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迫る三島市長選 立候補者の主張と争点まとめ

 任期満了に伴う三島市長選が告示され、いずれも無所属の現職と新人の3氏が立候補を届け出て選挙戦に突入しました。三島駅前再開発事業の是非などが主な争点で、各候補が舌戦を繰り広げています。選挙の争点や3候補の第一声をまとめました。

三島市長選告示 現職と新人、三つどもえの戦い 18日投開票

 任期満了に伴う三島市長選が11日、告示された。いずれも無所属で、新人の会社経営近藤正文氏(46)、公明党県本部、連合静岡推薦で4選を目指す現職豊岡武士氏(79)、自民党三島市支部、日本維新の会県総支部推薦で新人の元市議石井真人氏(43)が立候補を届け出て選挙戦に突入した。三島駅前再開発事業の是非などが主な争点。

 投票は18日午前7時から午後8時まで市内31カ所で行われ、即日開票される。期日前投票は12日から17日まで市役所大社町別館で行われる。15~17日は日清プラザ・イトーヨーカドー三島店2階会議室でも受け付ける。
 市選挙管理委員会によると、10日現在の選挙人名簿登録者数は9万790人(男4万4036人、女4万6754人)。

 近藤正文(こんどう・まさふみ) 46 無新
 ▽現=飲食会社経営。堺市出身。富士見台
 豊岡武士(とよおか・たけし) 79 無現(3)
 ▽現=市長▽元=県議、県職員。日本獣医畜産大卒。文教町
 石井真人(いしい・まさと) 43 無新
 ▽現=経営企画会社社長▽元=市議、浜松市職員。慶応大大学院修了。藤代町
 〈2022.12.12 あなたの静岡新聞〉

3候補者の主張は 第一声まとめ

子育て世代を重視 近藤候補

 近藤正文候補は三島市役所前で第一声を発した。JR三島駅南口の再開発については「にぎわいは生まれない」と反対を表明した。人を呼び込む策として、経済活動の中心となる子育て世代の医療費無料化を訴えた。他市町に先行した取り組みで市のイメージアップにもつなげ、「子育て日本一のまちを目指す」と述べた。

駅前再開発を実現 豊岡候補

 豊岡武士候補は三嶋大社前で出陣式に臨み、三島駅前再開発について「30年越しの課題。いよいよ解決できるのがこの4年間だ」と早期実現を誓った。大場の区画整理事業や企業誘致も進めて「若者が元気に働き、活躍できる三島を全力でつくる」とし、高齢者福祉も充実させながら「一層光輝くまちにする」と訴えた。

幸せ実感のまちに 石井候補

 石井真人候補は三嶋大社前で出陣式を行った。財政再建と市役所職員の意識改革を重点施策に掲げ、「子どもからお年寄りまで幸せを実感できるまちにしたい」と声を上げた。職員が現場に足を運び、市民の話を聞いて困り事の打開策を一緒に考える重要性を強調。「未来を考え、持続的なまちづくりをする」と意気込んだ。

争点①駅前再開発事業 割れる見解

 首都圏から近く、伊豆や富士山など各地へのアクセスが良好なJR三島駅。周辺の地価は県東部で1位、清らかな湧水をはじめ豊かな自然が点在する駅前の都市空間は、官民の連携で守り続けてきた三島の宝だ。さらなるにぎわいの創出を目指し、駅の南口では広域健康医療拠点や商業施設を整備する再開発事業が進む。

