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参院選静岡選挙区 18日間の戦い振り返ります

 参院選は18日間の選挙戦が終わりました。8日には安倍晋三元首相が応援演説中に銃撃され死亡する衝撃的な事件が発生しました。事件を受け、街頭演説を中止したり規模を縮小したりする陣営も出るなど異例の選挙戦をたどりました。静岡選挙区の候補者の戦いを振り返ります。
 〈キュレーター:編集局未来戦略チーム 寺田将人〉

初日 過去2番目に多い8人による激戦でスタート

 参院選が22日公示され、静岡選挙区(改選数2)は7人が立候補を届け出た。午後にも1人が届け出る予定で、過去2番目に多い8人による激戦となる見通し。政党公認候補は自民、共産、NHKの各党の4人で、残り4人は諸派、無所属。与野党で議席を分け合ってきた同選挙区では異例の構図となった。各陣営は体制を整え、18日間の選挙戦に臨む。

有権者に政策を訴える立候補者=22日午前、静岡市葵区
有権者に政策を訴える立候補者=22日午前、静岡市葵区
 共産党新人鈴木千佳候補(51)は街頭演説を中心に、物価高対策と憲法9条を生かす平和外交を訴える。課題とされる若者への浸透を目指し陣営にネットチームを立ち上げ、LINE(ライン)やインスタグラムでも発信を始めた。
 無所属現職山崎真之輔候補(40)=国民推薦=は連合静岡の支援を受け議席死守を目指す。推薦した国民民主党は静岡選挙区を「重点区」と位置付け、公認候補並みの応援体制を敷く。陣営幹部は「国会の即戦力」とアピールする。
 自民党新人若林洋平候補(50)=公明推薦=は国会議員や県議、市議らの全面支援を受け、徹底した組織戦を展開する。連立を組む公明党のほか、企業や友好団体の組織票を固める「オーソドックスな選挙」(陣営)でトップ当選を狙う。
 無所属現職平山佐知子候補(51)は県内各地での遊説や個人演説会と並行し、企業や団体の集会に参加するなど、これまで続けてきた有権者の顔が見える距離での活動を軸に戦う。「無所属」を前面に出し、党派を超えた得票を目指す。
 NHK党の舟橋夢人候補(56)と堀川圭輔候補(48)の2新人は選挙カーで各地を回り、まずはポスター貼りに専念する。期間中は交流サイト(SNS)を駆使し、舟橋氏はライブ配信、堀川氏は行動予定の発信をそれぞれ計画している。
 諸派新人の山本貴史候補(52)はSNSを使った選挙活動で無党派層の票の掘り起こしを狙う。
〈2022.06.22 あなたの静岡新聞〉

公示後初の週末 街頭活動で有権者に直接主張

 参院選は25日、公示後初の週末を迎え、静岡選挙区(改選数2)でも候補者が選挙活動を繰り広げた。全県を一つの選挙区として実施される参院選は範囲が広く、有権者に直接主張を訴えられる街頭活動は貴重な機会。各陣営はさまざまな戦略を描き、県内各地を駆け巡った。

支援者とグータッチをする立候補者(左)=25日午後、県内
支援者とグータッチをする立候補者(左)=25日午後、県内
 共産党新人の鈴木千佳氏(51)は県中部で選挙戦を開始したため、週末にかけて大票田の浜松市に入った。生活者に主張を届けようと同市の薬局やスーパーで街頭演説を行い、「党の一番の政策は消費税の5%減税。既に91の国と地域が実施している」と訴えた。「自民党は防衛費増額を財源も示さず勝手に進めようとしている一方で、暮らしを守る消費減税ができないと言うのはあんまりだ」と与党の姿勢を批判した。
 無所属現職の山崎真之輔氏(40)=国民推薦=は多くの買い物客が集まる静岡市の商業施設や繁華街で街頭に立った。物価高の現状や対策を訴えた上で、野党の力が必要だと強調し「静岡で野党のうねりを巻き起こす」とアピールした。国会で働いた8カ月間も振り返り「形になって成果が出たものもあるが、もっと国民のために成果を出さなければならない。一緒に新しい地域づくりをしていこう」と支持を呼びかけた。
 自民党新人の若林洋平氏(50)=公明推薦=は昨年10月の補欠選挙で苦戦した県西部へ。磐田市のJA遠州中央本店には約150人が集まり、動員力を見せつけた。「食料の安全保障が一番大事。中小・兼業農家に光を当て、持続可能な農業を支えていく」と声を張り上げた。御殿場市長時代に農産物のブランド化や荒廃農地の利活用に取り組んだ経験もアピールした。県外からも党国会議員が応援に駆け付けた。
 無所属現職の平山佐知子氏(51)は浜松市天竜区の地域住民と交流した。家族のだんらんや観光客の旅行気分を壊さないようあえて中山間地で活動し、屋外でのマイクを使った演説ではなく、自ら商店街を歩いた。住民から過疎化や不便な交通状況などの課題を聞くと「国と地域で連携して解決していく」と強調。グータッチを交わし「人が温かく大好きなまち。この地域でずっと暮らせるよう守っていきたい」と訴えた。
 NHK党新人の舟橋夢人氏(56)は浜松市で、同党新人の堀川圭輔氏(48)は沼津市でそれぞれポスター貼りをしながら街宣車を走らせた。諸派新人の山本貴史氏(52)は静岡市葵区の青葉公園で教育、政治の改革を訴え「現状を打破するため日本の真実を知ってほしい」と呼びかけた。無所属新人の船川淳志氏(65)は特に活動をしなかった。

