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【祝アカデミー賞ノミネート】静岡で発見!ゴジラの足あと!!

 「ゴジラ−1.0(マイナスワン)」が米アカデミー賞の視覚効果賞にノミネートされました。一昔前は国産CGは海外に比べてどうも…などと言われることも多かったように思いますが、そんな声をなぎ払うような見事な快挙です。本作では浜名湖など静岡県内でもロケが敢行されました。ゴジラと静岡の関係を紐解いてみると、誕生の背景にビキニ水爆実験が見え隠れしたり、話題作に関わったあの人が過去にロケ撮影に訪れていたり、浅からぬ「因縁」があるようです。静岡に残るゴジラの足あとを探しました。
⇒ノミネート発表後、初めて公の場に! 山崎監督が語る撮影秘話はこちら

2001年公開作で焼津に上陸 監督の金子修介氏が現地会見

※2001年5月24日 静岡新聞朝刊より

「ゴジラ・モスラ・キングギドラー大怪獣総攻撃」の制作コンセプトなどについて会見する金子監督=2001年05月、焼津・小川港
「ゴジラ・モスラ・キングギドラー大怪獣総攻撃」の制作コンセプトなどについて会見する金子監督=2001年05月、焼津・小川港
 昭和二十九年、太平洋ビキニ環礁での水爆実験で変異し、よみがえったゴジラが、この実験で被ばくした「第五福竜丸」の母港、焼津に半世紀を隔て再上陸―。十二月封切りの東宝映画「ゴジラ・モスラ・キングギドラー大怪獣総攻撃」の県内ロケが二十二日から焼津市などで行われている。二十三日のロケは雨で順延になったが、金子修介監督が現地会見し、作品のコンセプトなどについて話した。  
 新作のゴジラは二十九年(一九五四年)の最初の来襲から五十年を経て、二〇〇四年に再び日本を襲った―という設定。焼津に上陸し首都圏に向かうゴジラと、日本各地に眠っていた「ヤマト聖獣」と呼ばれる古代から“くに”を守護してきた三頭の怪獣が激突するストーリー展開となる。防衛軍の准将として宇崎竜童さんが出演する。十月末完成の予定。
 県内ロケはゴジラ上陸のシーン。防波堤の釣り人が海から突如出現したゴジラに驚く場面で、二十二日は焼津・小川港周辺などで「逃げまどう市民の姿」を撮影。二十三日は「釣り人」の撮影予定だったが雨で中止となり、来月以降に延期された。
 小川港で会見した金子監督は「四大怪獣の激突が見せ場だが、第五福竜丸や古代日本の歴史との絡みを連想させるものとし、大人の鑑賞にも耐えられる映画にしたい」と話した。

ドリプラでエキストラ撮影 県民2000人が応募!

※2001年6月4日 静岡新聞朝刊より

エキストラを動員して行われた映画ロケ=2001年06月、清水市入船町のエスパルスドリームプラザ
エキストラを動員して行われた映画ロケ=2001年06月、清水市入船町のエスパルスドリームプラザ
 年末から東宝系で公開される映画「ゴジラ・モスラ・キングギドラ―大怪獣総攻撃」のロケが三日、清水市入船町のエスパルスドリームプラザで行われた。二千人の応募者の中から選ばれたエキストラ二百人が参加し、ゴジラの出現で逃げまどう買い物客に扮(ふん)した。  
撮影は「みなと市場」の店内や駐車場などで行われた。金子修介監督らスタッフは入念なリハーサルを繰り返し、エキストラに「ゴジラが屋上越しに見えると思って、逃げながら振り返ってください」などと演技指導を加えていた。 
同映画はシリーズ二十五作目。ゴジラは焼津港から上陸し、清水、富士などを通って、決戦地の横浜へ向かうというストーリーになっている。

