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部分運休続く大井川鉄道 全線復旧への見通しは?

 昨年9月の台風15号で被害を受けた大井川鉄道は、現在も一部区間で運休が続いています。先月、全国で初めて「鉄道災害調査隊」による現地調査が行われ、技術的な観点から今後の復旧計画について助言を受けます。これまでの経緯とともに復旧に向けた動きをまとめます。

家山ー千頭の運休区間に調査隊 全国初の派遣 被災状況を確認

 鉄道・運輸機構(横浜市)は(6月)19日、自然災害などで被災した鉄道施設の早期復旧を支援する鉄道災害調査隊を大井川鉄道(島田市)に派遣した。20日まで現地調査を実施し、技術的な助言などを行う。

被災状況を確認する鉄道災害調査隊のメンバーら=19日午後、大井川鉄道川根温泉笹間渡―地名間(大井川鉄道提供)
被災状況を確認する鉄道災害調査隊のメンバーら=19日午後、大井川鉄道川根温泉笹間渡―地名間(大井川鉄道提供)
 昨年9月の台風15号で線路内の土砂流入が相次ぎ、現在も運休が続く大井川本線家山(同市)―千頭(川根本町)間で、比較的被害が大きい線路など39カ所を調査する。被災状況を確認した上で、技術的な視点から今後の復旧計画について助言する。同機構鉄道総合支援課の大中英次課長は「復旧に向けた動きにしっかりつなげていきたい」と述べた。この日は隊員10人が社員の案内で現地に向かった。
 同鉄道の鈴木肇社長は「災害復旧計画を立てているが、より専門的な知見に基づいて進められればありがたい」と話した。
 鉄道災害調査隊は近年、頻発する自然災害などで鉄道施設の被害が相次いでいることから本年度に創設された。国土交通省の要請を受け、今回全国で初めて派遣された。(島田支局・寺田将人)
 〈2023.6.30 あなたの静岡新聞〉

島田・採石場跡地の土砂流出 台風15号影響で一時全線運休

 ※2022年9月30日 あなたの静岡新聞から

大量の土砂が流入した国道473号と大井川鉄道の復旧作業=29日午前、島田市福用(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
大量の土砂が流入した国道473号と大井川鉄道の復旧作業=29日午前、島田市福用(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
 台風15号の影響で島田市の採石場跡地から大量の土砂が流出し、崩壊した国道473号とともに不通となった大井川鉄道本線の神尾-福用間では、重機による復旧作業が始まっている。県島田土木事務所によると、土砂崩れは延長約80メートル、幅約40メートルに及び、鉄道運行の再開には数カ月かかる見通し。国道の崩落を含めた被害全容はいまだ明らかになっておらず、工事は長期化する恐れもある。
 同事務所によると、線路と国道の落差は約30メートル。のり面が大雨に耐えきれず崩れ、道路が決壊したとみられる。ドローンによる3次元レーザー測量を実施し、流出した土砂の量や道路崩壊のメカニズムなどを解析している。線路には採石場跡地の土砂と国道の崩壊による土砂が確認された。同事務所の海野智之次長は「まずは大鉄の早期復旧に向け、土砂の撤去を最優先で進める」と話した。
 大鉄によると、台風により土砂の流入や倒木、道床の流出などの被害が本線で20カ所、井川線で24カ所発生した。バスの代行輸送では被災した大井川右岸を避け、金谷-千頭間を往復する大型バスとシャトルタクシー、ワゴン車を組み合わせて各駅をつないでいる。
 (2022年9月)29日も通勤、通学時間帯の便を中心にバスを利用する人が多く見られた。福用駅近くに通勤するためバスとタクシーを乗り継いだ島田市の男性(25)は「不便だが仕方がない。国道復旧には相当時間がかかるのではないか」と話した。
 ※内容は当時のまま

