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カーシェアリング開始 静岡県内大雨の被災者支える

 台風2号などによる静岡県内各地の大雨被害を受け、日本カーシェアリング協会静岡支部(富士市)は5日、「災害サポートレンタカー」を開始しました。協会の活動は2011年の東日本大震災から始まり、宮城県石巻市を拠点に全国の災害被災地で車の無料貸し出し活動を行っています。昨年の台風15号でも発生直後から支援を行った同協会の活動を1ページで紹介します。

10月31日まで軽乗用車や軽トラなど無料貸与

 台風2号や前線の影響による大雨被害を受け、日本カーシェアリング協会静岡支部(富士市)は5日、被災者や支援団体に無料で車を貸し出す「災害サポートレンタカー」を開始した。

貸し出し車両の説明を受ける利用者ら=5日午前、富士市内(画像の一部を加工しています)
貸し出し車両の説明を受ける利用者ら=5日午前、富士市内(画像の一部を加工しています)
 10月31日までの期間中、富士市岩淵の同協会事務所で軽乗用車や軽トラックなどの中古車を被災者らに無料貸与する。5日は、各災害ボランティアセンターを巡回するという県社会福祉協議会の職員2人に軽乗用車2台を貸し出した。同社協の漆畑友香さん(26)は「被害が県内の広範囲にわたっているため移動手段は不可欠。被災者のニーズの把握に役立てたい」と感謝した。
 車の貸し出しには事前申し込みが必要。問い合わせは同協会〈電070(1140)5458〉へ。受け付けは午前9時から午後5時まで。中古車の寄付も呼びかけている。(富士支局・沢口翔斗)
〈2023.6.5 あなたの静岡新聞〉

富士の拠点、5月に新設したばかり 南海トラフ地震見据え

 被災地で車を無料貸与する日本カーシェアリング協会(宮城県石巻市)は22日、静岡支部を富士市岩淵に新設した。東海地方への進出は初めて。熱海土石流や台風15号の援助で培った静岡県住民との協力関係を生かし、南海トラフ地震を見据え迅速な支援を目指す。

災害時に貸し出す車を紹介する吉沢武彦代表理事=22日午前、富士市
災害時に貸し出す車を紹介する吉沢武彦代表理事=22日午前、富士市
 静岡支部には個人や団体から譲り受けた乗用車や軽トラックなど37台を配備した。災害発生時に被災者らに無料で貸し出し、生活再建や災害ごみの搬出などに役立ててもらう。
 同協会は2011年、東日本大震災を契機に発足した。その3年後に関東地方などで発生した「平成26年豪雪」以降は、全国で災害が起こるたび、宮城県から車を派遣してきた。本県ではこれまでに熱海市伊豆山の大規模土石流で97件、昨年9月の台風15号で306件貸し出した。
 新支部の敷地確保にはこれまでに連携した自治体や社会福祉協議会などが協力した。2年連続の出動で県内在住のスタッフやボランティアも多いという。
 支部設置は佐賀、栃木両県に次いで3カ所目で、災害対応の迅速化が目的。台風15号では、車の運搬やスタッフ配置のため、支援開始までに約20日間を要したという。
 同協会の吉沢武彦代表理事(44)は「東海地方は南海トラフ地震が想定される地域。隣県などを含めて対応したい」と話す。   高齢者外出支援も推進  日本カーシェアリング協会は災害が起きていない平常時、後期高齢者の自動車免許返納を踏まえた外出支援を推進している。ボランティアが運転して複数人の高齢者の買い物や行事などに活用する仕組み。
 3月には富士宮市杉田地区で利用者グループが作られ、運用が始まった。
 災害発生時の返却を条件に、利用料を抑えたリース事業や生活困窮者向けの格安リースなども展開している。
 問い合わせは同協会<電0225(22)1453>へ。(富士支局・沢口翔斗)
〈2023.5.23 あなたの静岡新聞〉

「新たな支え合いの仕組み、全国へ」協会代表理事・吉沢武彦さん

 宮城県石巻市を拠点に全国の災害被災地で、車の無料貸し出し活動を行う。昨年9月の台風15号直後から静岡市を拠点に、浸水で自家用車を失った人や災害ごみの搬出でトラックを必要とする人たちなどを支援した。44歳。

吉沢武彦さん
吉沢武彦さん
 ―活動実績は。
 「10月から乗用車と軽トラックを延べ286件貸し出した。申し込みが殺到したが、ピーク時170人だった待機者は今はゼロ。貸し出し期間は2月28日までとしている。車の寄付を募ったところ、有志や中古車業界団体の協力で24台を譲り受けた。中古車需要が高い中で手放した思いに感謝が尽きない」
 ―静岡市の調査時の印象は。
 「清水区を最初に訪ね、住民の話を聞き、思っていたよりもひどいと感じた。自家用車が故障で動かなくなった地域は県内で広範にわたり、需要は相当高そうだ、車が相当不足しそうだと予想した」
 ―支援の輪をどう広げたか。
 「活動場所探しでは静岡市の地域デザインカレッジ修了生情報共有会議、他県から車を静岡に集約するための搬送作業では県災害ボランティア本部・情報センター、寄付者の登録では県行政書士会と、さまざまな場面で心強い協力を得た。協会の人数規模ではこのスピード感ではできなかった」
 ―協会の設立の経緯は。
 「2011年の東日本大震災でカーシェアリングをしたことが始まり。私が師と仰ぐボランティア活動家山田和尚さんの言葉『(波及可能な)ひな型を創れ』を体現するために兵庫県から宮城県に移り、新たな支え合いの仕組みとして石巻市から全国へ広げている。静岡県でも今後できる活動を考えていきたい」
〈2023.1.28 あなたの静岡新聞〉

22年の台風、長期貸し出し用の不足深刻化 使わない車の寄付募る

 台風15号で車を失った被災者らを支援するため、日本カーシェアリング協会(宮城県石巻市)が11日から、静岡市葵区を拠点に車を無償で貸し出したところ、10日間で予約は200件を超えた。車不足が深刻化していて、同協会は使わなくなった車の寄付を呼びかけている。

被災者支援のため乗用車を提供した(右から)鈴木和孝さん、あや子さん=20日、浜松市浜北区
被災者支援のため乗用車を提供した(右から)鈴木和孝さん、あや子さん=20日、浜松市浜北区
 災害ごみの搬出などに使われる軽トラックの短期貸し出しの需要は落ち着き、現状では乗用車の長期貸し出しの予約が9割ほどを占める。今回の件数は九州5県で災害関連死を含め79人が死亡した2020年7月の豪雨に匹敵する規模という。他所で使い終えた車を急いで静岡市に集めているが、県内で扱える分は70台ほどで、提供が追い付いていない。
 新型コロナウイルスの影響による新車の納期遅れや、中古車やレンタカーも「希望する車を調達できなかった」という声が寄せられ、吉沢武彦代表理事は「被災者が車を入手できない状況」とみる。
 20日には、浜松市浜北区の鈴木和孝さん(76)、あや子さん(73)宅を訪ね、車を引き取った。夫婦にとっては新婚旅行先を再訪するドライブに使うなどした思い出の車。「半年ごとに点検して屋内で保管してきた。この車が私たちの代わりに役立つことがうれしい」と話す。
 同協会は「寄付車を整備して貸し出す活動に注力する」とし、有志へ寄付を呼びかけている。貸し出し中の事故などのトラブルも想定されるため、貸与は受けない。
 寄付に関する問い合わせは日本カーシェアリング協会<電070(1140)5458>へ。土日も対応可。(社会部・大須賀伸江)
〈2022.10.25 あなたの静岡新聞〉
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