
【サッカージャーナリスト・河治良幸】
J2は残り14試合、夏場を経て終盤戦に入っていくが、昇格争いは混沌としてきている。理由は上位陣が残留争いの渦中にある下位に敗れたり、勝ちきれずに引き分けで勝ち点2を取りこぼしたりする試合が相次ぎ、“6ポインター”と呼ばれる上位の直接待決も、痛み分けのドローが相次いでいるからだ。
その最中で、ジョン・ハッチンソン監督率いるジュビロ磐田もホームのヤマハスタジアムで、15位のブラウブリッツ秋田にセットプレーから3発を食らうなど、1-4の惨敗を喫してしまった。
ただ、順位こそ8位に下がったものの、2位のジェフ千葉とは勝ち点4差であり、ここから軌道修正していければ十分に逆転は可能だ。
ハッチンソン監督も現在の自分たちのパフォーマンスに到底満足できないことを前提としながら「昇格圏まで4ポイント差というところだけがポジティブだと思いますが、シーズン開幕当初から言っているように、J2はどこが相手でも、非常に難しい試合になるというのは毎週感じている」と語る。それを認めた上で、自分たちにしっかり目を向けて、着実に勝ち点3を積み上げていけるかどうか。
次節対戦する13位のいわきにとっては残留を確かなものにして、上位を目指していく足がかりにしたい試合となる。コンタクトプレーが多く、ロングボールや長いランニングをうまく使った戦術や局面でのフィジカル的な強さなど、秋田と共通する特長もある。磐田にとって決してやりやすいチームではないが、藤枝MYFC時代の2023年、アウエーのいわき戦で2得点を記録した実績を持つFW渡邉りょうの奮起に期待したい。

首位水戸と16日に激突
首位の水戸ホーリーホックは勝ち点が48で、磐田とは10離れているが、前節はロアッソ熊本にリーグ戦では16試合ぶりとなる黒星となった。次節は元磐田の横内昭展監督が率いるモンテディオ山形とのアウエーであり、ここで水戸が勝利するのか、連敗でズルズルいってしまうのかで、J2全体の勢力図は大きく変わってきそうだ。J2優勝を掲げてきた磐田としても、目の前の現実を受け止めていく必要はあるが、16日に水戸と直接戦うことができる。まずは10日のアウエーのいわき戦で勝利を目指して、結果的に水戸との勝ち点がどうなっているかだ。
水戸は10得点のエース渡邉新太が攻撃を引っ張るが、彼と強力2トップを組んできたFW寺沼星文がJ1の東京ヴェルディに移籍した。代わりに湘南ベルマーレから根本凌が加入したが、パワフルな中央突破を強みとする寺沼とシンプルなポストプレーや裏抜けが得意な根本では特長が異なるだけに、森直樹監督がどう組み込んでいくか。同じく新加入である高速ドリブラー新井瑞希のフィットも鍵を握りそうだが、昇格のライバルからすると、ここで足踏みしてほしいだろう。
現在2位の千葉、同じ勝ち点42で3位のベガルタ仙台が、首位の水戸を勝ち点6差で追いかけるが、すぐ後に4位の大宮アルディージャ、5位には元磐田の鹿沼直生が中盤の主軸として奮闘する徳島ヴォルティスが付けている。
千葉は右サイドの主力だった田中和樹が、怪我で長期離脱したところに山形からイサカ・ゼインを加えた。加速力と正確なクロスに定評のあるウイングの存在は頼もしいが、首位を快走していた前半戦の強さを取り戻したとは言い難い。9日には大宮とのまさしく“6ポインター”がある。前節のアウエーでカターレ富山を相手に連敗を止めた大宮が、連勝で勢いに乗るのか、千葉が突き落とすのか。J2全体でも大一番だろう。

高木琢也監督が途中就任して、巻き返してきた6位のV・ファーレン長崎はタレント力からしても、ここから逆転優勝を果たしてもおかしくないポテンシャルがある。右サイドの主力だったMF増山朝陽をJ1のFC町田ゼルビアに引き抜かれたが、かつて長崎を率いた高木監督の教え子でもある翁長聖を東京ヴェルディから獲得しており、抜かりはない。
磐田と同じ“降格組”である7位のサガン鳥栖も、J1のセレッソ大阪を長く率いた小菊昭雄監督の戦術が浸透してきており、元清水の西澤健太も重要な役割を果たしている。ここから昇格争いの主役に躍り出る可能性はあるが、勢いに乗りかけたところで、北海道コンサドーレ札幌に敗れたことがどう影響するか。
長崎と鳥栖は8月17日に直接対決がある。九州の近隣クラブとして、プライドをかけた一戦にもなるが、その前に長崎は10位の札幌と試合があり、鳥栖は最下位の愛媛FCとのアウエーがある。岩政大樹監督が率いる札幌は鳥栖に勝利したことで、9位のFC今治とともに、2位まで勝ち点8差と迫ってきているが、長崎がここで札幌を叩いて鳥栖戦に臨むことになるのか。今週末に鳥栖と対戦する愛媛は磐田とのホームを含む、ここから上位と多くの対戦を残しており、残留をかけた彼らの戦いが昇格争いの鍵を握るかもしれない。
磐田のハッチンソン監督が語るように、J2は元々、上位が下位に敗れるような結果は起こりやすいが、ここから残留がかかってくる分、ある意味で上位対決より難しい試合になりやすい。昇格を目指すチームは下位を相手に勝ち点3を着実に取り、“6ポインター”をものにしていくことが求められる。その戦いに打ち勝った先で昇格をつかみ取れるか。攻撃的に相手を押し込むアタッキングフットボールを掲げているが、その質を上げるだけでなく、勝負所をものにする強さもより必要になってくる。
