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統合案浮上 静大・浜医大の再編

 長年にわたり議論され、未だに先行きが不透明な静岡大と浜松医科大の大学再編。静大側から「大学統合案」の言及があり、議論が混迷しています。そもそも再編が浮上したのはなぜか。これまでの議論の経緯は。再編に向けた課題とは。今問題となっていることは何か。1ページにまとめました。
〈キュレーター:編集局未来戦略チーム 鈴木美晴〉

2018年 両大「連携協議会」設置、大学の機能強化へ

 静岡大と浜松医科大は2018年6月、両大学の再編と運営法人統合を視野に連携の在り方を検討する「連携協議会」を設置した。石井潔静岡大学長と今野弘之浜松医科大学長が浜松市中区の静岡大浜松キャンパスで記者会見を開き、早ければ21年度に1法人2大学制へ移行、さらに23年度をめどに地域の公立大、私立大の参画を促す「大学等連携推進法人(仮称)」の設立を検討していく方針を示した。

連携協議会の設置の狙いを語る石井潔静岡大学長(右)と今野弘之浜松医科大学長=28日午前、浜松市中区の静岡大浜松キャンパス
連携協議会の設置の狙いを語る石井潔静岡大学長(右)と今野弘之浜松医科大学長=28日午前、浜松市中区の静岡大浜松キャンパス
 両大の再編構想は静岡大浜松キャンパス(浜松市中区)の2学部(工、情報)と浜松医科大(同市東区)からなる大学と、静岡大静岡キャンパス(静岡市駿河区)の4学部(理、農、人文社会、教育)を中心とした大学の東西2大学に再編。運営法人も統合し、静岡、浜松を拠点とした1法人2大学体制に移行する考え。 石井学長は「将来を先取りする取り組み」で新たな2大学の魅力が生まれるとの認識を示し、今野学長は「医工、情報分野の融合で相乗効果が生まれる」と述べた。
〈2018.06.28 静岡新聞夕刊を編集〉

少子化による競争激化に先手打つ狙い

 
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 大学再編を含めた法人統合に向けて本格的な協議を始めた両大は、少子化による競争激化に先手を打ち、機能強化にかじを切った。
 18歳人口減少を念頭に文部科学省は大学の連携・統合を促す新制度を検討。運営法人が複数大学を運営できる「アンブレラ方式」や公立大、私大との連携を容易にする「大学等連携推進法人」の導入を目指し法改正の準備を進める。既に名古屋大と岐阜大、北海道の3大学が法人統合の検討を始めている。
 地方の総合大学と医科単科大の統合が相次いだ2000年代初頭、静大、浜医大も「大学統合」を模索。だが、内部からの反発で破談した。それから約15年。情報技術革新や人口減少など社会環境の変化に加え、国立大学法人化による学長権限の強化や、再編に前向きな学長がそろったことで長年の懸案が動き出した。
  輸送機器中心のものづくり産業の転換を迫られる静岡県西部産業界からは、医・工・情報分野の融合による新領域の開拓を狙う浜松の新大学への期待は大きい。一方で静岡の新大学の目指す方向性は判然とせず、内部の不安がくすぶる。
 6月末の記者会見で構想を表明した両学長は、再編の狙いを機能強化であると明言。法人統合による組織規模の拡大と並行し、中部と西部で分断されていた静大は地域、機能別に再編することで、各地域で小回りの利く大学へ転換することが未来の大学を先取りするとの狙いを示した。(浜松総局・青島英治)
〈2018.07.20 静岡新聞朝刊「解説主張しずおか」を編集〉※いずれも肩書は当時のもの

2019年 法人統合に合意、東西2大学への再編目標

 静岡大(石井潔学長)と浜松医科大(今野弘之学長)は2019年3月、運営法人を統合し、大学を再編することで合意した。両学長は静岡市内で記者会見を開き「法人化の相乗効果で得られた資源で大学機能を強化できる。知の拠点として、地方創生を主体的に担っていける」と意義を述べた。

合意書に署名し握手を交わす石井潔静岡大学長(左)と今野弘之浜松医科大学長=29日午後、静岡市内
合意書に署名し握手を交わす石井潔静岡大学長(左)と今野弘之浜松医科大学長=29日午後、静岡市内
 合意書によると、2021年度をめどに新法人・静岡国立大学機構(仮称)を設置。静大浜松キャンパスと浜医大による浜松市の大学と、静大静岡キャンパスを中心とした静岡市の大学に再編し、22年度からの入学者受け入れを目指す。目的として、新たな教育・研究分野の開拓と人材育成▽経営資源の効率的運用-などを掲げた。確認書を付け、教職員の待遇や各部局の運営経費が現時点の水準を下回らないよう保証することや、医学部付属病院の収益・損失は原則として院内で処理することを盛り込んだ。
  再編を巡り、静大静岡キャンパスでは反対も根強い。石井学長は会見で、確認書に「(大学の将来像・振興策の検討は)教職員との丁寧なコミュニケーションと合意に基づき進める」との項目を入れた点に触れ、「感情論を乗り越え、生産的な議論をしていきたい」と強調。浜医大の今野学長も一般教養の重要性を挙げ、静岡側の教員に「浜松地区の新大学に協力していただきたい」と求めた。

