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進む「カーシェア」日常使いはもちろん 観光、災害時にも

 気候も穏やかになり、秋の行楽シーズンには車でのおでかけにぴったり。しかし問題に上がるのは高騰するガソリン代。そこでチェックしておきたいのは「カーシェアリングサービス」。レンタカーは燃料満タンにして返す必要がありますが、カーシェアは燃料代込みの料金設定になっていて、専用のカードで給油できます。短時間・低料金から広く活用できて、日常使いはもちろん観光、災害時にも…多岐にわたり活用できるカーシェアについてまとめました。

ガソリン高騰続く 静岡県内平均180円台

 レギュラーガソリン1リットル当たりの静岡県内平均小売価格が180円台の高値水準となり、8月10日の県内はマイカーでの帰省や遠出など人の流れが活発化する盆休みを前に、影響を心配する声が広がった。高止まりは当面続くとみられ、新型コロナウイルス禍から回復基調の社会経済活動に“冷や水”を浴びせかねない。燃料費が利益に直結する物流、タクシー事業者も原油価格の動向に気をもんでいる。

価格高騰が続くガソリンを給油する運転者=10日午後、静岡市清水区
価格高騰が続くガソリンを給油する運転者=10日午後、静岡市清水区
 「高いですね。一昔前では考えられないぐらい」。静岡市清水区のセルフ式のガソリンスタンド「フレンドリー清水インターSS」を訪れた会社員の高橋佳人さん(45)が、給油のレシートを見てつぶやいた。割引サービス後のレギュラー価格は1リットル当たり178円。混雑する盆時期を避けて遠出する予定で、「ガソリンはどんどん高くなる。仕方ないと思って仕事を頑張るしかない」と語った。
 同店の山本敦弘所長によると、ガソリン価格は「毎週2、3円ほど上がっている。下がる気配は全くない」と話す。近くで起きた橋桁事故の交通規制が解除され、客数も上向き始めた直後の180円突破。書き入れ時の盆休みを前に「このタイミングは厳しい」と表情を曇らせた。
 ガソリンと同様に軽油価格も高騰が続く。遠州トラック(袋井市)は軽油1リットル当たり1円上がると、年間の営業利益が1千万円以上のマイナス要因になる。同社担当者は「想定以上のスピードで軽油価格が上がっている」とし、今後は「適正な運賃をいただかないと事業の継続は難しくなる」と述べた。
 静鉄タクシー(静岡市)は車両の8割をLPガス燃料に切り替えたが、「ガソリン価格がここまで上がると厳しい」と担当者。コストカットや運賃改定を見据えた業界内での調整を視野に対応を模索する。
 静岡経済研究所企画部の望月毅部長は円安やウクライナ危機などの国際情勢も踏まえ、「現状では値下がりする材料が見当たらず、9月いっぱいまでは確実にガソリン価格は下がらない」とみる。10月以降に政府の補助金が打ち切られるとさらなる高騰も予想され、「可処分所得の減少で必需品以外の購買意欲が低下し、幅広い業種に影響が広がる可能性もある」と景気を大きく左右する個人消費の減退を懸念する。
(経済部・金野真仁、垣内健吾)
〈2023.8.11 あなたの静岡新聞〉

「車の新たな道」定着今こそ

 車の新たな活用法とカーライフを提案しようと、カーシェアリングを事業化する動きが各地で出ている。車を保有せずに必要な時だけ使うカーシェアは、持続可能な開発目標(SDGs)とともに関心が高まっているものの、世帯平均で1台以上と車所有が定着する本県は普及に壁があるとされる。事業者は利便性をアピールし、新たな生活様式としてカーシェアを根付かせようと模索する。

今年から店頭で始めたカーシェア事業。スマホでロックを解除して車を利用できる=1月下旬、静岡市葵区の静岡ダイハツ東静岡店
今年から店頭で始めたカーシェア事業。スマホでロックを解除して車を利用できる=1月下旬、静岡市葵区の静岡ダイハツ東静岡店

 「当初は半信半疑だったが、利用した人が喜んでくれて考えが変わってきた」。1月に静岡市内でカーシェア事業を始めた静岡ダイハツ販売(浜松市東区)の担当者は手応えを示す。車両はスマホで予約して利用する。対面の受け付けがない上、レンタカーに比べ短時間・低料金から利用ができる。学生や単身者を中心に需要が増えているという。
 同社MaaS事業室の永野義勝室長(56)は「人口が減り、車の販売台数も減る中、車の新たな可能性を探りたい」と事業拡大への意欲を語る。現在までの利用者は首都圏でカーシェア利用経験がある人が大半のため、事業の周知と新規利用者の獲得が課題だという。
 浜松市ではオフィス仕様に改造した軽ワゴン車をシェアし、市内の公共駐車場に止めて仕事ができる環境を整える「浜松テレワークパーク構想」を官民連携で1年半前から進めている。外部電源で動く小型空調などを搭載した車5台を10社以上で共同利用し、使い勝手を検証中。市は給電できる駐車場所を10カ所増やし、後押しした。
 リモートワークの浸透もあり、利用者数は延べ30社、200人と伸びた。運営するウィーウィル(浜松市中区)の担当者は「予想以上の利用があり、分析用サンプルが多く集まった」と振り返る。
 同社の杉浦直樹社長(46)は「車の中でも意外と働けることが分かった。移動手段であり、居場所にもなりうる」と語る。さらに、「静岡は首都圏に比べ働き方の多様性が乏しい。本格的な普及には価値観の転換が必要」と次の仕掛けを練る。
(大見拳也)
〈2022.3.29 あなたの静岡新聞〉

