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石川県で最大震度7 避難生活の注意点/私たちができる備えは

 石川県志賀町で1日午後4時10分ごろ、震度7の地震が発生し、全国の広い範囲で揺れを観測しました。気象庁は石川県能登地方に一時、大津波警報を発表。輪島港では1.2メートル以上の津波が確認されています。被災された全ての方々に、心よりお見舞い申し上げます。
 2日現在で明らかになっている情報とともに、知っておきたい被災時の対応や震災への備えなどについてまとめます。
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「令和6年能登半島地震」 建物倒壊・大規模火災に津波、けが多数

 1日午後4時10分ごろ、石川県志賀町で震度7の地震があり、北海道から九州にかけ広い範囲で揺れを観測した。建物の倒壊や火災が相次ぎ、石川県で48人が死亡したほか、各地で多数のけが人が出た。気象庁は石川県能登地方に一時、大津波警報を発表、輪島港では1・2メートル以上の津波を観測。珠洲市などの沿岸部で住宅被害が出た。

大規模火災で焼け落ちた石川県輪島市の「輪島朝市」付近=2日午後0時11分
大規模火災で焼け落ちた石川県輪島市の「輪島朝市」付近=2日午後0時11分
 石川県によると、死亡したのは珠洲市20人、輪島市19人、七尾市5人、穴水町2人、羽咋市1人、志賀町1人。住宅やビルの下敷きなどが理由とみられる。
 輪島市の観光名所「輪島朝市」周辺では大規模な火災があり、約200棟が燃えた。同市でビル倒壊もあった。他の自治体でも建物が崩壊し、取り残された人がいるとの通報が相次いだ。新潟、富山、福井、岐阜などの各県でけが人が出た。
 津波は地震発生直後から日本海側の広い範囲で観測された。気象庁は2日午前、津波注意報を全て解除。共同通信が航空機で上空から確認したところ、珠洲市や能登町の沿岸に多数の家屋が流されたとみられる形跡があった。石川県の馳浩知事は、珠洲市の飯田港周辺が海岸から約100メートルにわたり浸水し、住宅に被害が出たと説明した。
 気象庁は「令和6年能登半島地震」と命名。地震は逆断層型で、規模はマグニチュード(M)7・6と推定される。国内で震度7は2018年の北海道地震以来。大津波警報が発表されたのは11年の東日本大震災以来となる。
 政府は2日、非常災害対策本部(本部長・岸田文雄首相)の会合を官邸で開いた。防衛省によると、自衛隊員約千人が被災地で活動を始めた。林芳正官房長官は、午前11時時点で石川、新潟両県などの避難者は計5万7360人と明らかにした。
 震度7の後も断続的に地震が発生。気象庁は2日の記者会見で「1週間程度、最大震度7程度の地震に注意してほしい」と呼びかけた。石川県では2日夜から大雨が予想され、土砂災害に警戒が必要となる。
静岡県内の被害確認なし
 静岡県危機管理部は1日午後4時10分から事前配備(情報収集)体制を取ったが、県内で被害は確認されず、2日午前11時半に同体制を終了した。
 気象庁によると、県内では袋井市で最大震度4を観測した。そのほかの各地の震度は次の通り。
 震度3=浜松市、磐田市、掛川市、湖西市、菊川市、沼津市、富士宮市、富士市、御殿場市、焼津市、牧之原市
 震度2=御前崎市、森町、三島市、裾野市、清水町、長泉町、小山町、静岡市、島田市、藤枝市、吉田町、川根本町、伊豆の国市、河津町、南伊豆町、松崎町、西伊豆町、函南町
 震度1=熱海市、伊東市、下田市、伊豆市、東伊豆町
 〈2024.1.2 あなたの静岡新聞〉

石川・能登半島 次第に地震規模拡大 "群発地震"に地下水関係か

 1日に最大震度7を観測した石川・能登半島では近年、群発地震が続き、次第に規模が拡大していた。群発地震には地下水(流体)が関係していると考えられており、専門家は今回の地震も一連の活動で引き起こされた可能性が高いと指摘する。

石川県で発生した地震について記者会見で説明する気象庁の担当者=1日午後6時17分、気象庁
石川県で発生した地震について記者会見で説明する気象庁の担当者=1日午後6時17分、気象庁
 気象庁などによると、能登半島では2020年12月ごろから地震活動が活発化。21年9月にマグニチュード(M)5・1、震度5弱を観測する地震が発生した。22年6月に震度6弱、23年5月には震度6強をそれぞれ観測。同じエリアで地震が続いていた。名古屋大の山岡耕春教授(地震学)は「今回の地震との関係は非常に強い」と話す。
 一連の地震の一因に挙げられていたのが、地下水などの流体の関与だ。流体が上昇した影響で断層が滑るなどして地震につながった可能性があり、政府の地震調査委員会も指摘していた。
 一方、能登半島沖には活断層があることも知られている。東北大の遠田晋次教授(地震地質学)は「(流体の関与だけでなく)近くの活断層にもっと注意した方が良かったかもしれない」と話した。
 また北海道沖から新潟沖にかけての「日本海東縁部」には地震が活発な領域があり、19年には山形、新潟両県で大地震が起きている。全体に警戒が必要なエリアだ。
 〈2024.1.1 あなたの静岡新聞〉

避難生活の注意点は? 感染症や寒さ、エコノミー症候群も

 能登半島地震では避難生活の長期化が予想される。冬の厳しい寒さで低体温症への備えが求められるほか、換気が不十分となりやすく、インフルエンザなどの広がりを懸念する声も上がる。車中避難ではエコノミークラス症候群への注意も必要だ。国や専門家は、感染症や寒さ、健康への対策を呼びかけている。

