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みまひな 全日本卓球V4の軌跡

 卓球の全日本選手権で女子ダブルスの伊藤美誠(21)=磐田市出身=、早田ひな(21)ペアが歴代最多に並ぶ4連覇を達成しました。快挙の軌跡を振り返ります。
 シングルスでは、しのぎを削るライバル関係でもある2人。今年の大会ではダブルス決勝翌日に行われたシングルス決勝で伊藤選手が早田選手を下し、前回大会の雪辱を果たしました。
 〈静岡新聞社編集局未来戦略チーム・尾原崇也〉

変幻自在の21歳ペア 4連覇、女王の風格

 卓球の全日本選手権第6日は29日、東京体育館で行われ、女子ダブルス決勝は伊藤美誠(スターツ、磐田市出身)早田ひな(日本生命)組が3―1で宋恵佳、成本綾海(中国電力)組を下し、歴代最多に並ぶ4連覇を飾った。

女子ダブルス決勝でプレーする伊藤(右)、早田組=東京体育館
女子ダブルス決勝でプレーする伊藤(右)、早田組=東京体育館

 ▽女子ダブルス決勝
 伊藤(スターツ、磐田市出身)/早田(日本生命) 3(12―10 7―11 14―12 11―5)1 宋/成本(中国電力)

 ■止まらない進化
 打倒中国に最も近い日本最強ペアには勝負どころでもう1段上のギアがある。女子ダブルス決勝で伊藤、早田組は第1ゲームを5―10からの7連続得点で逆転し、第3ゲームも相手のゲームカウントを2度しのいで奪った。「苦しい場面でどう1点取るかを考えてきた」と伊藤。女王の風格を漂わせる試合運びで、歴代最多の4連覇に並んだ。
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女子ダブルスで4連覇を達成し、笑顔でタッチを交わす伊藤美誠(左)、早田ひな組=東京体育館

 東京五輪を終え、再びペアを組んで実感したのは個々の成長。昨年の世界選手権は決勝で中国ペアに敗れたが、全日本に向け2人の連係やサーブの工夫、さまざまな回転の打球への対応などをあらためて突き詰めた。
 伊藤がポイントに挙げたのは第1ゲーム終盤。9―10から、ここまで手を焼いていた宋のフリックを伊藤が拾って早田が仕留めた。「やられていた攻撃に対し、いい判断ができた」(伊藤)。最後は自らのサービスエースで流れを引き寄せた。
 早田は苦しい体勢からでも強烈なフォアドライブをたたき込み、伊藤は鋭い回転が掛かった相手のしゃがみ込みサーブに、攻撃的レシーブ「チキータ」を合わせリターンエースを奪う場面も。硬軟自在の戦術、技術を見せつけた。
 多様なスタイルと戦うダブルスはシングルス強化にもつながっている。「ダブルスで中国選手に勝てるようになって、シングルスも戦えるようになった」と伊藤。早田は今回の全日本を「2人の新たなスタート」と話す。ともにまだ21歳。進化は止まらない。
 〈2022.1.30 あなたの静岡新聞〉

初優勝は2018年 あどけなさ残る17歳

 卓球の全日本選手権第6日は20日(※2018年1月20日)、東京体育館で行われ、男子ダブルスは水谷隼(木下グループ、磐田市出身)、大島祐哉(木下グループ)組が上田仁、吉田雅己組(協和発酵キリン)を3-1で下して初制覇を果たした。女子は世界選手権銅メダルの伊藤美誠(スターツ、磐田市出身)、早田ひな(日本生命)組が梅村優香、塩見真希組(大阪・四天王寺高)を3-1で破って初優勝した。

女子ダブルスで優勝した伊藤(右)、早田組=東京体育館
女子ダブルスで優勝した伊藤(右)、早田組=東京体育館

 ▽女子ダブルス決勝
  伊藤、早田 3(5―11 11―7 11―9 11―5)1 梅村、塩見

 ■信頼関係で頂点
  女子ダブルス決勝の10代対決は、世界を知る2人に軍配が上がった。「うれしいというよりほっとした」と伊藤。重圧から解放され、早田と笑顔で抱き合った。
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伊藤選手(左)と早田選手

  世界選手権銅メダルの肩書にたがわず、準々決勝以降の3試合は3―0、3―1、3―1と危なげなかった。決勝は第1ゲームを奪われても動じなかった。「相手は(強打を)ブロックしてからの展開がうまかった。逆を突くこと、緩急をつけて反撃されないようにすることを意識した」と早田。主導権を奪い返し、両ハンドから狙い澄ましたショットで得点を重ねた。
  ペア結成から約1年。「自分がコースを突けば、(早田)ひなが必ず決めてくれる」(伊藤)、「美誠の崩しがなければ自分の攻撃を出すのは難しい」(早田)と互いの信頼感も抜群だ。
  伊藤は混合に続くダブルス制覇。21日のシングルスを制すれば、女子で史上3人目の3冠だ。石川(全農)との準決勝に向けて「思い切ってやるだけ」と語った。
 〈2018.1.21 静岡新聞朝刊〉

