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「赤電」の魅力振り返る

 遠州鉄道がコロナ禍による利用客の減少などを受け、2022年2月から鉄道運賃を値上げします。「赤電」の愛称で親しまれ、その長い歴史から生まれた逸話や名所も地域住民や鉄道ファンの支持を集めています。改めて遠鉄電車の魅力をお伝えします。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・吉田直人〉

初乗り20円値上げへ 高架の耐震補強やバリアフリー化に備え

 遠州鉄道(浜松市)は29日、鉄道線の初乗り運賃を20円値上げし、140円にすると発表した。コロナ禍の利用客減が影響した。現行160~240円区間は10円加算する。同日、国土交通省に申請し、来年2月1日から改定する予定。消費税増税に伴う運賃改定を除くと、39年ぶりの値上げ申請になる。

新浜松駅を出発する遠州鉄道の電車=浜松市中区
新浜松駅を出発する遠州鉄道の電車=浜松市中区
 現行280円以上の区間の運賃は据え置く。定期券は利用距離8キロまでを値上げする。改定率は定期2・7%、定期外4・6%。
 同社によると、2020年度の利用実績は前年度比29%減の729万人。鉄道部門の収入は31・1%減の12億2700万円で、損益は2億3400万円の赤字に転落した。
 21年度の各月も利用客はコロナ前と比べて25~40%減と厳しい状況が続いている。運賃の値上げで、11年度から28年度までに総額30億円を見込む高架区間の耐震補強や、駅のバリアフリー化工事などの投資に備える。年間5千万~6千万円の収入改善を見込むが、改定後22~24年度の年間平均損益は3千万円の赤字見通しという。
 同社の小野田剛久取締役運輸事業本部長は「コロナが収束しても利用客はコロナ前と同水準には戻らないとみている。営業努力を続けたい」と話した。
〈2021.09.30 あなたの静岡新聞〉

「きさらぎ駅」? 都市伝説、根強い人気

​ インターネット上で10年以上にわたり話題になっている「きさらぎ駅」と呼ばれる都市伝説がある。大型掲示板「2ちゃんねる」でハンドルネーム「はすみ」さんが「新浜松駅を出発してから電車の様子がおかしい」「きさらぎ駅に停車し、降りた」などと書き込み、消息を絶ったとされる内容。2004年1月に書き込まれて以来、ネット上では「きさらぎ駅」を話題にする投稿や考察するまとめサイト開設が絶えない。

インターネット上で「はすみ」さんが消息を絶ったとされる電車=浜松市中区の新浜松駅構内
インターネット上で「はすみ」さんが消息を絶ったとされる電車=浜松市中区の新浜松駅構内
 「きさらぎ駅」は、04年1月8日から9日にかけて、普段使っている遠州鉄道の電車に乗っていると、5~8分間隔で停車するはずの電車が20分以上も走り続けた後、実在しない駅「きさらぎ駅」に停車したなどとする「はすみ」さんの書き込みから始まった都市伝説。9日午前3時45分ごろ、「(携帯の)バッテリーがピンチです。これで最後にします」という最後の書き込みがあり、以後は掲示板には現れることはなかった。
  現在もツイッターやユーチューブなどネット上で「(はすみさんの書き込みは)何回読んでも怖いけど、行ってみたい」「きさらぎ駅がグーグルマップに表示された」などの新たな投稿が日々、数十件以上のペースであるほか、「はすみは無事か?真相は」などと題した真相を考察するサイトの開設も相次いでいる。
  オカルト研究家の山口敏太郎さん(千葉県)は、長きにわたり投稿が続いている理由について「実在する電車や地名、発車時刻などのモチーフや設定がよくできているため」との見方を示した上で、「駅という場所にロマンを感じる人も多いのでは」と解説する。
  遠州鉄道の担当者によると、社内でも「きさらぎ駅」を知る人は多く、これまでも利用客などから問い合わせがあったという。同担当者は「沿線にある『さぎの宮駅』が『きさらぎ駅』のモチーフになったのではないか」とも指摘した。
〈2018.01.09 静岡新聞夕刊〉※表記、内容は掲載日時点

