知っとこ 旬な話題を深堀り、分かりやすく。静岡の今がよく見えてきます

「はまホール」解体へ 休館から9年経過…どんな経緯が?

 浜松市中央区の一等地にたたずむ浜松市教育文化会館、愛称「はまホール」は、2015年の休館から約9年を経て、解体の方針が固められました。音楽や舞台、交流の場として市民に長年親しまれたホールでしたが、跡地の活用方法は決まっていません。浜松城公園東側に代替施設の建設が計画されましたが、大河ドラマ館の建設など長年の環境変化も相まって、再検討の余地を残しています。これまでのやや複雑な経緯をポイントを押さえて振り返ります。

ホール解体 2024年度中に着手

 浜松市は2024年度、老朽化などに伴って休館、廃止して9年近くが経過した同市中央区の旧市教育文化会館「はまホール」の解体に着手する方針を固めた。跡地利用は未定だが、中心市街地周辺の一等地ということもあり、解体後の活用策が注視されている。市は24年度当初予算案に調査費などとして約2300万円を計上し、債務負担行為として6億円程度を設定する方針。31日までの関係者への取材で分かった。

浜松市が2024年度に解体事業に着手する方針を固めた旧市教育文化会館「はまホール」=1月下旬、同市中央区
浜松市が2024年度に解体事業に着手する方針を固めた旧市教育文化会館「はまホール」=1月下旬、同市中央区
 関係者によると、解体にかかわる事業は24~26年度を想定している。24年度は周辺調査やフェンスの撤去などを進め、25年度から本格化する見通し。江戸時代に構築されたとされる敷地内の「石垣」を保存した上で、施設建物の解体作業を進める。
 敷地は開発工事を行う際に自治体との調整が必要な埋蔵文化財包蔵地の「浜松城下町遺跡」の範囲内に位置することから、建物解体後には埋蔵文化財の有無を確認する発掘調査や地質調査なども行う計画という。
 はまホールは鉄骨鉄筋コンクリート造り5階建て(地下1階)、敷地面積約6800平方メートル。JR浜松駅からは北西に約800メートルに立地する。1961年の市制50周年を記念して建設され、長年にわたって市民の発表会やコンクールの場として活用されてきた。2015年3月に老朽化と耐震性の問題から休館し、21年には後継施設として「サーラ音楽ホール」(浜名区)がオープンした。
 はまホール跡地利用の具体策は未定で、市はこれまで、周辺のまちづくりや解体手法などを検討してきた。解体作業の着手が決まったことで今後、跡地利用の議論が進むとみられる。
〈2024.02.01 あなたの静岡新聞〉

閉館後の“機能代替案”に異論噴出

※2014年02月06日 静岡新聞夕刊(内容は当時のまま)

 浜松市が老朽化を理由に2015年3月で閉鎖する方針を打ち出している市教育文化会館(同市中区利町、はまホール)をめぐり、市が練習室の機能を別施設に振り分ける代替案をまとめたのに対し、市議会や音楽団体の一部から反発の声が上がっている。「代替案の説明が不十分」「ホール機能はどうするのか」との批判がある上、同館の存続を求める意見も根強い。市は関連の予算案を19日開会の市議会2月定例会に提出する方向だが、反発が強まれば、論戦の焦点になる可能性もある。
 はまホールは1961年に開館し、現在も園児から社会人まで年間約55万人が利用している文化施設。アクセスが良く、教育関係団体への優遇もあるため、年間利用率はホール70%、練習室は90%以上と盛んに利用されている。
 市は代替案として閉館後、中区のクリエート浜松や市勤労会館、西区の雄踏文化センターなど既存5施設の空きスペースを防音仕様に改修して練習室にする案を固めた。12日発表する13年度2月補正予算案と14年度当初予算案に経費を計上する方向で調整している。
 市は2月初旬までにこの案を市議会に説明したが、自民党浜松などから「代替先を決めた経緯が十分説明されていない」との指摘や「この案で市民のニーズを十分補えるか不安だ」と異論が噴出した。
 市は今月5日にあらためて各会派に対して説明。閉館後の選択肢として代替案のほかに改修、建て替え、移転新築があるとして「市民ニーズを調査、検討する」と理解を求めたが、反発は収まっていない。一方で、吹奏楽や演劇などの利用団体は、同館の存続を求める要望書をまとめ、市と市議会に提出する準備を進めている。
 市は11年度にまとめた浜松城公園再整備計画「セントラルパーク構想案」に代替施設建設を盛り込んだが、議会や市民の慎重意見を踏まえて12年11月に取り下げ、対応策が宙に浮いた状態だった。

