年たちの証言や話を引き出し、その両方の世代の表情とか話を対比させながら、戦争の悲惨さ、虚しさを考えるという手法は、非常に新鮮だった。
・全ての構成が、それぞれすごく意味がある構成になっており、無駄のない作品だと思った。ろうそくの炎が印象に残った。野球、スポーツ少年の皆さんがインタビューに答えられて発する言葉が、私としては非常にショッキングな言葉が出てきたなという思いがした。やっぱり戦争そのものの中身というか、戦争をどのようにとらえているんだろうとすごく疑問を投げかけられた。
・戦争に対しての、いろいろな風化させてはいけない事実をやっぱり我々は持ちながら、あるいはそれを検証するという役目もあるという強い意志を我々に与えてくれた。
・松井栄造が野球で活躍された時代、それから戦争の時代のこと、そして今という、3つの時代をうまく絡め取り、説明抜きの展開の中でつながりや意味を考えさせるとう手法はすばらしいなと思った。戦争について時代時代をつなぎとめていく、それを後世に伝えていくのが、こういった番組の役割だと思う。 |