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静銀と山梨中銀 協業の狙いは

 静岡銀行と山梨中央銀行が合意した包括業務提携の一環で、甲府市内に静岡銀行グループの証券子会社の店舗が誕生しました。超低金利の長期化やコロナ禍で地銀の経営環境が厳しさを増しています。協業によるメリットや狙いを紹介します。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・寺田将人〉

静銀ティーエム証券、山梨本店を開設 協業による拠点の第1弾

 静岡銀行グループの証券子会社、静銀ティーエム証券は20日、甲府市に山梨本店をオープンした。山梨中央銀行本店2階に店舗を構えて、同行の顧客に金融商品とサービスを提供する。昨年10月に合意した静岡銀と山梨中央銀の包括業務提携「静岡・山梨アライアンス」の一環で、協業による拠点の第1弾となる。

テープカットして静銀ティーエム証券山梨本店の開設を祝う関係者=甲府市
テープカットして静銀ティーエム証券山梨本店の開設を祝う関係者=甲府市
 静岡銀は山梨中央銀が扱っていない証券分野で新たな需要の開拓を図る。山梨中央銀は、静岡銀グループの仲介機能を活用することでサービスの幅が広がり、資産形成や資産運用などのニーズに即応できる利点がある。静銀ティーエム証券と山梨中央銀の計15人が勤務する。
 現地で開かれた式典は、静岡銀の柴田久頭取と山梨中央銀の関光良頭取、静銀ティーエム証券の杉本浩利社長が出席し、テープカットで祝った。
 杉本社長は「提携から6カ月で具体的な形にできた。山梨県民の期待に応えたい」と強調。柴田頭取は「大きな第一歩。取り組みをさらに加速させていく」と述べた。
 関頭取は、公募で募った静銀ティーエム証券での勤務希望者が想定を大幅に上回ったとして「若手を中心に人材が発掘できた。素晴らしいスタートだ」と話した。
 静銀ティーエム証券の店舗は計18店になった。静岡県外では、横浜支店と横浜支店小田原営業所に次いで3店目。
(2021/04/20)

 

地銀協業の試金石になるか 顧客サービス拡充、新ビジネスモデル構築へ

 静岡銀行グループの静銀ティーエム証券の山梨本店が20日、山梨中央銀行本店(甲府市)内にオープンし、両行の包括業務提携「静岡・山梨アライアンス」が目に見える形で動きだした。昨年10月の締結から約半年。厳しさを増す地銀の経営環境を念頭に、両行は新拠点の業務展開を今後の協業の試金石と位置付ける。

山梨中央銀行の関光良頭取と意見を交わす静岡銀行の柴田久頭取(右奥)=甲府市
山梨中央銀行の関光良頭取と意見を交わす静岡銀行の柴田久頭取(右奥)=甲府市
 「ここまでの取り組みに育ってきた。さらに加速していきたい」。オープン式典後に開かれたトップ同士の定例会で、静岡銀の柴田久頭取は連携の必要性で一致した昨年7月からの経過を振り返り、決意を新たにした。
 両行は提携合意後、3階層のプロジェクトチームを設置。部長級では地方創生や市場金融、事務共同化など10の分科会を設置し、今年3月末までに延べ80回を超えた。取引先の課題解決やデジタル分野の人事交流も進む。
 静銀ティーエム証券山梨本店は一連の取り組みの「大きなメルクマール(指標)」(柴田頭取)となる。両行は企業の合併・買収(M&A)情報の共有や高度な金融サービス、協調融資で新たなビジネスモデルの構築と収益基盤の拡大を目指す。証券機能がなかった山梨中央銀は、静銀ティーエム証券の業務開始により資産形成や資産運用などの顧客サービスが拡充できる。
 両県をつなぐ中部横断自動車道の整備は追い風。物流や商流が勢いを増して経済的な結び付きが強まれば金融サービス需要の拡大余地は大きいと見込む。両県は相互の特産品の消費喚起に取り組む「バイ・ふじのくに」を展開し、新たな経済圏の構築を目指している。山梨中央銀の関光良頭取は国道138号バイパスの開通にも触れ「あらゆる面で交流が活発になる」と期待を込めた。
(2021/04/21)

昨年10月に資本提携を発表 5年で100億円の効果見込む

 静岡銀行と山梨中央銀行は28日、包括業務提携で合意したと発表した。提携効果を高めるため相互に出資する資本提携を結ぶ。取引先企業の事業拡大支援、店舗や基幹システムの共同化によるコスト削減などを進め、今後5年間で両行合わせて100億円の提携効果を見込む。超低金利の長期化や新型コロナウイルスの感染拡大で地銀の経営環境が厳しさを増す中、互いの独立経営を維持しながら連携を強める。

