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ふじのくに⇆せかい演劇祭2023開幕 世界の話題作静岡で

 静岡県舞台芸術センター(SPAC)の「ふじのくに⇆せかい演劇祭2023」が静岡市内で始まりました。5月7日までのゴールデンウイーク期間中、中国や韓国の話題作など海外の5作品を上演します。SPACの宮城聰芸術総監督は「世界が混乱している今、各国の演劇から多様性を感じ取ってほしい」と期待を込めます。演劇祭の狙いや今年の見どころ、関連イベントを1ページにまとめました。

中国の話題作「アインシュタインの夢」で開幕 5月7日まで

 静岡県舞台芸術センター(SPAC)の「ふじのくに⇆せかい演劇祭2023」が29日、静岡市内で始まった。静岡県とともに「東アジア文化都市」として交流事業を展開する中国、韓国の話題作を含む海外の5作品を上演する。5月7日まで。

「アインシュタインの夢」の終演後、舞台上に並んだSPACの宮城芸術総監督(中央)と中国、韓国の演出家=静岡市駿河区の静岡芸術劇場
「アインシュタインの夢」の終演後、舞台上に並んだSPACの宮城芸術総監督(中央)と中国、韓国の演出家=静岡市駿河区の静岡芸術劇場
 静岡芸術劇場(駿河区)で開幕を飾ったのは、中国の小劇場演劇をリードする演出家孟京輝さんによる「アインシュタインの夢」。物理学者アインシュタインが残した手紙や語りから着想を得た夢の世界を、映像やライブ演奏を取り入れてダイナミックに表現し、観客を圧倒した。
 SPACは「ふじのくに野外芸術フェスタ2023静岡」の一環で、世界30都市で上演した宮城聰芸術総監督演出の「天守物語」を5月3~6日、駿府城公園(葵区)特設会場で披露する。宮城総監督は「世界が混乱している今、各国の演劇から多様性を感じ取ってほしい」と期待を込めた。
 問い合わせはSPACチケットセンター<電054(202)3399>へ。(教育文化部・鈴木明芽)
 〈2023.4.30 あなたの静岡新聞〉

中仏韓の演劇やダンス5作品上演 野外芸術フェスタも同時開催

 静岡県舞台芸術センター(SPAC)は20日、静岡市内でゴールデンウイークに開催する「ふじのくに⇆せかい演劇祭2023」の概要を発表した。静岡県が中国、韓国の3都市とともに「東アジア文化都市」に選ばれたことを受け、両国をはじめ海外の演劇、ダンスなど計5作品を静岡芸術劇場(同市駿河区)と県舞台芸術公園(同)で上演する。

「アインシュタインの夢」の一場面(提供写真)
「アインシュタインの夢」の一場面(提供写真)
 日程は4月29日から5月7日。世界の話題作がいずれも日本初演となる。静岡芸術劇場では中国の実験的な演劇「アインシュタインの夢」(孟京輝さん演出)、韓国の若者社会を描く演劇「XXLレオタードとアナスイの手鏡」、韓国のダンス「Dancing Grandmothers~グランマと踊る」の公演がある。
 野外劇場がある県舞台芸術公園では2作品を上演。SPACとつながりが深いフランスからは注目作「ハムレット(どうしても!)」(オリヴィエ・ピィさん演出)を招く。韓国の音楽劇「パンソリ群唱~済州島 神の歌~」も上演する。
 世界の優れた舞台芸術作品を紹介する同演劇祭は毎年、ゴールデンウイークに合わせて開催。今年は東アジア文化都市の選定都市間の文化交流を進め、舞台芸術を発信する契機にする。

泉鏡花「天守物語」 野外芸術フェスタで上演
 ゴールデンウイークには、野外で作品上演する恒例の「ふじのくに野外芸術フェスタ2023」も静岡市と浜松市で開かれ、SPACは宮城聰芸術総監督演出の「天守物語」を再演する。例年会場となる駿府城公園(静岡市葵区)に加え、一般公演として初めて浜松市中区の浜松城公園にも舞台を特設して演じる。
 泉鏡花作の「天守物語」は戦国時代の城を舞台にした物語。浜松城公園には城の復興天守閣があり、宮城総監督は「『城』に関係する演目でリアルな場所の力を生かせる」と狙いを話す。
 東アジア文化都市の春の式典に合わせた上演で、静岡市で4公演、浜松市で2公演を予定する。
 宮城総監督は両市にゆかりが深い徳川家康について「平和をもたらした存在で、東アジア文化都市の思想と相性が良い」とし、「都市間の交流を進めていけば、国の間のハードルを乗り越えられる」と期待する。(文化生活部・山本淳樹)
 〈2023.1.21 あなたの静岡新聞〉

原点は1999年 演劇で「静岡県」と「世界」につながりを

SPAC新作が上演された駿府城公園の特設会場。4日間の公演は全て満席だった=静岡市葵区
SPAC新作が上演された駿府城公園の特設会場。4日間の公演は全て満席だった=静岡市葵区
 ※2016年5月27日静岡新聞朝刊「解説・主張」から
 今年で6回目となった県舞台芸術センター(SPAC)「ふじのくに⇆せかい演劇祭」は、ゴールデンウイーク(GW)に静岡市内4会場で上演した国内外7作品に、計約5500人の観客を迎えて閉幕した。劇場の外に目を向けると、街中での上演など新たな試みも進む。演劇を通じて文化の多様性に親しむ機会として発展させたい。
  「アジアで生まれた古事記のエピソードが、実は北米大陸まで伝わっていたという仮説に立ってみました。文化の出合いを楽しんでください」。5月2日夕、駿府城公園で初演した「イナバとナバホの白兎[うさぎ]」の開演に当たり、宮城聰芸術総監督が演出の意図を語った。特設会場の500席は、4日間全て満席になった。
  せかい演劇祭の原点は、国際的な舞台芸術の祭典「シアター・オリンピックス」。1999年、ギリシャ・アテネに続く第2回大会を静岡市で開き、翌年以降はSPACが独自事業の「Shizuoka春の芸術祭」として定着させた。2011年には、本県と世界の演劇を通じたつながりを強く印象付ける現在の名称に変更した。
  元々は5月ごろから約2カ月、市内の静岡芸術劇場と舞台芸術公園で週末ごとに開催してきた。静岡芸術劇場が入るグランシップの改修工事が行われた14年、閉館期間の事情からGWの集中開催に変更。「いざ変えてみると、静岡が最も美しく輝く時期。好きな作品を見て、ぜひ宿泊していってほしい」(宮城監督)と滞在型の集客にかじを切る転機になった。
  滞在客向けのイベントは、俳優やスタッフと触れ合う茶摘み会や交流バーなどを企画。今年は市との連携で「まちは劇場」を掲げる路上公演も実施した。有料公演にシンポジウムなどの関連イベントを合わせた来場者は、例年の3倍近い1万3千人に達した。
  県出資の劇団として、有料入場者数は事業の検証に欠かせない指標になる。演劇ファンの来場は安定し、北海道や九州からの常連客も少なくない。一方で、日頃は劇場に足を運ばない地元の市民に多様な価値観を提示することは、努めて意識すべき目標になっている。
  劇場を飛び出した取り組みは、協力者の手を借りて回数を重ねるごとに活発化している。市民協働で関心を高め、開催の意義を実感できる形で文化の土壌を耕していきたい。(宮城徹)
地域再生大賞