「後継施設」は…? 浜松城公園東側に整備目指す

※2017年06月19日 静岡新聞夕刊より(内容は当時のまま)

浜松市が市民文化創造拠点施設整備の候補地とした浜松城公園東側エリア。中央が旧元城小跡地。左に市役所が隣接する=同市中区(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
浜松市が市民文化創造拠点施設整備の候補地とした浜松城公園東側エリア。中央が旧元城小跡地。左に市役所が隣接する=同市中区(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
 浜松市は19日までに、老朽化などを理由に休館中の市教育文化会館(はまホール、同市中区)の後継施設として新設する「市民文化創造拠点施設」について、浜松城公園東側に位置する旧元城小跡地周辺への整備を目指す方針を固めた。候補エリアには市役所の敷地も含まれる。市は将来的な庁舎移転も視野に入れ、同施設の整備構想を核にした都心部の再生につなげる考え。複数の関係者への取材で分かった。
 同日午後の市創造都市推進会議で示す基本構想案に盛り込んだ。旧元城小跡地は埋蔵文化財の発掘調査が予定され、構想は10年近い長期的な取り組みになる。
 市民文化創造拠点施設整備の候補地は、2014年に策定した浜松城公園長期整備構想で「にぎわいと交流ゾーン」に定めたエリア。同公園には浜松城や市美術館など文化施設と歴史的観光資源があるため、市は「互いの魅力を高める相乗効果と都心部への波及効果が期待できる」として選定した。
 拠点施設は有識者の提言を踏まえ、新たな機能を取り入れた付加価値の高い複合施設を想定する。基本構想案ではホールに加え、創作活動工房やスタジオ、飲食、観光案内などの機能を例示した。検討過程に市民参加の仕組みを取り入れる。
 市庁舎移転についてはこれまで「長期的な視野に立って調査研究する」(市幹部)としていたが、具体的な動きはなかった。市民文化創造拠点施設の構想が進めば、議論が加速する可能性もある。
<メモ>  浜松市の市民文化創造拠点施設構想は、年間約55万人が利用していた「はまホール」の閉鎖問題がきっかけで浮上した。市は2013年11月、はまホールを15年3月で閉鎖する方針を示したが、市民から存続や代替施設の建設を求める6万人以上の署名が寄せられた。市は休館扱いに変更し、有識者による検証検討会が存廃を協議。16年3月に「別の場所に新設」と結論付け、新たな機能を取り入れた付加価値の高い施設整備を求めた。市は11年度にまとめた浜松城公園再整備計画「セントラルパーク構想案」に代替施設建設を盛り込んでいたが、議会や市民の意見を踏まえて12年11月に取り下げた経緯もある。
photo01
文化創造拠点施設 整備候補エリア

“一等地”の将来は?「市民の声聞いて」

※2019年10月12日 静岡新聞朝刊(内容は当時のまま)
 老朽化などで2015年度から休館中の浜松市教育文化会館「はまホール」(中区)の廃止について、11日に開かれた同市の中、東、南区の各区協議会はいずれも市の諮問に対し「適切と認める」と答申した。中、東区の協議会は付帯意見として「跡地利用について市民の意見を聞くこと」を求めた。
 市は市議会11月定例会に同ホールの廃止条例案を提出する方針。ホール解体後の跡地利用は未定としている。
 東区協議会は跡地利用について市民の意見を聞くことに加え、「中心市街地のにぎわいにつながるよう活用すること」や、北区の市民音楽ホール新設に当たって「公共交通機関の充実や周辺の道路整備を行い、市民が利用しやすい施設にすること」も盛り込んだ。
 南区協議会と10日に開かれた浜北区協議会は付帯意見なしで「適切」と答申した。このほかの協議会は西区が16日、北区と天竜区が17日に開かれる。
地域再生大賞