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2024年就活解禁 今年の採用どうなる? 静岡県内の傾向は

 来年3月に大学や大学院を卒業する学生の会社説明会が3月1日解禁され、就職活動が本格的にスタートしました。大学生活のほとんどを新型コロナウイルス禍で過ごした学生たちが対象となる今年の採用はどんな傾向なのでしょうか。静岡県内の状況を中心に1ページにまとめました。
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売り手市場続く 多くの企業が対面とオンライン併用で選考

今後の採用活動について話し合う担当者=1日午前10時ごろ、静岡市駿河区の静岡ガス
今後の採用活動について話し合う担当者=1日午前10時ごろ、静岡市駿河区の静岡ガス
 2024年春卒業予定の大学生・大学院生の新卒採用に向けた会社説明会が1日、解禁された。前年に続き静岡県内企業の採用意欲は高く、学生優位の「売り手市場」が続く。多くの企業は対面とオンラインを組み合わせ、採用活動の前倒しも検討しながら早期の人材確保を狙う。
 静岡市駿河区の静岡ガス本社では1日午前、出社した採用担当の社員が、会社説明会の情報を追加した自社採用ホームページの確認作業を進めた。
 
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24年卒大学生の就活解禁スケジュール

 同社は22人を採用した今春よりも採用人数を増やす予定。既に昨夏、インターンシップ(就業体験)を3年ぶりにオンラインから対面に切り替えていて、今後の面接も一部対面に戻すかを検討する。SNSでの情報発信も強化する方針で、担当者は「求めるのは自ら判断し、行動できる人材。きめ細やかなコミュニケーションを図りたい」と意気込む。
 政府は3月1日を会社説明会、6月1日を面接の採用選考、10月1日を内定の解禁日とする日程ルールを設けている。実際は、インターンやセミナーを通じて学生と接点をつくり、既に内定を出している企業も多い。
 県内では1日午後、静岡鉄道(静岡市葵区)が対面・オンライン併用型の会社説明会を開催する。1日以降も各地で合同企業説明会が開かれる予定で、新卒採用に向けた動きが加速する。(経済部・高松勝、平野慧)

 <メモ>大学生の就職活動 日本企業の多くが卒業予定の学生をまとめて選考し、卒業と同時に採用する新卒一括採用を実施。学業への影響を考慮し、政府は説明会を3月1日、面接などの選考を6月1日に解禁する日程ルールを設けている。破っても罰則がないことから、前倒しして採用活動をする企業が多い。既卒者や留学経験者が受けやすい通年採用も広がりつつある。
〈2023.03.01 あなたの静岡新聞〉

静岡県内主要30社アンケート 新卒採用「増やす」12社/選考前倒しの傾向/初任給「引き上げ」7社

 静岡新聞社が3月1日までに静岡県内主要企業30社に行った新卒採用アンケートによると、2024年春卒業予定の学生の採用数を「増やす」と回答したのは前年調査より1社多い12社だった。選考時期を「前年よりも早めた」のは9社で、首都圏企業の採用意欲が強い中で、県内で選考前倒しの動きが広がっている状況が浮かんだ。

静岡県内主要企業の新卒採用の計画と実績
静岡県内主要企業の新卒採用の計画と実績
 選考開始時期は3月が10社と最多で、2月以前に始めた企業も9社に上った。最も早く内定を出す時期も、全体の4割強に当たる13社が2~3月と回答するなど、短期集中型で学生の囲い込みを進める企業が多いとみられる。
 回答30社全てが、新型コロナウイルス禍で定着したオンライン活用型の会社説明会や面接選考を24年春採用でも続けるとした。一方、対面機会減少に起因する入社後の企業と学生間のミスマッチも懸念されていて、回答企業からは「職場見学などを通じて働くイメージを持ってもらう」「オンライン選考後に来社機会を設けて面談する」といった取り組み事例も聞かれた。
 23年春入社の予定者は、15社が前年(22年春卒)より増え、5社が同数となる見込み。人手不足感も強まる中、年齢構成バランス維持や事業拡大に向け、企業の採用意欲は堅調に推移している。

初任給「引き上げ」7社 最多は「未定」  今春闘で労使が協調して物価上昇幅を上回る賃上げの実現を目指す中、2023年春入社予定の新卒者初任給について、回答30社中7社が「引き上げる」と回答した。
 うち3社は上昇幅を「5%ほど」としていて、入社後の定着に向けて賃上げを推進しているとみられる。
 24年春採用では7社が「引き上げを検討」していて、「変更しない」は1社だった。最多は「未定」の21社で、先行き不透明の景況を受け、情勢を見極めようとする企業が目立つ。
(経済部・平野慧)
〈2023.03.02 あなたの静岡新聞〉

