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沼津市のスマートシティー計画「クロステックヌマヅ」始動から3年 これまでの取り組みは?

 沼津市と企業が進めるスマートシティー計画「クロステックヌマヅ」が2021年の始動から今年で3年になります。市がIHI、富士通Japan、明電舎の3社と連携して推進し、昨年には新たにリコーが加入。行政効率化などの側面で成果を残しつつあるものの、一方で市民への浸透不足などの課題も残っています。そんな「クロステックヌマヅ」の3年間の流れや、実際の取り組み事例を1ページにまとめてみました。

沼津スマートシティー計画「クロステックヌマヅ」始動から3年

 沼津市と企業が進めるスマートシティー計画「クロステックヌマヅ」が2021年の始動から3年となる。市役所でのスマート窓口導入や、自動運転の実証運行など成果は表れている一方、市民の理解や成果の実感、浸透に課題も残る。

課題などを述べる明電舎の三井田会長(右)=沼津市水道部庁舎
課題などを述べる明電舎の三井田会長(右)=沼津市水道部庁舎

 「途中経過でもいいから示すべきだ」。12日開かれたクロステックヌマヅ協議会の全体会議で、頼重秀一市長は事務方に積極的に詳細を公表するよう指示する場面があった。
 沼津港の観光客動向の分析、スマート農業導入への環境整備、AIを活用したフレイル対策検討など、分野別の5部会(環境・エネルギー、モビリティ、情報の一元化、産業、健康・福祉)の担当者が成果と方針を説明。これに対し、頼重市長はまだ市民に知られていないとし、「選ばれる自治体になる必要がある」と発信力強化を求めた。
 協議会を構成する企業側も課題を挙げ、IHIの土田剛副社長は「部会間が連携し、データ分析と共有が必要」と指摘。明電舎の三井田健会長は障害者や市民の主体的参加を示した。
 市は市民参加型のイベントや計画に対する直接対話の開催を模索するとみられる。
(東部総局・高橋和之)
<2024.04.17 あなたの静岡新聞> 

スマートシティー実現目指し 3社と新プロジェクト開始

※2021年06月25日 静岡新聞朝刊

 沼津市は24日、人工知能(AI)やICTなどを活用したスマートシティーの推進に向け、市内に事業所を構えるIHI、富士通Japan、明電舎の3社と連携した新プロジェクト「X-Tech NUMAZU(クロステックヌマヅ)」を開始したと発表した。

 先端技術をまちづくりに取り入れ、次世代モビリティサービスの推進▽再生可能エネルギーによる環境への負荷の軽減▽教育・子育て環境の充実▽行政効率化▽災害対策の促進―など、多様な行政施策を展開する。
 具体的な推進事業計画を本年度中に策定する。今秋にはシンポジウムを開催し、市民への理解や周知を図る。JR沼津駅付近鉄道高架化事業に伴う中心市街地の再開発に合わせて、スマートシティー化を同時に進めて市民の利便性や生活の質の向上につなげる。
 市は今月、3社と包括連携協定を結んで推進協議会を設立した。スペイン・バルセロナ市でビッグデータを活用したまちづくりなどに携わった東京大先端科学技術研究センターの吉村有司特任准教授(都市・デジタル工学)がエグゼクティブアドバイザーを務める。

デジタル庁も好事例として評価 全国の自治体へ発信

 沼津市が地元企業と進めるスマートシティー計画「X-Tech NUMAZU」(クロステックヌマヅ)が、目に見える成果を出し始めている。取り組みの一つ、行政DX(デジタルトランスフォーメーション)は手続きのオンライン化を加速。市は「市民が実感しやすく、サービス向上につながる」として、情報一元化や事務効率化と合わせて進める。

沼津市の取り組みを全国に紹介したことについてデジタル庁から報告を受ける担当者ら=同市役所
沼津市の取り組みを全国に紹介したことについてデジタル庁から報告を受ける担当者ら=同市役所

 マイナンバーカードを使う「ぴったりサービス」を活用し、236の手続きでオンライン申請が可能となった。申請書に記入せず、住民票の写しや印鑑登録証明書などの発行ができる。各種イベントやインターンシップの申し込みで活用実績が増えているという。
 クロステックヌマヅは五つの部会で議論を進めていて、行政DXは「情報の一元化部会」。市政策企画課は「今後も具体的成果を挙げていく」とする。
 デジタル庁は今月から、好事例として市の成果と取り組みを全国の自治体へ発信し始めた。同市のほかに紹介しているのは、千葉県富里市と栃木県大田原市。沼津市は「便利になったと実感できる市役所になるよう今後も努力する」(ICT推進課)と話す。
(東部総局・高橋和之)
<2023.12.21 あなたの静岡新聞>

