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節電呼びかけ 「電力需給逼迫注意報」発令のタイミングは

 気温の上昇に伴って、東京電力管内の電力需給が逼迫(ひっぱく)する恐れが強まり、経済産業省が26日、節電を呼びかける「電力需給逼迫注意報」を初めて発令しました。静岡県内では、富士川以東の20市町が東電管内に入ります。この注意報、今年5月に新設されました。どのようなタイミングで発令されるのでしょうか。東海地方は梅雨明けしたばかり、猛暑が続いています。体調を崩さない程度に節電に協力しましょう。
 〈キュレーター:編集局未来戦略チーム 石岡美来〉

官民、節電に追われる 動物園「継続 難しい」

 国が東京電力管内に初めて出した「電力需給逼迫(ひっぱく)注意報」。静岡県内でも東電管内の富士川以東20市町で27日、特に節電が呼びかけられた午後3~6時を中心に自治体や事業所が対応に追われた。28日も注意報の継続が発表されたが、「連続しての対応は難しい」との声も聞かれた。

静岡県を含む東海地方は27日に梅雨明けが発表された。青空の下で行われた花火の天日干し=同日午前11時50分、静岡市葵区新間(写真部・坂本豊)
静岡県を含む東海地方は27日に梅雨明けが発表された。青空の下で行われた花火の天日干し=同日午前11時50分、静岡市葵区新間(写真部・坂本豊)
 河津町の動物園「iZoo(イズー)」では午後1時半ごろから、動物を飼育するバックヤードの照明を全て消して対応した。同園によると、1日程度なら動物への影響はないという。白輪剛史園長は「何日も同じ対応は取れない。暖房はストーブなどがあるが、冷房は代わりがない。停電すると爬虫(はちゅう)類は死ぬ可能性もある」と頭を抱える。
 県東部の事業所も節電を実践した。芝浦機械は沼津市や御殿場市の工場で、照明やパソコンの電源をこまめに切った。沼津市の沼津商工会議所は会議所会館内に事務所を構える事業所に対し、終日の節電を呼びかけた。当面はエアコンの温度調節や消灯の徹底などを続ける方針という。
 自治体も協力した。富士宮市は庁内のエレベーターを一部停止し、庁内放送で節電を促した。東伊豆町は水道水の供給に影響のない範囲で、取水ポンプや中継ポンプを一時稼働停止することを決めた。

 ■県「無理のない範囲で協力を」 東電管内発令で
 東京電力管内で28日も「電力需給逼迫(ひっぱく)注意報」の発令が続くことを受け、県は27日、東電管内の県民、事業者に対して、無理のない範囲での節電への協力を要請した。
 経済産業省は27日に続き、28日も午後4~5時に需給が厳しくなる見通しを示している。県は特に午後3~6時の時間帯について「冷房を活用して熱中症に十分に注意しつつ、使っていない照明を消すなどの協力を」と求める。(東部総局・尾藤旭)
 〈2022.6.28 あなたの静岡新聞〉

電力需給「注意報」 どういう場合に発令される?

 経済産業省は17日(※2022年5月)、電力需給が逼迫(ひっぱく)して大規模停電に陥る恐れがある場合、家庭や企業に早めに節電を呼びかける「注意報」を新設する方針を固めた。現在の「警報」に追加し、電力需要に対する供給余力を示す「供給予備率」の切迫度に応じて使い分ける。東京電力管内で来年1、2月に暖房の利用が増えて電力が不足すると予想し、今夏と来冬は他の電力会社管内でも大規模停電の可能性があるため、情報発信を強化して備える。