7月8日 安倍元首相銃撃 候補者相次ぎ活動自粛

 安倍晋三元首相の銃撃事件を受け、参院選静岡選挙区(改選数2)の立候補者は8日、午後から街頭演説を取りやめるなど選挙活動を相次いで自粛した。選挙戦最終日の9日は候補者8人のうち4人が活動を見合わせ、残る4人は予定通り実施することを決めた。

自民党の安倍元首相が銃撃された現場付近=8日午後0時23分、奈良市の近鉄大和西大寺駅前
自民党の安倍元首相が銃撃された現場付近=8日午後0時23分、奈良市の近鉄大和西大寺駅前
 自民党新人の若林洋平氏(50)=公明推薦=は県東部2カ所で予定していた街頭演説を取りやめた。沼津市では若林氏とスタッフが集まった支援者に「事件を受けて中止になりました」と呼び掛けた。若林氏は取材に「有権者の判断材料がなくなるようなことはあってはならない」と憤った。
 昼すぎの三島市の街頭演説では、応援に駆け付けた国会議員が銃撃事件に触れ、聴衆から驚きの声が上がった。「ガンバロー三唱」も急きょ取りやめた。陣営は9日の街頭演説の中止を発表。選挙期間中は党幹部や閣僚らが相次ぎ応援に訪れており、関係者は「いつどこで起きてもおかしくない事件。警備を厳重にしても完全に防ぐのは難しいだろう」と困惑した。
 無所属現職の平山佐知子氏(51)は焼津市の街頭演説で「力によって言論が封殺されてはいけない」と述べた。聴衆の安全を確保するため、事件後の街頭演説は規模を縮小。男性陣営スタッフが常に護衛に付き、平山氏本人と市民の身の安全を確保した。9日の街頭演説は中止する。
 無所属現職の山崎真之輔氏(40)=国民推薦=は静岡市駿河区の街頭演説で「正々堂々と有権者に自分の思いを伝える。テロに屈することを許してはならない」と強調。共産党新人の鈴木千佳氏(51)は浜松市中区の街頭演説で「言論を暴力で封殺する、民主主義の社会において絶対にあってはならないこと。断固抗議する」と訴えた。
 山崎氏と鈴木氏の陣営は「ここで選挙運動を中止すれば蛮行に屈することになる」などとして、いずれも9日は予定通り活動する。
 NHK党新人の舟橋夢人氏(56)と堀川圭輔氏(48)は9日の街頭演説を中止する。諸派新人の山本貴史氏(52)と無所属新人の船川淳志氏(65)は予定通り実施する。
〈2022.07.09 あなたの静岡新聞〉

最終日 言論に対するテロに屈しない 通常通り街頭演説行う陣営も

 参院選静岡選挙区(改選数2)は9日、18日間の選挙戦に幕を下ろした。8日に安倍晋三元首相が応援演説中に銃撃され死亡したことを受け、模倣犯が出た場合に聴衆の安全を確保できないと街頭演説を中止したり規模を縮小したりする陣営、言論に対するテロに屈してはならないと通常通り街頭演説を行う陣営と対応は分かれた。マイクを握る、握らないの差はあれど、各陣営はさまざまな手法で有権者に最後の一声を届けた。

最後の訴えを終えた候補者(手前左端)と共に気勢を上げる支援者ら=9日午後、浜松市中区
最後の訴えを終えた候補者(手前左端)と共に気勢を上げる支援者ら=9日午後、浜松市中区
 共産党新人の鈴木千佳氏(51)は静岡市葵区の街頭演説で選挙戦を締めくくった。冒頭で事件に触れ「言論を暴力で封殺する行為は許されない。一票の選択で政治を民主的に変えるのが日本の仕組みだ」と強調した。ロシアのウクライナ侵攻を契機とした改憲や防衛費増額の議論に反対の立場を示し、「平和と希望ある政治をつくる」と訴えた。
 無所属現職の山崎真之輔氏(40)=国民推薦=は地元の浜松市中区で最後の街頭演説を行った。「忖度(そんたく)する政治から生活者のための政治に変えないといけない」と訴え、「当選まであと一歩届いていない。助けてほしい」と支援を求めた。「テロには屈しない」と通常の選挙運動にこだわり、「頑張ろう三唱」で締めくくった。
 自民党新人の若林洋平氏(50)=公明推薦=は胸に喪章をつけ、選挙カーで県西部と中部を回った。街頭演説を取りやめる一方、「支援者が集まる可能性がある」(陣営)として予定した会場に足を運び、謝意を伝えた。静岡市葵区ではマイクを握って“最後の訴え”を行い、「蛮行に屈することなく最後まで戦い抜く」と呼び掛けた。
 無所属現職の平山佐知子氏(51)は聴衆の安全を第一に考え、予定していた街頭演説と集会を中止に。知らず集まった支援者には平山氏が直接事情を説明した。数人が訪れたJR掛川駅では、演説こそしなかったものの1人ひとりの話に耳を傾け、「現場の声を国に届けたい。ぜひ支援を」と思いを訴え、グータッチを交わした。
 諸派新人の山本貴史氏(52)はJR静岡駅北口で演説。安倍氏への哀悼の意を示し、政治改革などを訴えた。NHK党新人の舟橋夢人氏(56)と堀川圭輔氏(48)はいずれも街頭演説を行わず、県外で活動した。舟橋氏はインターネット上で情報発信し、堀川氏は党本部の街宣活動に参加した。無所属新人の船川淳志氏(65)はJR静岡駅北口で街頭演説を行い、国会改革や地域活性化を訴えた。
〈2022.07.10 あなたの静岡新聞〉
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