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タケノコ王「伝説」涙の終幕 人に地域に愛された風間さん

 「タケノコ王」としてお馴染みの風岡直宏=富士宮市=さんが、2025年春としていた引退を、酷使した体が悲鳴を上げていることから24年8月に早めました。「不思議で魅力的」「ピンクのタンクトップ」が気になるー。そんな声も寄せられ、多くの人を魅了してきた風岡さん。その人柄や地域とのつながり、仕事に懸ける姿勢についてまとめました。
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タケノコ直売所、25年閉店へ「命を懸けてきた」 決断の理由は

 テレビ番組などで「タケノコ王」として親しまれる風岡直宏さん(49)が営む直売所「風岡たけのこ園」(富士宮市長貫)が、2年後の2025年春のシーズンを最後に閉店する。足に不調を抱えていることに加え、長期的な事業継続が難しいことから、タケノコの生産自体をやめると決断した。風岡さんは「タケノコ農家の仕事に命を懸けてきた。最後まで最高の味を追い求め、伝説になって終わりたい」と意欲を燃やす。

「風岡たけのこ園」閉店への思いを語る風岡直宏さん=3月下旬、富士宮市長貫
「風岡たけのこ園」閉店への思いを語る風岡直宏さん=3月下旬、富士宮市長貫
 風岡さんは01年から実家の竹林でタケノコ生産に従事。年間300日以上を山の管理と収穫に費やす。高値がつく「白子」と呼ばれる白いタケノコの量産に成功して注目を集め、地元地域をPRするためテレビのバラエティー番組にも出演するようになった。
 「夢は、生涯現役でタケノコ農家の仕事を全うすることだった」。だが、トライアスロン選手だった時に酷使した右足の状態が悪化し、4年前に1回目の手術を経験。さらに昨年12月の検査で、近い将来、再手術が必要と医師に告げられた。手術後は足の可動域が狭くなり、「アスリート並みに足を使うタケノコ生産は難しくなった」という。
 決断に至ったもう一つの理由は「将来、長男にタケノコ農家を継いでもらえるほどの収入が、現状で確保できていないこと」。風岡さんが栽培するタケノコはミシュランの星付き料理店で採用される一方、近年は客の高齢化による需要の低迷や交通事情の変化で売り上げが減少している。「周辺の旧芝川町エリアの他のタケノコ生産者に専業はおらず、高齢化も進んでいる。地域全体が将来的に厳しい環境」と語る。
 決断までに葛藤したが、「今は、すがすがしい気持ち。ゴールが見えたからこそ、あとは全力でやるだけ」と表情は明るい。閉店の告知を始めたのは、古くからの顧客や取引先への影響を最小限にするため。「閉店後のことはまだ全く考えていない。命を懸けられる仕事に、最高の仲間たちと一緒に取り組めて幸せだった」。タケノコ王は今季を含め3シーズン。全力で走り抜けるつもりだ。
(生活報道部・大滝麻衣)
 〈2023.4.11 あなたの静岡新聞〉

活動支えるバイタリティー 農業への思い/スポーツ選手だった経歴

※2021年5月28日 静岡新聞夕刊から

風岡直宏さん(富士宮市)
風岡直宏さん(富士宮市)
 テレビのバラエティー番組に出演し、“タケノコ王”として親しまれる富士宮市のタケノコ農家、風岡直宏さん(47)。静岡市葵区の主婦(30代)から「不思議で魅力的なキャラクター。今後の夢やプライベートが気になる。テレビ出演の際によく着ているピンクのタンクトップについても聞いてほしい」との依頼が届いた。富士宮市の直売所「風岡たけのこ園」を訪ねると、生産に懸ける熱い思いを語ってくれた。

 ■“日本一の味へ 命懸け”
 2016年に経済紙で「タケノコで1億円稼いだ男」などと紹介された時、“タケノコ王”という見出しが付き、そう呼ばれるようになりました。農業は命そのものを扱う大切な仕事ですが、注目される機会は少ないです。テレビ出演を通じてタケノコ農家の仕事や、日本一の味を目指して命懸けで作っているタケノコを多くの人に知ってもらいたいと考えています。
 生まれ育った旧芝川町は、自然豊かで交通アクセスも良い魅力的な場所ですが、高齢化や過疎化が止まりません。残念ながら、同級生のほとんどがこの土地を離れました。なので、ここで一緒に新しいことに挑戦したいという人を全国から呼び込みたい、という思いも強いです。