22年卒の大学生、Uターン率36% 地元回帰の動き鈍化

 しずおか産学就職連絡会が27日までにまとめた、2022年春に卒業した大学生の就職状況によると、静岡県外の大学に進学した学生が県内就職するUターン率は前年比1ポイント下降の36%と2年ぶりに低下した。同連絡会は、新型コロナウイルス禍で一時停滞した社会経済活動が回復傾向にある中、首都圏企業の新卒採用が活発化しているため、学生の地元回帰の動きが鈍りつつあると分析している。

2022年春卒、静岡県内出身大学生就職状況
2022年春卒、静岡県内出身大学生就職状況
 同連絡会が文部科学省の学校基本調査や県などの情報を収集し、県内高校を18年3月に卒業して進学した1万7176人の進路を調査した。
 大学入学者の70%に当たる1万2107人が県外の大学に進学した。このうち、半数以上を占める首都圏進学者のUターン率は前年比1ポイント下降の31%。一方、県内大学に進学した学生の県内就職率は1ポイント上昇の84%と3年連続で上昇した。県内出身者全体の県内就職率は1ポイント上昇の51%だった。
 21年の大卒者を対象にした前回調査では、リモート形式の面接選考普及や地元志向の高まりなどで、Uターン率は前年比2ポイント上昇の37%に回復していた。ただ、その後は首都圏の観光、サービス業といった業種で採用意欲が復調してきていることなどから、本県の企業の選考に臨む学生数が伸び悩んだとみられる。
 同連絡会事務局を務める就職支援財団(静岡市葵区)の鈴木寿彦事務局長は「オンラインを活用した会社説明会や採用面接の工夫など、企業には学生の選考参加を促すための環境づくりが求められている」と指摘した。(経済部・平野慧)
〈2023.02.28 あなたの静岡新聞〉
 

大学生の就職活動 SNS活用広がる 「オワハラ」トラブルも

 大学生の就職活動では近年、情報収集から選考対策まで、さまざまな場面で交流サイト(SNS)が使われる。企業側も学生の目に留まりやすいと活用に力を入れる。一方、「選考対策講座」と称して学生を集め、実際には特定の企業の面接を受けさせた上、内定が出ると就活の終了を迫る「オワハラ」仲介業者も。トラブルの相談は増えており、専門家は「使用リスクが高い業者も混在している」と注意を促す。

全日空のインスタグラムで、職種について紹介する客室乗務員の採用担当者=1日午後(画像の個人情報を加工しています)
全日空のインスタグラムで、職種について紹介する客室乗務員の採用担当者=1日午後(画像の個人情報を加工しています)
 ディスコが2024年卒業予定の大学生らを対象に1月に実施した調査によると、就活に関する情報の入手先に「SNS」を挙げる学生は32・5%で、23年卒より6・6ポイント増加。「友人」や「サークルの先輩」を上回る結果となった。
 会社説明会が解禁となった1日、全日本空輸は自社のインスタグラムのアカウントで、職種などを紹介するライブ配信を開催。担当者は「学生らが普段から使っているツールなので、親しみやすさを感じてもらえるのでは」と語った。
 明治学院大3年の女子学生は、LINE(ライン)やインスタを使い、同じ業界を志望する学生同士のチャットグループで情報交換をしたり、面接の注意点がまとめられた投稿を見たりするなどしている。「SNSは就活に欠かせないツール」
 ただ思わぬトラブルへ発展する例も。企業に学生を紹介し、学生が内定を承諾すると報酬を得る「新卒エージェント」の中には悪質な業者も存在する。
 
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悪質な「新卒エージェント」の例

 就活コンサルタントの谷出正直さんや都内の大学のキャリアセンターによると、悪質なエージェントの場合、SNSで「選考対策講座」などと銘打って学生を集め、提携する企業の採用面接をその場で受けさせることも。内定を得た学生が就活の終了を強要される「オワハラ」を受けるケースが多く、谷出さんのもとには学生や大学からここ数年、相談が寄せられるようになった。
 関東の私立大に通う男子学生は、新卒エージェント主催の「就活セミナー」をインスタで見つけ、会場に出向くと、予定になかったある企業の説明会が始まったという。終了後には採用面接を受けるよう迫られ、断り切れず参加。後日内定を得たが、ほかにも希望する企業があり就活を続行した。しかしそれに気付いたエージェントから「こんなにいい会社を断るなんてばかだ」などと詰め寄られた。
 労働問題に詳しい泉亮介弁護士は、SNSを使った新卒エージェントは手軽に使える一方、一見したところ資格や経験の有無が分からないと指摘。「オワハラなどのトラブルに巻き込まれる前に、おかしいと思ったらすぐに、大学のキャリアセンターや弁護士の無料相談を利用して」と呼びかける。
〈2023.03.02 あなたの静岡新聞〉
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