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どうなる閑蔵線トンネル整備 JR社長が川勝知事の姿勢批判

 JR東海の金子慎社長は17日、リニア中央新幹線南アルプストンネル工事に伴う静岡市道閑蔵線トンネル整備について、川勝知事の要請に対し「リニア工事に協力するなら」と返答し、川勝知事の姿勢を批判しました。夏以降、再び注目される閑蔵線の整備について、これまでの動きを整理します。

川勝知事の要請にJR社長返答「リニア協力なら検討も」

 JR東海の金子慎社長は17日に名古屋市で開いた定例記者会見で、リニア中央新幹線南アルプストンネル工事に関連し、川勝平太知事から静岡市道閑蔵線のトンネル整備を要請されたことに対し、「県として(リニアの)静岡工区の工事に協力するなら(整備を)検討する可能性が出てくる」と返答したと明らかにした。

静岡市道閑蔵線トンネル整備に関する見解を述べる金子慎JR東海社長=17日午後、名古屋市
静岡市道閑蔵線トンネル整備に関する見解を述べる金子慎JR東海社長=17日午後、名古屋市
 金子社長は、静岡工区のリニア工事について「県として協力するという話が全くいただけていない」と述べ、「その中で閑蔵線整備の要請をいただくのはバランスがとれない話だ」と、川勝知事の姿勢を批判した。静岡県から工事に協力するという姿勢が得られれば、「いろいろな事柄が前向きに進む」とした。
 「協力」の具体的な内容については、「スタンス、姿勢の問題」と明言しなかった。
 金子社長は2日に川勝知事と山梨県内のリニア実験線に試乗した際、知事から閑蔵線整備の提案を受けた。金子社長からは静岡工区の早期着工を要請したが、知事から前向きな返事はなかったという。試乗は非公開で行われた。
 県内のリニア工事を巡っては、工事に伴う大井川流量減少問題や南アルプスの環境への影響に関する議論が県と国の双方の協議体で続いていて、着工のめどは立っていない。(政治部・尾原崇也)
 〈2022.11.17 あなたの静岡新聞〉

11月2日、リニア実験車両に試乗した川勝知事が提案

 川勝平太知事によると、2日にリニア中央新幹線の試験車両に乗車した際、JR東海の金子慎社長と懇談し、静岡市葵区井川地区と川根本町を結ぶ市道閑蔵線トンネル整備を提案したという。試乗後、藤枝市で報道陣の取材に答えた。

リニア実験線に試乗する川勝平太知事(左)と案内する金子慎JR東海社長=2日午前、山梨県(JR東海提供)
リニア実験線に試乗する川勝平太知事(左)と案内する金子慎JR東海社長=2日午前、山梨県(JR東海提供)
 川勝知事はリニアの早期開業には「住民の理解を得なければならない」と指摘し、閑蔵線の整備は「住民(の安全性や利便性確保)への大きな貢献になる」と改めて主張した。提案に対し、金子社長は「可能性としてはある」と応じたという。
 川勝知事は同日に藤枝市で開かれ、田辺信宏静岡市長ら県中部の首長らが参加した地域サミットでも閑蔵線トンネルに言及した。
 リニア工事に伴う道路整備を巡っては、JR東海が当初閑蔵線の整備を提案したが、その後、県道南アルプス公園線トンネルの整備で静岡市と合意した経緯がある。(政治部・尾原崇也)
 〈2022.11.3 あなたの静岡新聞〉
 

「閑蔵線整備は必要」川勝知事、8月に田辺市長に働きかけ促す

 川勝知事は8月23日の定例記者会見で、リニア中央新幹線南アルプストンネル工事で働く作業員の安全確保に必要だとして、田辺信宏静岡市長に対し「市道閑蔵線のトンネル整備を(JR東海に)働きかけてほしい」と注文した。

リニア中央新幹線の計画ルートと駅
リニア中央新幹線の計画ルートと駅
 川勝知事は8日の東京電力田代ダム視察を踏まえて「“命の道”の整備が極めて重要だと認識した」と述べた。川根本町の要望もあるとして、地元の静岡市が事業者のJRに整備を働きかけるよう求めた。
 リニア工事に伴う車両通行ルートの整備では、過去にJRが閑蔵線のトンネル整備を提案したが、市と地元の井川地区が県道三ツ峰落合線と県道南アルプス公園線をつなぐトンネル整備を要望し、2018年にJRが工事費を負担して整備する基本合意を市と結んだ経緯がある。
 川勝知事は「三ツ峰落合線のトンネルをやめろということではないが、4年以上たってまだ1ミリも掘られていない。井川の人々が安心するためにも閑蔵線の整備が必要」と主張した。
 静岡市建設局の幹部は「基本合意からの4年間はトンネルの詳細なルート計画などに時間を要し、工期とは関係ない」と改めて反論した。閑蔵線の整備については膨大な費用と時間がかかる工事との認識を示し、「軽々には答えられない。基本合意にのっとり対応する」と話した。
〈2022.8.24 あなたの静岡新聞〉

田辺静岡市長「検討の余地はある」 知事の働きかけに

 静岡市葵区の井川地区と川根本町を結ぶ市道閑蔵線の整備をJR東海に働きかけるよう川勝平太知事が田辺信宏市長に求めたことについて、田辺市長は29日の定例記者会見で、「今すぐにJR東海に働きかけをすることは慎重な判断を要するが、検討の余地はある」と述べた。

 田辺市長は「市道閑蔵線の整備は周辺の首長から望む声があるのは承知している。広域観光の観点からも重要な道路」との認識を示し、2011年度から、市が井川側からの拡幅工事を進めていると説明した。市道路計画課によると、市道閑蔵線の全長約6キロのうち、現在1・1キロの工事が完了しているという。
 同市とJR東海は18年、リニア中央新幹線南アルプストンネル工事に伴う車両通行ルートとして南アルプス公園線と県道三ツ峰落合線を結ぶトンネルをJRの全額負担で整備する基本合意を交わした。市道閑蔵線の整備も候補に挙がっていたが、井川地区の住民の要望を尊重する形となった。
 川勝知事は23日の定例記者会見で、リニア工事の従業員の安全確保に必要だとして、市道閑蔵線の整備をJRに働きかけるよう田辺市長に求めていた。(政治部・池谷遥子)
 〈2022.8.30 あなたの静岡新聞〉
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