堅い守り 重圧はねのけ2連覇

 卓球の全日本選手権第6日は19日(※2019年1月19日)、大阪市の丸善インテックアリーナ大阪で行われ、ダブルス決勝は女子の早田、伊藤組が芝田沙季(ミキハウス)大藤沙月(ミキハウスJSC)組を3-1で退けて2連覇を達成。伊藤は混合ダブルスに続き2種目連覇となった。

女子ダブルスで連覇した伊藤(手前)、早田組=丸善インテックアリーナ大阪
女子ダブルスで連覇した伊藤(手前)、早田組=丸善インテックアリーナ大阪
 
 ▽女子ダブルス決勝
 早田 伊藤 3(11―3 11―9 12―14 11―6)1 芝田 大藤

 ■「喜びたいのに喜べない…」 翌日にシングルス対戦控え、本音も
 盤石の戦いで重圧をはねのけた。女子ダブルスの伊藤、早田組が、相手に付け入る隙を与えずV2を達成。「個々の実力が上がったからこその連覇。素直にうれしい」と伊藤。昨年の初優勝から一段とレベルアップし、圧倒的な力を見せつけた。
 危なげない戦いぶりだった。決勝までの5試合で奪われたゲーム数はわずか2と堅い守りが光った。決勝は1ゲーム目にいきなり8連続得点で流れを呼び込み、手を緩めることなく攻め込んだ。伊藤の多彩なサーブとレシーブ、早田の強力なドライブ。2人の武器を最大限に発揮した。
 伊藤は混合ダブルスと女子ダブルスの2冠を手にし、残すはシングルスのみ。女子史上初の2年連続3冠へ王手をかけた。20日のシングルス準決勝は、ダブルスでコンビを組む早田と対戦する。伊藤は「ダブルスの優勝の後で(2人で)喜びたいのに喜べない」と複雑な表情を浮かべた。だが、シングルスへの気持ちの切り替えはできている。「試合を楽しんだ者勝ち。いつも通り楽しんで自分の実力を出したい」。18歳が大記録達成へ挑む。
 〈2019.1.20 あなたの静岡新聞〉

お互いの成長感じたV3

 卓球の全日本選手権第6日は18日(※2020年1月18日)、大阪市の丸善インテックアリーナ大阪で行われ、前回と同じ顔合わせとなった女子ダブルス決勝は、伊藤美誠(スターツ、磐田市出身)早田ひな(日本生命)組が芝田沙季(ミキハウス)大藤沙月(ミキハウスJSC)組を3-1で退けて3連覇を果たした。

女子ダブルスで果敢に攻めて3連覇を果たした伊藤(右)、早田組=丸善インテックアリーナ大阪
女子ダブルスで果敢に攻めて3連覇を果たした伊藤(右)、早田組=丸善インテックアリーナ大阪
 ▽女子ダブルス決勝
 伊藤 早田 3(11―3 11―9 7―11 11―8)1 芝田(ミキハウス) 大藤(ミキハウスJSC)

 ■練習時間少なくても「不安ない」
 高速卓球で相手を寄せ付けなかった。女子ダブルスを3連覇した伊藤は左拳を握り締め、ペアの早田とハイタッチを交わした。「昨年より良かったと思える試合ができ、本当に楽しめた」。普段は淡々と振り返る女王の顔に笑顔が見えた。
 昨年と同じ芝田(ミキハウス)、大藤(ミキハウスJSC)組との決勝。伊藤は序盤から前で攻めた。回転をかけたレシーブで相手のタイミングを外し、ラリー戦でもミスを恐れず強烈なドライブを仕掛けた。時には後陣に下がって早田をサポートする場面も。「自分たちらしいプレーだった」と自らたたえた。
 早田とのペアは昨年4月の世界選手権以来だが、ダブルスで出場しなかったワールドツアー中も中国選手の試合を参考に、2人でより良い連係を追求してきた。今大会前の練習時間は少なかったが、「不安はなかった」と伊藤。日頃から高め合ってきた同学年ペアには、厚い信頼関係がある。
 2人は19日のシングルス準決勝で対戦する。前回大会の準決勝と同一カード。昨年はストレート勝ちしたが、伊藤は「ダブルスを組んで、お互いに実力が上がっていると感じた」と早田の成長を警戒する。「互いに120%の力を出せるよう頑張りたい」と“みまひな”の再戦を楽しみにする。
 〈2020.1.19 あなたの静岡新聞〉
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