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「空飛ぶ車」いつ乗れる? 実用化まであと一歩

 SF映画などではお馴染みの「空飛ぶ車」。いよいよ現実が追いつきつつあります。2025年開催予定の大阪・関西万博での活用を目指し、実用化が進んでいます。どんな車が登場するのでしょうか。開発メーカーとの協業を発表したスズキの話題や静岡県内の動向も合わせてご紹介します。
 〈静岡新聞社編集局未来戦略チーム・吉田直人〉

スズキとベンチャー企業が連携 2025年事業化へ開発急ぐ

 スズキとベンチャー企業のスカイドライブ(愛知県豊田市)は22日までに、「空飛ぶ車」と呼ばれる有人小型モビリティの実用化に向けた連携協定を締結した。機体開発や海外市場開拓などで協業を検討する。スカイドライブは完成車メーカーと初めて連携し、同社が掲げる2025年の事業化に向けて軽量、小型の機体開発を急ぐ。

開発中の「空飛ぶ車」の試験機(スカイドライブ提供)
開発中の「空飛ぶ車」の試験機(スカイドライブ提供)
 スカイドライブは2人乗りの電動垂直離着陸機を開発中。25年大阪・関西万博の会場輸送での活用を目指し、21年には国土交通省に国の安全審査の手続き「型式証明」を申請した。国内で飛行実験を進める1人乗りの試験機は全長約4メートル、重量250キロ(バッテリーを含む)。実験では高さ5メートル以下の施設内で約4分間の浮上に成功したという。
 今後、「世界最小クラス」(同社)という開発中の機体に、スズキが得意とする小型車の開発、製造技術が活用できるか検討する。スカイドライブは28年以降の海外進出も計画しているため、インドや東南アジアなどの市場開拓での連携可能性も探る。同社の担当者は「新興国で社会課題となっている交通渋滞の解決にもつなげたい」と展望する。
 スズキは「四輪、二輪、マリンに続く新たなモビリティ事業を検討し、多様な選択肢を顧客に提供したい」としている。
〈2022.03.23 あなたの静岡新聞〉

大阪・関西万博での活用目指す 法整備、運行ルールを議論

 経済産業省と国土交通省は21日(※2021年5月)、人を乗せて空を移動する「空飛ぶ車」の実用化を目指す官民協議会を開き、2025年大阪・関西万博の会場輸送で活用する目標を確認した。本格導入に向け、法整備や技術開発など課題や具体策を検討する。

「空飛ぶ車」のイメージ(経産省提供)
「空飛ぶ車」のイメージ(経産省提供)
 万博の輸送手段としての活用を集中的に議論する、官民の作業部会の設置も公表した。6月にも初会合を開き、離着陸場の整備や運航ルールについて話し合う。関西空港などから万博会場の人工島・夢洲がある大阪湾周辺で、2~5人乗りの機体を飛行させることを目指す。富裕層らの利用を見込む。
 これまでの議論では、航空法に関し、機体の安全性の基準作りのほか、操縦者や整備者の技能証明の方法が課題となっている。また、適切な運航管理や飛行高度規制の在り方、動力源のバッテリーの搭載基準などの策定も急務だ。
 今後の目標では23年ごろに2人乗りで湾岸部の限られたエリアや離島部を飛び、飛行距離は10キロ程度を想定。本格導入を目指す30年代には、機体を大型化して自動操縦の機能も持たせ、都市部などに輸送地域を拡大することを目指す。また、災害時の救急搬送にも生かしたい考えだ。
〈2021.05.22 静岡新聞朝刊〉

静岡県内の動きは? 参入推進へ方策議論、産学官でワーキンググループ

 静岡県内の産学官で次世代無人航空機や空飛ぶ車の産業分野への参入を目指すワーキンググループ(WG)が8日(※2月)、設置された。来年度末までに3、4回の会合で現状や課題を共有し、地域企業の参入促進に必要な方策などを報告書にまとめる。

次世代無人航空機や空飛ぶ車の産業分野への参入を目指すワーキンググループの初会合=8日午後、県庁
次世代無人航空機や空飛ぶ車の産業分野への参入を目指すワーキンググループの初会合=8日午後、県庁
 WGは航空宇宙関連の事業を手掛ける企業や大学など9団体で構成する。初会合では、経済産業省や国土交通省の担当が無人航空機や空飛ぶ車の利活用、産業振興に向けた国の取り組みを説明した。航空法改正で有人地帯での目視外飛行を12月に解禁予定だとしつつ、安全面での課題に運航管理システム、衝突回避技術の開発などを挙げた。
 空飛ぶ車の開発が欧米や中国、国内などで進んでいる状況、機体や関連サービスの市場規模が2040年に154兆円に達する予測も紹介した。
 メンバーの地元企業からは、社会実装に向けて不透明な部分が多く、型式証明に対する質問が複数出た。国内での開発推進に向けた国の支援強化を求める意見もあった。
〈2022.02.09 あなたの静岡新聞〉
地域再生大賞