経済産業省
経済産業省
  松野博一官房長官は記者会見で注意報を「夏までに導入する」と述べた。警報発令は逼迫が予想される日の前日午後4時をめどとし、これまでより2時間前倒しする。注意報も前日午後4時をめどに出す。今年3月、東北地方を中心に起きた地震による発電所停止や気温低下を受け、経産省は初の警報を東京電力管内に出したが、発令を公表したのは前日午後9時過ぎで「周知が遅い」と批判が出ていた。
  電力を安定的に供給するには3%の供給予備率が必要とされている。注意報は、他の電力会社から融通を受ける電力を含め、予備率が3~5%の時に発令する方針。警報はこれまで通り3%未満の場合に適用する。
  さらに、電力の融通を含めずに予備率が5%程度になると予想される場合、電気事業者が前々日の午後6時ごろに「準備情報」を出す仕組みも新たに設ける。準備情報は一般的な情報提供と位置付け、具体的な節電行動は求めないとした。
  経産省は、こうした情報発信強化の概要を17日に開いた有識者の検討会に示した。
  経産省は、今年7月に供給予備率が東北、東京、中部の3電力管内で3・1%に低下すると予想。来年1、2月は中部、北陸、関西、中国、四国、九州の6電力管内で2%台に落ち込み、東京電力管内は1月がマイナス1・7%、2月がマイナス1・5%と見込んだ。

  電力の供給予備率 電力の需要に対して電力会社の供給力が、どの程度の余力を持っているかを示す比率。電力需給の逼迫(ひっぱく)度合いを表す。省エネや節電で電力需要が減れば予備率は上昇する一方、酷暑や厳冬などで需要が増えた場合は低下する。安定的な電力供給には最低限3%が必要とされる。3%を下回る場合は電力不足に陥る可能性があるとして、節電要請などが検討される。マイナスの場合は大規模停電につながる恐れがある。
 〈2022.5.18 静岡新聞朝刊〉

猛暑と電力逼迫 熱中症対策が最優先

節電のため、展示中のライトが一部消された売り場=27日午後2時48分、東京・有楽町のビックカメラ有楽町店
節電のため、展示中のライトが一部消された売り場=27日午後2時48分、東京・有楽町のビックカメラ有楽町店
 太平洋高気圧が日本列島に張り出し、晴天が続いて日照時間が伸び、6月として異例の厳しい暑さになっている。気象庁はきのう、関東甲信、東海、九州南部で梅雨明けしたとみられると発表した。
 気温上昇に応じて東京電力管内ではエアコンの使用などによって電力需給が逼迫[ひっぱく]し、経済産業省は26日、企業や家庭に節電を呼びかける「電力需給逼迫注意報」を初めて発表した。静岡県内の富士川以東20市町も東電管内にあり、電力消費には注意が必要だ。
 一方で厳しい暑さによって熱中症リスクも高まっている。命や健康が最優先であることを確認しておきたい。室内では、水分をこまめに取った上でエアコンを活用し、熱中症を防いでほしい。無理な節電はすべきではない。
 総務省消防庁によると、今年5月の全国の熱中症での救急搬送者は2668人(前年同期比1042人増)。3割は住宅内で発生し、患者の半数以上が高齢者だ。猛暑の場合、状況に応じてマスクを外すことも考え、まずは暑さから身を守ってもらいたい。
 電力需給が逼迫する背景には、脱炭素化の流れの中で再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、火力発電所の稼働率が低下して休廃止が増加したことがある。加えて今年3月の福島県沖地震で震源地に近い石炭火力が損傷して長期停止に陥った。多くの原発は停止中で代替電源を急に確保できない。
 電力需要に対して供給力の余裕度を示す「予備率」で、安定供給には最低限3%が必要とされる。予備率がマイナスになると大規模停電する恐れがあり、防止のために計画停電も想定される。夏季なら、エアコンの設定温度を上げる、冷蔵庫の開閉頻度を減らす、使っていない照明を消す―など、できる範囲で節電への心構えが重要だ。
 経産省は、他社からの電力融通を含めた予備率の見通しが5~3%の場合に注意報を、3%未満で警報を出して節電を要請する。注意報は今年から運用されている。7月の予備率は、東北電、東電、中電の3社管内がいずれも3・1%と見込まれ、需給見通しは非常に厳しい。本州にある残り5社も3・8%と楽ではない。
 東電は本年度の冬はさらに厳しく1月はマイナス0・6%、2月は同0・5%と見込まれる。中電など6社も1月が1・3%、2月が2・8%と安定供給には程遠い。火力発電所の再稼働の取り組みも始まっているが、十分ではない。原発再稼働に対する不安は全く解消できていない。こうした綱渡りの電力供給をどう改善するか、真剣に考える必要がある。
 〈2022.6.28 あなたの静岡新聞 社説〉
地域再生大賞