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静岡県で2度目の「医療逼迫警報」 前回との違いは?

 静岡県で新型コロナウイルスの感染拡大による医療逼迫(ひっぱく)が深刻化し県は23日、感染状況を国指標で「レベル3(医療負荷増大期)」に引き上げるとともに、独自で「医療逼迫警報」を発令しました。2022年夏にも1度発令されたこの警報について、前回との状況の違いや気を付けるべきポイントをまとめました。

警報発令 医療従事者の休職、救急搬送困難事案などが増加

 静岡県内で23日、新型コロナウイルス患者13人の死亡と4865人の新規感染が確認された。感染拡大による医療逼迫(ひっぱく)が深刻化し、県は県内の感染状況を国指標で「レベル3(医療負荷増大期)」に引き上げるとともに、県独自で「医療逼迫警報」を発令した。

静岡県庁
静岡県庁
 県全体の病床使用率は68・2%に上昇し、医療従事者の感染などによる休職や救急搬送困難事案が増加している。鈴木宏幸県感染症対策担当部長は「医療逼迫をここで食い止めるため、自助・共助をお願いしたい」として、オミクロン株対応ワクチンとインフルエンザワクチンの接種などを呼びかけた。
 県内の重症者は5人。浜松市では、12月中旬に感染が判明した40代男性の検体のゲノム解析で、オミクロン株派生型「BA・2・75」が初めて検出された。
 県は高齢者5人と年代非公表の患者2人の死亡を公表。浜松市は高齢者施設の入所者2人、医療機関の入院患者と自宅療養者各1人の死亡を発表した。静岡市は基礎疾患のある高齢の男女2人の死亡を明らかにした。県内の累計感染者は65万7093人。
 〈2022.12.24 あなたの静岡新聞〉

2022年7月にも発令 「まず市販薬で対応を」

 静岡県は(※2022年7月)29日、新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大で県内の医療体制は適切に提供できなくなる段階にあるとして、国指標に基づく感染状況のレベルを県独自に「3相当」に引き上げ、「医療逼迫(ひっぱく)警報」を発令した。県民に不要不急の外出を控えるよう求めた。

静岡県が求める具体的な取り組み
静岡県が求める具体的な取り組み
 県内の1日平均の新規感染者は4800人近くに上り、病床使用率は70%を超えた。記者会見した鈴木宏幸感染症対策担当部長は「一律に行動制限を求めないが、かつてない医療危機の状態にある」と強調した。
 若者に早期のワクチン3回目接種を訴えたほか、「基礎疾患のない60歳未満はまず市販薬で対応を」として発熱、救急外来の適正受診を呼びかけた。小児科に診療希望が殺到している状況を踏まえ、必要に応じて「静岡こども救急電話相談」の利用を推奨した。マスク着用の再徹底も求めた。
 県はコロナ受け入れ病床の回転率を高め、医療体制の維持に努める。発熱外来に抗原検査キットを配布する。
 国指標に基づく感染レベルについては、国と協議した結果、正式な引き上げは認められなかった。一方で医療体制の逼迫度は実質的にレベル3に相当すると判断し、県独自に引き上げた。(社会部・河村英之)
 〈2022.7.30 あなたの静岡新聞〉

前回との違いは? インフルとの同時流行懸念 県「3本柱」で対策

 静岡県内の新型コロナウイルスの感染状況が悪化している。川勝平太知事は11日の定例記者会見で「第8波入り」に言及した。懸念されるのは季節性インフルエンザとの同時流行。静岡県は「予防」「外来診療」「検査機能」の拡充を柱とした対策を打ち出し、市町や医療団体との調整を急ぐ。

コロナ・インフル同時ピーク
コロナ・インフル同時ピーク
 静岡県内の1週間単位の新型コロナ感染者数は10月12日に4839人で「第7波」後の底を打って以降、今月13日に1万1588人まで増加した。川勝知事は同時流行に警戒感を示し、「県民一人一人が予防と備えに取り組むことが大切だ」と訴えた。
 一方、定点医療機関が県に発生状況を報告するインフルエンザは10月に5件で、現時点で落ち着いている。だが、インフルエンザは今年南半球で流行し、日本が外国人の入国制限を緩和したこともあってウイルスの流入を懸念する声が上がる。
 県は両感染症が同時にピークを迎えると、新規患者の発生は1日計2万5千人に上ると試算した。その場合、医療提供体制の許容量を超え、1日5500人の“受診難民”が出る恐れがあると公表。この事態を回避するため、予防、外来体制、検査の充実を目指す。
 予防に向けては、コロナ、インフルエンザともにワクチン接種を強く推奨する。特に5歳未満はコロナの入院率と重症度割合が60代と同程度あり、3歳未満はインフルエンザの流行経験がなく、免疫がない。県は「同時接種が可能なので検討を」と呼びかける。
 外来体制は1100施設ある発熱外来機関に診療時間の延長を依頼する。休診が多い日曜、祝日の診療も要請し、救急の不適切利用を減らす構え。検査機能の充実では、医療機関と一般県民向けにそれぞれ30万回分の検査キットを用意した。
 夏の第7波に約750床あったコロナ用病床は同じ水準まで確保する。新型コロナオミクロン株の重症化率は低いが、第7波では感染をきっかけに基礎疾患が重篤化するケースが後を絶たず、準備を万全にする。
 ただ、冬場は心筋梗塞などの重大疾患が増え、担当者は「通常医療との兼ね合いが難しい」との認識。受け入れ病院に個別に協力を求め、病床数の全体概要を早期に取りまとめる。
 第7波は家族の感染を理由に看護師の欠勤が相次ぎ、マンパワー不足が深刻化した。鈴木宏幸県感染症対策担当部長は「濃厚接触者の扱いを廃止し、就業制限を取りやめるべきでは」と国に注文した。(社会部・河村英之)
 〈2022.11.16 あなたの静岡新聞〉

感染医療従事者の待機期間短縮を 川勝知事、全国知事会で提案

 川勝平太知事は23日の全国知事会新型コロナウイルス緊急対策本部のオンライン会議に県庁から出席した。医療逼迫(ひっぱく)の緩和のため、感染した医療従事者の待機期間の短縮を国に求めるよう提案した。「多数の欠勤者が発生することで一般医療にも重大な影響が出る恐れがある」と述べた。

医療従事者らの待機期間短縮などの意見を述べた川勝平太知事=23日午後、県庁
医療従事者らの待機期間短縮などの意見を述べた川勝平太知事=23日午後、県庁
 県は同日、感染再拡大で医療提供体制の逼迫が強まっているとして、4段階の国評価レベルのうち、対策強化すべき段階とされる「レベル3」に引き上げ、「医療逼迫警報」を発令した。
 会議で川勝知事は、レベル3の時点で、医療従事者や高齢者・障害者施設の従事者が一定の要件を満たした場合に、業務に復帰できる特例を認めるよう要望した。一定の要件として「発症後7日間を経過する前に勤務可能な状態に回復し、勤務に同意した場合」などを示した。
 集団感染を予防するために治療薬の予防内服の検討のほか、中小企業への資金繰り支援として、実質無利子無担保融資の条件変更への柔軟な対応、返済猶予などに伴う追加保証料への補助も求めた。(政治部・青島英治)
 〈2022.12.24 あなたの静岡新聞〉
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