再開発事業の計画が進む三島駅周辺=三島市(静岡新聞社ヘリ・ジェリコ1号から)
再開発事業の計画が進む三島駅周辺=三島市(静岡新聞社ヘリ・ジェリコ1号から)
 完成は2026年度の予定。今年6月には再開発組合が発足したものの、認可した県は事業の検証にかかる「5分野16項目」を市長や事業関係者に要請した。「市民の不安や懸念を払拭するため」とし、地質や地下水への影響などについて必要な調査と対策を検討するよう求めている。
 市長選の4選出馬を表明した現職の豊岡武士氏(79)は再開発の推進を明言した上で、県が求める5分野16項目には「十分留意して進める」との考えだ。地下水保全や安全性を大前提に必要な対策を講じ、30年越しの悲願とする駅前開発の早期実現に向けて「持続的発展に不可欠。何としても成し遂げる」との思いは強い。
 新人で市議の石井真人氏(43)は出馬会見で「推進の立場」としつつ、5分野16項目の調査完了までは「(買収する土地、建物の)権利変換手続きは行わない」とした。5日の公開討論会では財政負担の増加や費用便益比の低下を懸念し、環境への影響も踏まえて「今の内容で良いのか、見直す時に来ている」と語った。
 立候補予定者で唯一、「反対」を表明するのは新人の会社経営近藤正文氏(46)。地域経済が疲弊する中で「商業施設を増やしても共倒れになるだけ」とし、完成する建物は「数年で廃虚になる」と批判する。再開発を中止して費用を子育て世代の医療費無料化に充て、人を呼び込んで地域の活性化につなげる考えを示す。

 <メモ>事業用地は、三島駅南口の市営駐車場や民有地など約1ヘクタール。マンション、医療スペースが入る地上91メートルの高層棟や商業施設を建設する。総事業費は209億円で、市の支出は補助金を含む37億円の見込み。
 〈2022.12.09 あなたの静岡新聞〉

争点②市役所新庁舎建て替え 集約、分散、維持3様

建て替えの計画が進む三島市役所本庁舎=同市北田町
建て替えの計画が進む三島市役所本庁舎=同市北田町
 「まるで迷路のよう」
 三島市役所の本庁舎を訪れた高齢女性が困惑の表情を浮かべた。狭い通路や階段を歩いて本館と西館を行き来しているうちに、現在地が分からなくなってしまったという。手狭な駐車場、2カ所ある市役所別館との距離、老朽化した施設…。「どうにかならないのかしら」。ため息交じりに不満が漏れる。
 本庁舎が建築されたのは1960年。既に62年が経過し、市は市制90周年となる2031年をめどに建て替えの計画を示す。現在地か南二日町広場の2カ所を候補地とし、スリム化を図りつつ分散した行政機能を集約して拠点型の庁舎を建設する考えだ。11月に新庁舎整備に向けた市民ワークショップも開始し、来年度には基本構想の策定に乗り出す。
 現職の豊岡武士氏(79)は新庁舎に最先端のデジタル技術を導入し、自宅からスマートフォンやパソコンで手続きが可能な「市民が足を運ばなくて済む市役所」を思い描く。庁舎を建て替えて1カ所集約の拠点型の市役所を望む声が多く寄せられているとし、「市民の思いを受け止めてより良いあり方を探る」と語る。
 一方、新人の市議石井真人氏(43)は、市内各地の文化プラザなどを拠点にフルスペックの行政機能と職員を分散配置する考え。本庁舎と各地域をネットワークでつなぎ、「身近な拠点に行けば本庁舎と同じ手続きができる体制」を整える。職員も現場に向かいやすくなり、市民との双方向による行政運営につながるという。
 新人の会社経営近藤正文氏(46)は、「庁舎が使えるうちは維持すれば良い」と主張する。主に行政手続きをする市役所に「きれいな建物はいらない」とし、庁舎の建て替えについては「優先順位が低い。100億円もかける必要は無い」との見解を示した。

 <メモ>新庁舎の延べ床面積は1万3千平方メートルを想定。敷地が手狭な現在地は駐車場の立体化も見込み、費用の目安は115億円。千年に1度の洪水浸水想定区域の南二日町広場は土地のかさ上げも必要で、91億円を見込む。
 〈2022.12.10 あなたの静岡新聞〉
地域再生大賞