旧遠鉄奥山線「銭取駅」 珍しい駅名に脚光再び

 浜松市中区の住吉自治会がこのほど、珍しい駅名として愛好家に人気の旧遠州鉄道奥山線「銭取(ぜにとり)駅」の跡地に、地域の要望を受けて案内表示を設置した。自治会役員は「地域の歴史と伝統を残していきたい」と語る。

銭取駅跡地の案内表示を紹介する畠山嗣道自治会長(右)ら=浜松市中区住吉
銭取駅跡地の案内表示を紹介する畠山嗣道自治会長(右)ら=浜松市中区住吉
 「銭取」の名は、戦国時代の三方ケ原の戦い(1573年)で武田軍に敗れた徳川家康が浜松城へ逃げ帰る際、小豆餅を食い逃げし、追い掛けてきた店の老婆が家康から代金を受け取った場所とのエピソードに由来する。
 自治会関係者によると、銭取駅は浜松城北工業高から西に約300メートルの、現在の高台接骨院(住吉3丁目)の辺りにあった。最近では史跡をめぐる会やウオーキンググループが近隣住民に場所を尋ねる機会も多く、住民から案内の設置を求める声が上がっていた。
 案内表示は、駅舎跡地と遊歩道を挟んだ向かい側に設けた。以前からあった自治会のお知らせ板を活用し、10月中旬に資料や説明書きを掲出した。「この前が銭取駅跡」という文言に加え、市から提供を受けた駅舎の写真や、奥山線についての紹介資料を添えた。
 奥山線は浜松市中心街と北区の旧引佐町を結んだ全長約25キロの路線。大正から昭和にかけて市民の足として活躍し、1964年に廃線となった。現在は線路跡地一部が遊歩道として整備されている。
 畠山嗣道自治会長(75)は、かつて奥山線で幼稚園に通ったという。「駅員や車掌が優しかった思い出がある。こんな路線が地域にあったということを、後世に伝えていきたい」と話す。
〈2020.12.02 あなたの静岡新聞〉※表記、内容は掲載日時点

人気アニメや漫画とコラボも

 天竜浜名湖鉄道(浜松市天竜区)と遠州鉄道(同市中区)は7月1日、上映中のアニメ映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」とコラボレーションした共通1日フリー切符を発売する。

1日に発売される「シン・エヴァンゲリオン劇場版」とのコラボフリー切符
1日に発売される「シン・エヴァンゲリオン劇場版」とのコラボフリー切符
 乗車区間は、遠鉄全線と、天浜線の新所原-天竜二俣間の「西ルート」、西鹿島-掛川間の「東ルート」の2種類。2枚を重ねると画像がつながるデザインになっている。1枚1480円(税込み)。各5千枚限定。
 天浜線の施設が劇中の舞台のモデルとなっており、3月の上映以来多くのファンが現地に詰め掛けている。同映画の上映終了までの「ラストラン」企画に合わせて発売する。
〈2021.06.29 あなたの静岡新聞〉

■「裏世界ピクニック」をPR
 異世界に迷い込んだ女性2人が非日常を体験する漫画「裏世界ピクニック」(スクウェア・エニックス)のコミックス第5巻の刊行とアニメ放送の開始を記念し、浜松市内を走る遠州鉄道で31日(※2020年12月31日)、車両内に同漫画のPR広告を掲示した電車の運行が始まった。
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「裏世界ピクニック」のPR広告を掲示した車内=浜松市中区の新浜松駅
 
   新浜松-西鹿島間を往復する1編成2両の車内広告を、漫画に関連したポスターにした。中づりや扉の上部と横のそれぞれに登場人物が描かれた計3種類を掲示している。
 刊行は12月11日で、放送開始は2021年1月4日から。インターネット上で話題となった遠鉄電車にまつわる都市伝説「きさらぎ駅」が漫画の題材になったことで、遠鉄電車と同漫画はこれまでもコラボを行ってきた。運行は1月13日まで。
〈2021.01.01 あなたの静岡新聞〉
地域再生大賞