聖地・熱海で「見たい」 市民発の怪獣映画祭

※2023年9月22日 あなたの静岡新聞より

第5回熱海怪獣映画祭のPRポスター=熱海市内
第5回熱海怪獣映画祭のPRポスター=熱海市内
 「熱海で『キングコング対ゴジラ』を見たい」。2018年から毎秋開催する「熱海怪獣映画祭」の発端は、JR熱海駅周辺のバーで交わされた常連客の会話だった。酒場で膨らんだ町の活性化策は、同じ年に「映画祭」として結実。通算5回の歴史を刻んだ。今年も10月の開催を控える。
 1962年に作られた同作では、クライマックスで熱海市の海沿いに位置する観光施設「熱海城」が派手に破壊される。一般社団法人「熱海怪獣映画祭」の水野希世代表(同市)は「ほかにも『大巨獣ガッパ』やウルトラシリーズなど、多くの作品の舞台になっている。熱海と怪獣映画の縁の深さが映画祭開催のきっかけ」と話す。
 バーでアイデアを出した市民らが実行委員会を結成し、かつて映画館があった国際観光専門学校熱海校を会場として確保。脚本家伊藤和典さん(同市)が手がけた「ガメラ2 レギオン襲来」の上映を軸に18年10月、映画祭の初開催にこぎ着けた。同作で特技監督を務めた樋口真嗣さん、1980年代にアルバム「ゴジラ伝説」を発表した音楽家井上誠さん(同市出身)、伊藤さんのトークショーも行った。資金集めのクラウドファンディングでは全国の156人から120万円超が集まり、映画祭に約300人が詰めかけた。
 以後の開催では、毎年新しい試みを導入している。井上さんを中心にした特撮映画の音楽ライブ、若手クリエイターが集う「全国自主怪獣映画選手権」、怪獣映画グッズを披露するコーナー―。昨年は「大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス」の応援上映を行った。来場客に簡易ライトを配布し、アイドルのコンサートさながらの盛り上がりを現出させた。市内飲食店では怪獣コラボメニューが広がる。市民との接点も拡大中だ。
 水野代表は運営メンバー6人と、よりよい映画祭づくりに知恵を絞る。「『ゴジラ』はすでに世界共通語。映画祭もグローバルな展開を図りたい。怪獣愛好家は世界中にいるんだから」

「シン・ゴジラ」樋口真嗣監督・特技監督 静岡と深いかかわり

※2010年3月5日 静岡新聞朝刊より

樋口真嗣氏
樋口真嗣氏
 28歳で映画「ガメラ大怪獣空中決戦」(1995年)の特撮監督となり、日本アカデミー賞特別賞に輝く。2005年に役所広司や妻夫木聡が主演した「ローレライ」、翌年は「日本沈没」と大作の監督を務める。日本沈没の撮影では沼津市の海岸、08年公開の長沢まさみ主演「隠し砦の三悪人」では小山町でロケをするなど静岡県とかかわりが深い。
 ―県東部でロケを行うことが多いようですが。
 「まず、都心から車で2時間という立地条件。そして、伊豆の海や富士山すそ野の林野などの恵まれた自然の舞台は何よりの魅力です。行政を巻き込んだ民間主体のロケ誘致活動や地元のボランティア・エキストラなど、ロケ地の人たちの熱意を感じます」
 
 ―地方ロケで苦労することは何ですか。
 「地方でロケをするのは、豊かな自然やのどかな雰囲気をそのまま使いたいから。当然、普段なら何もない場所にスタッフやエキストラが大勢来る訳ですから、着替える場所やトイレなどが問題になってきます。決してスクリーンに映らない部分にまで配慮してくれた地元の方々の協力体制は大変ありがたいです」

 ―最近、映画制作を通して感じることは。
 「撮影現場も不景気の一言です。制作費削減で遠方の大規模ロケは非常に難しい。制作費が底をつきかけた『ローレライ』の撮影では、長崎県でのロケを役者2人と私を含めたスタッフ4人の計6人で決行しました。出口の見えない不景気の中、東京と静岡の距離は今まで以上にありがたい。実在する場所でのロケは、リアリティーの追求もありますが、セットを造るより自然を生かす方が、はるかに安上がりという理由もあります」

 ―夢を与える映画の現場も厳しいですね。
 「確かにコスト面では厳しいですが、制作サイドの熱意で乗り切れることもあります。海岸や公道など公共の場所の撮影では、所管する役所の許可が必要で、金銭では解決できない問題も多々あります。でも、結局は人と人の交渉。こちらの熱意を分かってくれた役所の方の口添えが組織のトップに届き、最初は撮影不可だったのが、最後はオールOKになったこともあります。やはり最後は人の熱意です」

 ―熱意や夢の視点から若者にメッセージを。
 「自分が撮影現場の下っ端だったころの格好は、みんなボロボロの服でとにかく汚かった。撮影現場の若いスタッフをはじめ、今の若者は、見た目はきれいだが何か冷めている気がする。本当に夢中になれるものがあれば、外見とか所属にこだわる必要はない。自分の限界なんて簡単に見極められるものじゃない。景気が良かろうが悪かろうが、いつの時代も夢中になれるものを持っている者が強いはず」
地域再生大賞