■期待感は「西高東低」 静岡側「メリット見えない」


 光医工学分野で連携強化が始動している浜松地区で期待が高まる一方、静岡地区ではビジョンが見えにくいとして反対があり、課題は残る。合意書に、新大学名や新法人の本部設置場所などは盛り込まれず「今後早急に決定する」「今後早急に調整する」といった文言も並んだ。
  ある浜医大関係者は「医学と工学の連携で新産業が立ち上がり、情報との連携によるAI化で新しい医療を展開できる。教育との連携ではいじめや虐待への新たな対応が可能になる」と合意を歓迎した。静大情報学部(浜松市)の教授も「変化を恐れず、挑戦する姿勢こそ静大の強み。大きな飛躍の可能性が期待できる」と喜んだ。
  ただ、工学部、情報学部がある静大浜松キャンパスと浜医大で構成される浜松地区の新大学に比べ、静大静岡キャンパスが中心となる静岡地区の新大学には「統合メリットが見えない」(国立大学改革強化推進補助金に関する検討会の所見)との指摘がある。静大静岡キャンパスの教職員や学生らからは、案の再考や丁寧な合意形成を求める声も相次ぐ。
〈2019.03.30 静岡新聞朝刊を編集〉※いずれも肩書は当時のもの

2021年 再編延期を発表、静岡側の反対根強く

 静岡大の石井潔学長と浜松医科大の今野弘之学長は2021年1月、静岡市駿河区の静大静岡キャンパスで記者会見し、21年度に運営法人を統合して両大を再編し、22年度から新大学の入学者受け入れを目指すとした統合・再編計画を延期すると発表した。静大と静岡市が設けた協議会で再編の在り方や将来像の議論が続く中、石井学長は「無理して予定通りの日程で進めるより、延期する方が賢明と判断した」と説明した。

  石井学長は延期の期間について、(静岡市と静大が設置した)静岡大将来構想協議会の結論時期が決まっていない段階では具体的には申し上げられないとした上で「あまりゆっくり何年もかけてとは考えていない」と述べた。今野学長は「22年度に新入生を迎えることができなくなることは極めて残念だが、より良い形で統合再編を実現したい」とした。静大の石井学長は3月末で退任し、2021年4月からは再編反対の立場を取ってきた日詰一幸人文社会科学部長が後任の学長に就いた。
 統合・再編に際し、文部科学省はこれまで「地域の理解」を得ながら進めていくよう求めてきた。 静岡市内では、静大静岡キャンパスを中心に「総合大学としての多様な教育環境が失われる」などといった根強い反対論がある。一方、浜松市では再編への期待が高く、市や両大、経済界の代表らでつくる浜松地区大学再編・地域未来創造会議が発足した。    
〈2021.01.30 静岡新聞朝刊を編集〉※いずれも肩書は当時のもの

2022年 静大学長「大学統合案」言及/浜医学長「厳しい」

 静岡大と浜松医科大の運営法人統合・大学再編を巡り、静大の日詰一幸学長は2022年7月5日、浜松市が開いた浜松地区大学再編・地域未来創造会議(座長・鈴木康友市長)で「個人的見解」とした上で、1法人の下に1大学を置く「大学統合」の選択肢もあり得るとの考えを新たに示した。複数の関係者によると、静岡県内唯一の国立大として両大を統合する方が、再編よりも教育研究の面で一層の相乗効果を発揮できるとの判断がある。今後、大学統合を目指す場合は、新たな合意書を結ぶ必要性が生じるとみられる。

浜松医科大の今野弘之学長(左)と静岡大の日詰一幸学長
浜松医科大の今野弘之学長(左)と静岡大の日詰一幸学長
 日詰学長は会議の席上、18歳人口の減少が続く中、大学側も生き残りをかけて規模拡大などの改革を進めていくべきとの認識を表明した。「真に競争力のある大学をつくるためには、将来的に両大学が統合されて一つの大きな大学になる必要がある」と踏み込んだ。意見交換では両大の協議停滞について、出席者から懸念や厳しい声が相次いだ。鈴木市長は日詰学長に対し、今秋予定の次回会合で統合・再編に向けた具体的なスケジュールを盛り込んだ工程表を提示するよう求めた。
 一方、浜松医科大の今野弘之学長(69)は7月14日までに静岡新聞社の取材に応じ、日詰学長が5日の会議で言及した1法人の下に1大学を置く大学統合案には「実現は厳しい」との認識を示した。
 今野学長は地元の浜松市側の浜松地区新大学への期待は大きいとし「尖鋭的で競争力を持つ大学の創設が必要」と改めて強調。「(2019年3月の)合意書に基づく統合・再編を目指すスタンスは変わらない」と述べた。
 大学統合案については、過去の両大の協議で1大学の下に医学部を置く形の再編は受け入れられないとの浜医大の立場を伝え、議論から除外した経緯を指摘。同案は事実上、合意の後退に当たるとして「浜松医大の関係者は非常に驚くとともに落胆したと思う」と語った。
〈2022.07.06、07.15 あなたの静岡新聞を編集〉