リニア県境越えボーリングに厳しい声 首長意見交換会発言まとめ
リニア工事に伴う大井川水問題について協議する静岡県有識者会議と大井川流域10市町の首長の意見交換会が11日、行われ、JR東海が山梨県から静岡県との県境を越えて実施する方針を示す高速長尺先進ボーリングについて厳しい意見が相次ぎました。流域市町首長の発言や県有識者会議、JR東海の主張を1ページにまとめます。
実施可否「田代ダム案とセットで議論すべき」 大半の首長表明
リニア中央新幹線トンネル工事に伴う大井川水問題について協議する静岡県有識者会議の地質構造・水資源専門部会委員と大井川流域10市町の首長の意見交換会が11日、県庁で開かれた。JR東海が山梨県から静岡県との県境を越えて高速長尺先進ボーリングを実施する方針を示していることについて委員側が県内の地下水流出の懸念を説明。多くの首長が会議後の取材で、同ボーリングの実施可否は田代ダム取水抑制案を活用した地下水流出対策とセットで議論すべきとの考えを表明した。
森下部会長は同ボーリングの目的を「(トンネル掘削)工事前の水抜きを前提にしていると考えられる」と指摘し、静岡工区でトンネル工事の掘削が始まるまでの数年間、地下水が山梨県側に流出し続けるリスクがあると説明した。
一方、染谷絹代島田市長が「決めつけるような発言をすると流域は戸惑うだけ」と、専門部会の姿勢に疑問を呈する場面もあった。(政治部・尾原崇也)
〈2022.12.12 あなたの静岡新聞〉
田代ダム案実現性高める議論を 10市町首長の主な発言
委員側は首長の質問に答える形で、同ボーリングにより県境付近の破砕帯から大量湧水が発生する懸念などを伝えた。
北村正平藤枝市長は「水を戻す方法とセットでないと流域は安心できない」と述べ、久保田崇掛川市長は「まずは専門部会で田代ダム案の議論を深めてほしい」と求めた。
森下祐一部会長(静岡大客員教授)は「(同案を)最重要課題に位置付けてJR東海と対話していく」と述べた。
一方、染谷絹代島田市長は「調査をすることで破砕帯の状況が分かってくる」などと同ボーリングに理解を示し、「国やJRの考え方も総合的に聞いた上で考えをまとめたい」とした。(政治部・尾原崇也)
〈2022.12.13 あなたの静岡新聞〉
ダム案「実施の保障は」 首長、東電の姿勢を注視
大井川流域市町首長と県有識者会議専門部会委員との意見交換会では、JR東海が南アルプストンネル工事に伴い県外流出する湧水の対策として示した東京電力田代ダムの取水抑制案を巡り、首長から改めて期待の声が上がった。一方、東電側が取水抑制の公式見解を示していないため、実施の保障が必要だとの指摘や、工事終了後に流量が減少した場合の補償としても同案の検討を求める意見も出た。
田村典彦吉田町長は、東電が取水抑制を行う場合に「発電用の取水を抑制できるなら、次の水利権更新では(東電が大井川の水を)ある程度返すべきだ」との意見を述べた。工事前から大井川の流量の状況を確認するモニタリング体制の構築を求める意見も上がった。(政治部・杉崎素子)
〈2022.12.13 あなたの静岡新聞〉
「工事前の水抜き」静岡県専門部会長が指摘
静岡有識者会議専門部会の森下祐一部会長は大井川流域市町首長との意見交換会で、JR東海が県境を越えて実施する方針の高速長尺先進ボーリングについて「不確実性を確実にする科学的データが得られるわけではない」と指摘し、「今行う必要はない」との考えを改めて表明した。
会議後の取材で、国土交通省に同社を指導するよう求めたと明らかにし、「(水問題)全体の議論がヤマ場に向かっている今、この問題を争点化するべきではない」と述べた。
専門部会長の詳しい発言内容は リニア流域市町首長会議 森下静岡県専門部会長の発言全文 からお読みいただけます。