 ■“プロ魂は前職から”
 タケノコ農家になって20年、年間300日以上を山の管理と収穫に当てています。「タケノコは勝手に生えてくる」と言う人がいます。でも、しっかりと研究した肥料を与え、適切に竹の伐採や草刈りを施した山のタケノコは、味が全く違います。私が育てたタケノコはあくが少なく、甘みが強い。ミシュランの星付き料理店でも採用されています。
 若い頃、トライアスロンのプロ選手でした。今はタケノコ農家のプロ。プロは「安定した成績を長年にわたって出す人」だと思います。タケノコは通常、豊作の表年と不作の裏年が1年交代ですが、私の山には裏年はない。プロとして、体の故障がないように気を付け、徹底した山の管理をしています。

 ■普段はピンク色とは限りません
 選手時代、レースでピンク色のユニホームを着ていたため、テレビでは衣装として着ています。普段はピンク色とは限りません。ただ、春先からはタンクトップを着ることが多いです。もちろん、山では安全のため、袖付きの服を着ています。
 体が資本なので、毎晩午後8時には寝ています。お酒は飲みません。休みは少ないですが、伊豆シャボテン動物公園などにカピバラを見に行くのが好きです。自衛隊の活動をPRする富士宮市自衛隊協力会の会長を務めていて、戦車などに乗車させてもらえるのも楽しみの一つです。
 体を動かし、忙しく働く今の生活が好きです。生涯現役でタケノコ農家の仕事を全うし、後継者も育てられればと思っています。(大滝麻衣)

 <Profile>
 かざおか・なおひろ 1973年、旧芝川町(富士宮市)生まれ。短大時代にトライアスロンを始め、23歳までプロチームに所属し、国内レースで13勝。足の故障で引退後は工場勤務などを経て、クワガタとカブトムシの養殖販売を手掛けた。2001年から実家の竹林でタケノコ生産に取り組み、「風岡たけのこ園」を営む。

富士宮農業の魅力、もっと届け!音声配信番組にゲスト出演

※2022年7月31日 静岡新聞朝刊から

新番組初回エピソードの収録を進めるメンバー=富士宮市長貫
新番組初回エピソードの収録を進めるメンバー=富士宮市長貫
 「ポッドキャスト」で農業をテーマに音声配信してきた富士宮市の生産者らが8月1日から、新番組「大人の社会科見学223号」をスタートさせる。農業に限らず富士宮の魅力を幅広く発信する番組を届ける。リスナーとともにリニューアルを進めようと、クラウドファンディング(CF)で活動資金を8月7日まで募っている。

 番組は市内でイチゴとブドウ生産に励む佐藤文紀さん(37)や農家レストラン「えいちのむら」を営む渡辺大介さん(32)らが2019年10月に配信を始めた。これまでは「農道223号」の番組名で、市内生産者らをゲストに招いたインタビュー、農作業に関するトーク企画などの配信を続け、計126本のエピソードを出してきた。3周年を前に番組をリニューアルし「富士宮に応援される番組」を目指していく。
 リニューアルに伴い新メンバーも加入。新番組の初エピソードは「タケノコ王」としてバラエティ番組で親しまれる風岡直宏さんをゲストに招き、収録を終えた。「タケノコ王の真実」と題して活動を深掘りした内容を8月1日に配信する。番組は無料で楽しめる。
 CFではゲストに招いた生産者の商品を支援者に返礼品として届ける。佐藤さんは「新番組で、全国に富士宮のあらゆる魅力を届けたい」と力を込めた。(吉田史弥)

地域で防犯呼びかけ トレードマーク「ピンク思い出して」

※2022年10月14日 静岡新聞朝刊から

パトカーから詐欺被害防止などを呼びかける風岡さん=富士宮市粟倉南町
パトカーから詐欺被害防止などを呼びかける風岡さん=富士宮市粟倉南町
 富士宮署は12日、「タケノコ王」として親しまれる富士宮市長貫の風岡直宏さんの協力を得て広報用の音源を制作した。同署特別広報官を務める風岡さんが特殊詐欺被害防止や交通事故防止を訴える内容を収録した。ボイスパトロールや防犯教室などで活用する。
 特殊詐欺被害防止を呼びかける音源は2パターン収録。パトロール用と富士宮の方言バージョンを用意した。生活安全課と風岡さんで練った原稿では、被害が多発していることを踏まえて、還付金やキャッシュカード、手術、重要な書類などのキーワードが出たときには詐欺の可能性が高いと訴える。トレードカラーがピンクの風岡さん。「不審に思ったらタケノコ王のピンクを思い出し、被害に遭わないように気を付けて」と呼びかける。
 同日は収録後、富士宮市粟倉南町の「ポテト粟倉店」で防犯キャンペーンを実施した。風岡さんは駐車場のパトカーから注意を呼びかけ、来店客に啓発品を配布した。収録音源を使ったボイスパトロールにも繰り出した。(吉田史弥)
地域再生大賞