ジヤトコが挑む“移動の未来”
電動アシスト自転車ユニット開発に込めた技術革新
自動車部品メーカーとして知られるジヤトコが、新たな分野に取り組んでいる。2026年4月、同社は電動アシスト自転車向けドライブユニット事業を本格展開すると発表した。自動車用変速機で培ってきた技術を活かし、電動アシスト自転車向けのユニット開発を進めている。
自転車本体ではなく“ユニット”を提供
一般的に「電動アシスト自転車」というと、自転車メーカーが完成車として販売するイメージが強い。しかし、ジヤトコが手掛けるのは自転車本体ではない。リアタイヤ部分に搭載される「モーター」と「変速機」を一体化したドライブユニットであり、自転車メーカー向けに供給する製品だ。
同社担当者は取材の中で、「私たちは自転車を売る会社ではなく、電動パワートレインを提供する会社」と説明する。自動車向け変速機で培った技術を、自転車向けユニットへ応用している点が今回の特徴といえる。
特徴的なのは、モーターと変速機構を一つのユニット内に収めた構造だ。現在の自転車市場では、変速機構が外側に露出しているタイプが一般的で、チェーンオイルによる汚れや、衣服の巻き込みなどが課題とされてきた。
一方、ジヤトコのユニットは変速機構を内部に格納することで、メンテナンス性や安全性を高めている。油汚れが少なく、靴紐やスカートの裾が巻き込まれるリスクも軽減される。また、外部に金属部品が露出しにくいため、サビや転倒時の破損にも強いという。

坂道や停車時でも扱いやすい変速性能
このユニットの大きな特徴の一つが変速性能だ。
従来のチェーン式変速機では、坂道で強くペダルを踏み込んでいる最中にギアチェンジしにくい場面があった。しかし、ジヤトコのシステムでは、自動車向け変速機開発で培ったギア技術を応用し、負荷がかかった状態でもスムーズな変速を可能にした。
担当者は「坂道の途中でも素早く簡単にシフトできるため、安全性が高い」と話す。特に自転車に乗り慣れていない人ほど、坂道の途中で“重くなってから”変速するケースが多く、その際に変速できないことで転倒につながる場合もあるという。
また、停車中でもギア変更が可能な点も特徴だ。信号待ちの間に坂道発進用のギアへ変更できるため、再発進時の負担を軽減できる。坂道の多い地域では、高齢者や観光客にとっても扱いやすさにつながりそうだ。
今回販売が始まったモデルは、ホダカ株式会社のスポーツタイプ電動アシスト自転車「FESGLIDE(フェスグライド)」。価格は16万9400円(税込)で、通勤利用や健康志向の利用者などを想定している。

富士エリアで広がる電動アシスト自転車活用の可能性
今回の取材では、製品開発だけでなく、地域での活用についても話題が広がった。
近年、静岡県内ではサイクルトレインや観光レンタサイクルなど、自転車を活用した取り組みが各地で進んでいる。富士エリアは富士山や海岸線など景観に恵まれる一方、坂道も多く、自転車利用のハードルがある地域でもある。
担当者は「レンタサイクル事業そのものをやるわけではないが、地域貢献の入り口として、自治体や地域と連携した活用には取り組みたい」と話す。
今後は、さまざまなタイプの自転車への展開も視野に入れているという。自動車向け技術を活かしながら、新たな移動分野への展開を進めるジヤトコ。地域での活用も含め、今後の動きが注目される。