伊豆観光、イーバイクやカーシェアで 新たな「足」次々

 伊豆半島の賀茂地域で、公共交通機関での来訪が困難な観光地への来客を促そうと、自転車やレンタカーの貸し出し環境の整備が活発化している。観光協会の担当者たちは「夏の観光シーズンに利用してもらい、2次交通の脆弱(ぜいじゃく)性をカバーしたい」と口をそろえる。

イーバイクを点検する観光協会職員=7月下旬、河津町の河津桜観光交流館
イーバイクを点検する観光協会職員=7月下旬、河津町の河津桜観光交流館
 伊豆急行河津駅から徒歩5分ほどの河津桜観光交流館(河津町)。7月に電動アシスト自転車「イーバイク」5台がお目見えした。同館を拠点にメーカーと連携し、時間に応じて千~5千円(9月まで半額、別途保険料200円が必要)で貸し出す。
 「町内を代表する『河津七滝』行きのバスは1時間に1本。徒歩は困難だが、イーバイクを使えば30分ほどで到着する」と町観光協会の加藤愁子さん(51)。ジオサイトでもある河津七滝だが、交通の便を懸念して来訪を断念する観光客も少なくないという。
 国指定重要文化財の旧天城トンネルなども同様の課題を抱え、道路幅も狭く未舗装箇所が多いため、自家用車で町を訪れた観光客にもイーバイクを活用してもらいたい意向だ。
 東伊豆町では、7月から町観光協会が町や民間企業とカーシェアリングの実証実験を始めた。伊豆稲取駅そばに24時間利用可能な軽乗用車を配置。同町も伊豆急行やバスを降車した後の交通手段確保が喫緊の課題だ。協会の青嶋優太郎さん(29)は「移住者が増え、彼らの交通手段の確保も必要。観光と暮らしの両面において、課題解決の糸口にしたい」と見据える。

 ■電動キックボード好評 西伊豆
 西伊豆町では既に電動キックボードの貸し出しが観光客から好評を得ている。町観光協会が2021年10月からレンタルを開始し、アップダウンのある海岸周辺の道や街中の路地を移動する2次交通として普及が進む。景勝地を快走できる爽快感も人気の要因だ。
 30分1000円から時間に応じて料金を設定し、宿泊客限定の割安なプランを用意。観光協会で貸し出す際には職員が走行練習を支援し、利便性を高めるため、宿泊施設への返却も可能にしている。国道から映画のロケ地で有名な浮島海岸までの道のりなど、キックボードだからこそ容易に回れるルートも紹介することで、地域の魅力をより深く知ってもらうきっかけになっているという。
 協会の鷹野純也事務局次長(41)はさらなる普及に向け「観光地特有のアクティビティーを兼ねた移動手段としてPRすることが大切。快適に利用してもらう環境づくりにも力を入れている」と話した。
(下田支局・伊藤龍太)
〈2022.8.10 あなたの静岡新聞〉

災害時に迅速貸与へ 南海トラフ地震見据え富士に拠点

 被災地で車を無料貸与する日本カーシェアリング協会(宮城県石巻市)は22日、静岡支部を富士市岩淵に新設した。東海地方への進出は初めて。熱海土石流や台風15号の援助で培った静岡県住民との協力関係を生かし、南海トラフ地震を見据え迅速な支援を目指す。

災害時に貸し出す車を紹介する吉沢武彦代表理事=22日午前、富士市
災害時に貸し出す車を紹介する吉沢武彦代表理事=22日午前、富士市

 静岡支部には個人や団体から譲り受けた乗用車や軽トラックなど37台を配備した。災害発生時に被災者らに無料で貸し出し、生活再建や災害ごみの搬出などに役立ててもらう。
 同協会は2011年、東日本大震災を契機に発足した。その3年後に関東地方などで発生した「平成26年豪雪」以降は、全国で災害が起こるたび、宮城県から車を派遣してきた。本県ではこれまでに熱海市伊豆山の大規模土石流で97件、昨年9月の台風15号で306件貸し出した。
 新支部の敷地確保にはこれまでに連携した自治体や社会福祉協議会などが協力した。2年連続の出動で県内在住のスタッフやボランティアも多いという。
 支部設置は佐賀、栃木両県に次いで3カ所目で、災害対応の迅速化が目的。台風15号では、車の運搬やスタッフ配置のため、支援開始までに約20日間を要したという。
 同協会の吉沢武彦代表理事(44)は「東海地方は南海トラフ地震が想定される地域。隣県などを含めて対応したい」と話す。   高齢者外出支援も推進  日本カーシェアリング協会は災害が起きていない平常時、後期高齢者の自動車免許返納を踏まえた外出支援を推進している。ボランティアが運転して複数人の高齢者の買い物や行事などに活用する仕組み。
 3月には富士宮市杉田地区で利用者グループが作られ、運用が始まった。
 災害発生時の返却を条件に、利用料を抑えたリース事業や生活困窮者向けの格安リースなども展開している。
 問い合わせは同協会<電0225(22)1453>へ。
(富士支局・沢口翔斗)
〈2023.5.23 あなたの静岡新聞〉
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