※2016.5.1 静岡新聞掲載
※2016.5.1 静岡新聞掲載
 厚生労働省は2日までに、自治体向けに感染症対策の事務連絡を出した。避難所では換気や手洗い、せきエチケットなどの徹底やトイレをきれいに使うよう求めている。
 沖縄県立中部病院感染症内科の高山義浩医師によると、避難所では流行中のインフルエンザや、増加傾向にある新型コロナウイルス感染症、トイレや食事などを介したノロウイルス感染に特に注意が必要という。
 避難所内の感染拡大防止には、世帯ごとにブースを分け、間隔を2メートル以上空けることが望ましいと説明。寒冷で窓を開けるのが難しい場合には少なくとも換気扇を回し続けるよう提案する。
 公共の場では可能であればマスクを着用。発熱や喉の痛みなどの症状があれば管理者に相談する。避難所での療養は別室を確保するか、風下で休んでもらうようにする。少なくとも週2回は入浴するよう勧めている。
 低体温症にも要注意だ。厚労省などによると、寒さなどで体の中心部の温度が35度以下になる状態で、重症化すると意識障害や脈拍の異常などの症状が出て死に至る恐れがある。避難先ではなるべく厚着をして体温を奪われないようにする。帽子やマフラーを着けると保温効果が高まる。ふらついたり会話が成り立たなくなったりしたら、すぐに医療機関を受診する必要がある。
 自家用車内で過ごす場合は、エコノミークラス症候群への注意が必要だ。過去の地震では車中避難で発症し死亡に至った例もある。厚労省はウェブサイトで、軽い体操やストレッチをする、水分を十分に取るといった注意点を挙げている。(共同)

始めよう家具の固定 転倒すれば「凶器」にも

 ※2023年7月23日 あなたの静岡新聞【いのち守る 防災しずおか】から

 いつ起きるか分からない南海トラフ地震に市民はどう備えるべきか。自治会・自主防災会会長の東海駿河[とうかいするが]さん(71)と妻の伊豆美[いずみ]さん(66)、長男の遠州[えんしゅう]さん(36)親子、長女の富士子[ふじこ]さん(33)の3世代をモデルに、自助、共助の取り組みを考える。
 ある日曜、東海駿河さんの自宅に長男遠州さんの一家が遊びに来た。リビングで遊んでいた孫の小学1年竜洋君(7)は、あることに気付いた。
 「おじいちゃんの家のテレビは、どうして壁とつながってるの」。壁に取り付けた金具とテレビの背面との間にワイヤが張られていた。「地震の時に落ちないようにしてるんだよ」と東海さん。「うちのテレビには、こういうのないよ」と不思議がる竜洋君に、遠州さんは「以前はベルトで固定してたけど、テレビを買い替えてから何も付けてなかったなぁ。転勤で引っ越しも多いし」と頭をかいた。
 「お義父さんのお宅は冷蔵庫や寝室のたんすも固定されてますもんね。うちも対策しなきゃ」と遠州さんの妻三保さん(34)は反省した。固定していないテレビや電子レンジは横に飛ぶと聞いたことがある。特に竜洋君と妹のかのちゃん(5)には危険だ。
 東海さんに勧められて遠州さんは県地震防災センター(静岡市葵区)の見学を予約し、後日訪れた。案内役の「インストラクター」の女性は、震度6強の揺れで固定していない食器棚が倒れる動画を見せてくれた。県によると、1995年の阪神大震災では死亡者の10%が家具転倒に伴う圧死や窒息死で、負傷者の46%が家具転倒によるものだった。「地震の時、固定していない家具は凶器にもなる。キッチンの冷蔵庫や玄関のげた箱が倒れると先に進めず、避難の妨げにもなるかもしれません」とインストラクターの女性。遠州さん一家は、家具の固定器具にはL字形金具や突っ張り棒、ベルトなど多様な種類がありホームセンターなどで購入できることを知った。
 来館者に配られる県作成の地震防災ガイドブックには、自宅の平面図を描いて家具倒壊の危険箇所や避難経路を家族でチェックする「家庭内DIG(災害図上訓練)」のワークシートも付いていた。「ねぇ、子ども部屋は大丈夫だよね」。かのちゃんの一言が胸に刺さり、遠州さんは「よし、わが家も家具固定を始めよう」と誓った。
手間や費用も 28%「していない」
 県が2022年度に実施した南海トラフ地震の県民防災意識調査によると、家具固定を「大部分している」「一部している」と答えたのは計72.0%、「していない」は28.0%だった。固定していない理由(複数回答可)は「やろうと思っているが先延ばしにしている」(33.9%)、「手間がかかる」(30.3%)、「費用がかかる」(21.1%)などが多い。
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大石製作所防災事業部の大石康人さん

 賃貸マンションに住む遠州さんは「大家さんの許可がなければ壁にネジなどは取り付けられないかも」と悩み、転倒防止器具の製造販売や設置を行う大石製作所(吉田町)に相談してみた。同社防災事業部の大石康人さん(43)からは「家具と天井の間に突っ張り棒を設置し、家具の下にストッパーなどを取り付ければL字形金具と同等の効果があります」と助言を受けた。
 高齢者や障害者に対しては、家具固定を建築組合やシルバー人材センターなどに委託し、利用者に補助金を出している市町もある。大石さんは「地元市町に確認してみては」と勧めた。
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地域再生大賞