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家康も好んだ「忍冬(にんどう)酒」ってどんなお酒?

 徳川家康が愛用したとされる薬味酒「忍冬(にんどう)酒」をご存知ですか? 薬草のスイカズラ(忍冬)を本格みりんに漬け込んだお酒で、昭和初期までは浜松名産として知られ、広辞苑にも記されていたそうです。大河ドラマを背景にした“家康ブーム”で再び注目を集める「忍冬酒」の魅力と普及の取り組みを紹介します。
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長寿にあやかれる!? 独自のカクテル、ケーキにも

 徳川家康が愛用したとされる薬味酒「忍冬(にんどう)酒」が、大河ドラマを背景にした“家康ブーム”で再注目されている。浜松市の取扱店では販売が好調で、独自のカクテルやケーキを販売する施設も登場した。ドラマの舞台が浜松に移り、関係者は「家康公の健康長寿を想起する忍冬酒は時代のニーズと合う。地元食文化の魅力を全国発信し、活性化につなげたい」と期待を寄せる。

「忍冬酒」の魅力を語る加藤国昭さん=3月上旬、浜松市西区
「忍冬酒」の魅力を語る加藤国昭さん=3月上旬、浜松市西区
 「コンスタントに人気があったが、年明け前から徐々に伸び、2月の販売は前年同月比で3倍近い」。浜松市西区で酒販店を営む加藤国昭さん(70)は予想以上の反響を喜ぶ。
 忍冬酒は、薬草のスイカズラ(忍冬)を本格みりんに漬け込んだ酒。浜松の名産とうたわれながら、戦時期に製造が途絶えた。再興へ有志が集まり、1997年に復活を果たした。現在は「浜松忍冬酒の会」の6店が取り扱う。
 「琥珀(こはく)色で、甘み、うま味、苦みを備え、酒、料理、スイーツと多彩な楽しみ方ができる」と同会代表の加藤さんは独特の風味に太鼓判を押す。浜松を代表する「食文化遺産」の一つとして「家康公の時代からの歴史ある忍冬酒を後世に伝えることは、酒販店の役割」と使命感を語る。
 飲食店も思いは同じ。中心街のバー「ル・ランティエ」は2月下旬から、「神君家康公」と題した忍冬酒ベースのカクテルをメニューに取り入れた。店主の鈴木克明さん(56)は「カルチャー講座で歴史や文化を学び、イメージを膨らめた」と打ち明ける。家康関連で静岡産のウイスキー、ドイツのハーブ系リキュールなどを加えた。地元の「浜納豆」をグラスに添える。
 武将本多忠勝など徳川四天王をテーマにした商品も順次販売する予定だ。新型コロナウイルス禍の停滞期を経て、鈴木さんは「家康公にちなんだ話題で、少しでも客足が街中に戻れば」と願う。
 オークラアクトシティホテル浜松は、忍冬酒を練り込んだ白あんを用いたパウンドケーキの新商品販売を始めた。
〈2023.03.24 あなたの静岡新聞〉

「浜松名産」として復活、普及を

 ※2017年9月6日 静岡新聞朝刊から

 浜松市の酒販売店有志でつくる「浜松忍冬酒(にんどうしゅ)の会」(加藤国昭代表)が、同市ゆかりの徳川家康が好んだとされる薬用酒「忍冬酒」の普及を進めている。かつては浜松名産として全国に知れ渡り、広辞苑にも記載されていたという逸品で、同会員の7店(2023年3月現在は6店)でしか扱っていない希少価値がある商品だ。しかし、まだまだ認知度は高いとは言えない。さらにPRを進め、真の意味で「浜松名産」としての復活を果たしてほしい。
 忍冬酒はスイカズラ(別名・忍冬)の葉と茎を米こうじや焼酎などに漬け込み、エキスを抽出した酒。家康が浜松城に居を移した1570年ごろから造られ始め、健康のために愛飲していたとされる。戦後の物資不足をきっかけに生産が途絶えたが、同会が1997年に復活させ、その後、改良を重ねて現在の味にたどり着いた。
 特長は女性にも好まれる自然な甘さと上品な琥珀(こはく)色。ストレートが基本的な飲み方で、一口含むと、独特の香りが鼻をくすぐり、ほのかな甘さが口の中に広がる。同会は幅広い層を狙い、焼酎や水と割る「元気割り」、ジンジャーエールと混ぜる「浜松元気フィズ」、ホットミルクを加えた「忍冬酒ミルク」などさまざまな飲み方を提案し、ファン獲得に励んでいる。
 同会は、普及に向けて国内外の関係者とも連携を進めている。大河ドラマ「おんな城主 直虎」で注目される「井伊家」ゆかりの地という縁で、滋賀県彦根市の酒業関係者と忍冬酒を使ったオリジナルカクテルを共同開発した。江戸時代に朝鮮王朝から派遣された外交使節・朝鮮通信使の一行が忍冬酒を絶賛したとされるため、韓国の朝鮮通信使歴史館を訪れて関係者と交流も図った。
 浜松市内では(2017年)9月、米国系会員制大型スーパー「コストコ」が開業するなど、郊外大型店の出店が進み、商店への影響も懸念されている。そんな中で、忍冬酒のように地域色の強い商品は、郊外大型店との差別化にもつながる。飲み方や歴史について店主とのやりとりが楽しめるのも郊外大型店にはない強みだろう。
 味だけでなく、奥深い歴史の香りも楽しめる忍冬酒。多くの人にぜひ一度、試してみてもらいたい。
 ※内容は当時のまま

「自宅で気軽に飲める酒に」 浜松忍冬酒の会代表 加藤さん

加藤国昭さん
加藤国昭さん
 ※2017年9月16日 静岡新聞朝刊から
 前身の「遠州夢倶楽部(くらぶ)」の解散に伴って2014年に浜松市の酒販売店有志で「浜松忍冬酒(にんどうしゅ)の会」を発足した。「酒&フードかとう」の店主で、古酒研究家の顔も持つ。64歳。

  ―忍冬酒とは。
  「スイカズラの葉茎を焼酎などに漬け、エキスを抽出した薬用酒。1570年ごろから作られ、徳川家康も好んだとされる。昭和初期までは浜松名産として知られ、広辞苑にも記されていた。戦後の物資不足で生産が途絶えたが、97年に遠州夢倶楽部が復活させた」

  ―特長は。
  「自然な甘さと上品な琥珀(こはく)色。夏は冷たいカクテルにしたり、冬はホットミルクで割ったりと四季折々の飲み方ができ、疲れた体を癒やしてくれる。新しい飲み方をどんどん提案していきたい」

  ―最近のお薦めは。
  「(2017年の)大河ドラマにちなみ、滋賀県彦根市のバーテンダーと開発した『直虎カクテル』。忍冬酒、三ケ日みかんのリキュール『井伊お酒』、ジンジャーエールを1対2対3の割合で作る。甘み、酸味、辛みなどさまざまな味を楽しめる」

  ―今後の抱負を。
  「忍冬酒について調べる中で、関連するさまざまな歴史も学ぶことができた。多くの魅力を広く紹介し、自宅で気軽に飲める酒としてファンを増やしたい」
      ◇
 店で扱う商品へのこだわりは人一倍。
 ※内容は当時のまま
地域再生大賞