記者会見後に握手を交わす静岡銀の柴田久頭取(左)と山梨中央銀の関光良頭取=都内
記者会見後に握手を交わす静岡銀の柴田久頭取(左)と山梨中央銀の関光良頭取=都内

 都内で記者会見した静岡銀の柴田久頭取は「提携を通じて双方の地元経済の成長可能性が広がる」と強調。2021年度に予定される中部横断自動車道の全面開通で経済的な結びつきが強まることに期待感を示した。経営統合に関しては「現時点で検討していない」とした。
  提携の名称は「静岡・山梨アライアンス」。両行は取引先の販路拡大や営業進出の支援などで協業する。静岡銀のグループ会社、静銀ティーエム証券の店舗を山梨中央銀の支店内に設け、金融商品の販売を手掛ける。
  首都圏の店舗網を相互に活用し、営業エリア拡大を図る。基幹システムの共同化によって事務の効率化を目指すほか、営業エリアが重複する店舗の共同化にも取り組む。
  両行は19年7月に連携協定を結び、地方創生に関する協業を進めてきた。今年7月に両行トップが会談し、持続的な成長に向けてより緊密な連携が必要との認識で一致し、包括業務提携に踏み切った。

  ■解説 環富士山、経済活性化狙う
 地方銀行の中で屈指の収益基盤を誇る静岡銀行が28日、山梨中央銀行と包括業務提携で合意、相互に株式を持ち合う資本提携に踏み込む背景には、厳しさを増す地銀の経営環境と新型コロナウイルス禍で支援すべき取引先の業況が悪化していることがある。
  人口減少や超低金利の長期化などで地銀はかつてない苦境に立たされている。静岡銀の柴田久頭取は記者会見で「コロナ禍や低金利環境が一番背中を押した」と語った。
  静岡、山梨両県は産業、経済の結びつきが強く、環富士山の周遊が有力な観光資源。人やモノの流れの活発化が期待される中部横断自動車道の全面開通が迫り、提携への流れを加速させる要因になったとみられる。
  業務提携は、両行が互いの独立経営や顧客基盤を維持しながら進め、収益拡大とコスト削減を目指す。異なる企業同士の合併や経営統合は効果を発揮するのに時間がかかるとされ、スピード感を重視した。
  菅義偉首相の発言で地銀再編の圧力が強まるのは必至。今回のような業務提携が、地銀が生き残るための有力な選択肢として広がる可能性もある。
 (2020/10/29)

柴田久頭取に聞く 「相互出資3~5年後に 金融で広域連携を後押し 」

 静岡銀行の柴田久頭取は29日、静岡新聞社のインタビューに応じ、山梨中央銀行との包括業務提携について「ビジネスチャンスが広がり、地域活性化につながる。静岡、山梨両県が進める広域連携を金融面からサポートしたい」と意欲を示した。相互出資については3~5年後に実施すると明らかにした。主なやりとりは次の通り。

柴田久頭取
柴田久頭取
  ―提携のメリットは。
  「5年で100億円という提携効果は2行でほぼ半々と試算している。われわれが強みとするストラクチャードファイナンス(仕組み金融)や静銀ティーエム証券の商品によって新たな市場を開拓できることが大きい。店舗の共同化もコストをかけずにネットワークを広げることができる。全てのステークホルダー(利害関係者)にメリットがあるというのが基本スタンスだ」
  ―山梨中央銀の強みは。
  「山梨県唯一の地銀で、県内の預金シェアは50%近い。主要取引先にしている企業は57%を占める。これまで培ってきた顧客基盤や店舗網を生かすことを考えると、経営統合ではなく提携という形でやっていくことが地域にとっても取引先にとっても良い」
  ―首都圏市場にどう対応するか。
  「(山梨中央銀が店舗展開している)西東京はわれわれにとって手つかずのマーケット。ポテンシャルは非常に高い。安定した金融サービスを提供していくために首都圏市場がある。地元を置き去りにして、ほかの金融機関と法人の取り合いをやるつもりはない」
  ―株式の持ち合いについては。
  「株主構成の順位が変わるようなことは考えていない。本気で取り組むという決意表明を示すためのもの。金額にはこだわらない。3~5年後ぐらいで関係を築ければと思っている」
  ―地銀再編への考え方は。
  「急先鋒(せんぽう)になって積極的に再編を進めていくつもりはない。今回の提携で成果を出すことが先決だが、課題認識や危機感を共有できれば、地域を問わず個別に業務提携していくことはあるだろう」

  ■しばた・ひさし 1986年入行。経営企画部長、首都圏カンパニー長兼東京営業部長、取締役常務執行役員などを経て2017年から現職。静岡市出身。56歳。
(2020/10/30)
地域再生大賞