着々と進む取り組み その具体的事例をまとめます

観光客 いつ、どこから? AIカメラでナンバー確認  沼津市は1日、人気観光地の沼津港を訪れる車のナンバーを読み取り、観光客の居住地域や滞在時間、混雑状況を調査する社会実験を開始した。同市に事業所を置くIHI(本社・東京)がデータ分析に協力し、休日を中心に深刻な同港周辺の渋滞解消の方策や、新たな交通体系の構築を検討する材料とする。

 実験は市と民間企業が情報通信技術(ICT)を活用する取り組み「X-Tech NUMAZU(クロステックヌマヅ)」の一環で、来年1月末まで実施する。
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車番認証カメラを沼津港入り口の電柱に設置する作業員=6月下旬、沼津市千本港町

 沼津港へ車で向かう人の多くが通過する「港八十三番地」前の電柱に、進入と退出の両方をとらえる車番認証カメラ2台を設置した。カメラは人工知能(AI)を使い、通過する車のナンバーの地名と番号を読み取る。IHIが提供するシステムで、沼津港に入った時刻と出た時刻を自動で解析し、滞在時間や来訪の時間帯、曜日別、地域別の来場時刻などを解析する。
 市によると、これまで沼津港を訪れる観光客の曜日別や時間別の正確なデータはなかったという。市まちづくり政策課の遠藤重由交通政策室長は「混雑する時間帯や、観光客の在住地域を正確に把握することで、沼津港への最適な交通アクセスが何かを検証したい」と期待する。
(東部総局・尾藤旭)
<2022.07.02 あなたの静岡新聞>
沼津港のバス停集約 デジタル表示板も設置で利便性向上  沼津市は人気観光地・沼津港の利便性向上を進めている。同港の商業施設内にバスの発車時刻を分かりやすく表示するデジタル表示板を設置したほか、事業者ごとに2カ所に分かれていたバス停も9日、集約した。沼津港は週末を中心に車による県外客でごった返すため、市はバス利用を促すとともに、利用者に分かりやすい交通環境づくりに取り組む。
 デジタル表示板の設置は、市のスマートシティープロジェクト「クロステックヌマヅ」の一環。同港の商業施設「沼津みなと新鮮館」入り口に設けられた縦約110センチ、横約60センチの表示板には、伊豆箱根バスと東海バスの2社のバス発車時刻、系統、行き先や経由地が一覧で表示される。外国人観光客にも対応し、15秒ごとに日本語と英語が交互に表記される。建物の外に向けて置かれ、閉館時も館外から見られるようにした。
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沼津港の沼津みなと新鮮館に設置されたバス案内のデジタル表示板=沼津市千本港町

   沼津港北側の県道沼津港線沿いにある沼津駅行きのバス停はこれまで、2社のバス停が約25メートル離れた場所にあり、時刻を確認するために行き来する必要があった。集約は東海バスの停留所を東側の伊豆箱根バスの場所に移設。時刻表も両社まとめて表示している。
 バスを待っていた沼津市戸田の落合ひろ子さん(76)は「一つになって時刻表も見やすい。観光客にも分かりやすいと思う」と歓迎した。
(東部総局・尾藤旭)
<2022.09.10 あなたの静岡新聞>
転居届も“書かず”に申請 「スマート窓口」導入へ  沼津市は2月5日から、住民異動届の提出などで、事前申請やタブレット端末を利用して書類への記入を簡素化する「スマート窓口(書かない窓口)」の運用を始める。これまでより6分程度、窓口での対応時間が短縮される見込み。
 ホームページで事前に必要事項を入力し、発行されるQRコードを窓口で示す仕組み。窓口では入力事項をタブレット端末で確認、署名し、届け出書類を作成する。窓口でもタブレット端末を活用し、事前申請と同様に手書きでの記入を簡略化する。
 転居に伴って必要な印鑑登録や住民票の写しの発行など、約30種類の申請書も入力した事項を転記して発行でき、書類を手書きする面倒が軽減される。必要な手続きと受付窓口の案内も発行する。
 市が地元企業と連携する沼津版スマートシティー計画「クロステックヌマヅ」の一環。当面は市役所のみで導入する。
(東部総局・尾藤旭)
<2024.01.27 あなたの静岡新聞>
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