被災から3カ月 金谷ー家山間が再開 地域の足、部分復旧

 ※2022年12月16日 あなたの静岡新聞から

「きかんしゃトーマス号」が登場し、にぎわいが戻った新金谷駅=16日、午前島田市
「きかんしゃトーマス号」が登場し、にぎわいが戻った新金谷駅=16日、午前島田市
 9月の台風15号の被害により全線運休していた大井川鉄道(本社・島田市)の大井川本線は(2022年12月)16日、金谷―家山間で約3カ月ぶりに運転を再開した。同日から大鉄の蒸気機関車(SL)を使った「きかんしゃトーマス号」も運転を開始し、観光客らを乗せて新金谷駅を出発した。
 トーマス号が新金谷駅のホームに入ると、見学に訪れた地元の子どもたちから歓声が上がった。乗客の家族連れらは記念撮影を楽しんだ後、続々と客車に乗り込んだ。長期修繕に入っていたSLのC10形8号機も「かわね路号」として同日から運転を開始。広報担当の山本豊福さんは「部分的ではあるが地域の足としての日常が戻り、ほっとしている。トーマス号も多くの人が待ってくれているので期待に応えたい」と話した。
 きかんしゃトーマス号は来年1月9日まで、年末年始を含め週末を中心に新金谷―家山間を往復遊覧運転(家山駅での乗降不可)する。1日2便。かわね路号は同区間を1日1往復する。家山―千頭間は代行バスを走らせる。
 大鉄は同市福用の採石場跡地からの土砂流入や国道473号の崩落で大きな被害を受けた。家山―千頭間も複数の被害があり、復旧のめどは立っていない。
 ※内容は当時のまま

被災地方鉄道 乗って応援 大井川鉄道、熊本ツアー企画

応援ツアーへの思いを語る山本豊福さん=6月上旬、大井川鉄道新金谷駅
応援ツアーへの思いを語る山本豊福さん=6月上旬、大井川鉄道新金谷駅
 昨秋の台風15号で被害を受け、大井川本線の家山―千頭間で運休している大井川鉄道(本社・島田市)が被災から丸1年を迎える9月、同じく自然災害の影響で不通区間が残る熊本県の地方鉄道などを訪ねる応援ツアーを計画している。企画の中心を担い、全行程に同行する大鉄の名物広報、山本豊福さん(58)は「被災した鉄道の復旧には『乗車』という行動が重要。乗って応援してほしい」と強調する。
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大井川鉄道の蒸気機関車(SL)「かわね路号」

 静岡空港からフジドリームエアラインズ(FDA)が熊本便を運航していて、くま川鉄道(人吉市)の永江友二社長が山本さんと親交があったことがきっかけ。今回訪問する同鉄道、南阿蘇鉄道(高森町)、JR肥薩線はいずれも2020年7月の豪雨や熊本地震で被災している。くま川鉄道では永江社長自ら被災地を案内し、復旧状況などを語る。永江社長は「(大鉄も)被災しているにもかかわらず、応援ツアーの計画は心強い。熊本や鹿児島と静岡を結ぶ空路もあり、相互交流を深めたい」と話す。
 9月22~24日の2泊3日のツアーでは東京方面からも参加しやすいよう集合場所を静岡駅に設定し、出発や解散時間にも余裕を持たせた。熊本へのフライト前には大鉄の代名詞である蒸気機関車(SL)「かわね路号」に乗車する。南阿蘇鉄道のトロッコ列車にも乗り、JR肥薩線では築100年以上のレトロな木造駅舎の嘉例川駅を訪れる。
 山本さんは「われわれの地元にはせっかく空港もあるし、遠くにも仲間がいることも実感している。さまざまな輪を広げ、鉄道が走る風景を守りたい」と言葉に力を込める。(島田支局・寺田将人)

南阿蘇鉄道
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 阿蘇の山々を眺めながら、観光客を乗せてのんびり走るトロッコ列車で有名。2016年の熊本地震で甚大な被害を受けたが、7月15日に全線の運転を再開する予定。

くま川鉄道
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 利用者の8割が学生で熊本県人吉・球磨地域の足として不可欠な路線。2020年7月の豪雨で全車両が浸水、橋梁(きょうりょう)も流失した。25年度中の全線復旧を目指している。写真は同鉄道の列車「田園シンフォニー」。

JR肥薩線
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 熊本県八代市の八代駅と鹿児島県霧島市の隼人駅を結ぶJR九州の路線。2020年7月の豪雨で被災し、一部区間で運休が続いている。写真は築100年以上の嘉例川駅舎。
 〈2023.6.27 あなたの静岡新聞〉
 
地域再生大賞