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朝旅に朝食...三島の街再発見 「朝」キーワードににぎわい創出へ

 街中に豊かな自然と歴史、文化的な資源が点在する三島市を「朝の街」として売り出す取り組みが始まっています。朝日を浴びて輝く源兵衛川の清流、富士山など日中とは違う景色を見ながら各地を巡り、三島の魅力を再発見する“朝旅”。飲食店も地元食材を使った朝食を開発するなど、「朝」をキーワードにした街のにぎわい創出を目指しています。
 〈三島支局・金野真仁、東部総局・山川侑哉〉

午前5時半出発 6キロ2時間の〝朝旅〟

 午前5時半、辺りはまだ暗い三嶋大社の西門に約30人が集まっていた。NPO法人地域活性スクランブルフォーラムが主催する「みしま朝散歩」は、本殿の参拝から始まる。その後、桜川沿いを歩いて楽寿園南側の源兵衛川へ。水のせせらぎ、鳥のさえずりを感じながら、川の中に並ぶ飛び石を渡って進んでいく。

                  源兵衛川の飛び石を渡る参加者
源兵衛川の飛び石を渡る参加者
 

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      三嶋大社の本殿を参拝して出発する朝散歩
 
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 三島が「水の都」と呼ばれるゆえんは驚くほど透き通った清流。富士山からの湧き水が各地で自噴し、川底もはっきりと見える透明な水は地元住民らの努力で守られてきた。水中花の絶滅危惧種ミシマバイカモがあちこちに植えられ、梅のようなかれんな花を咲かせる。「新幹線駅も近い市の中心部に、これほど豊かな自然があるのは三島の自慢」と参加者の一人。
 広小路にさしかかると、老舗うなぎ料理店から漂う炭火焼きのにおいにおなかが鳴る。周囲が少しずつ明るくなり始めたころ、「時の鐘」を通過して再び源兵衛川沿いの散策路へ。見上げる線路を伊豆箱根鉄道の電車が通過し、木々の隙間から朝日がこぼれる。
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富士山ビュースポットを歩く
 
 折り返し地点の中郷温水池付近では、カワセミを狙う写真家がレンズを向けていた。昇り始めた太陽に照らされる富士山を望み、桜並木も見頃。散歩に同行していたカメラマンのシャンディさん(36)がスマホ撮影のコツをレクチャーし、参加者が春の訪れを写真に収めていた。
 約6キロのコースを歩き終えて到着した同市の蓮馨寺で講話を聞いた後、近くの飲食店「登喜和」で朝食をいただく。時刻は午前8時過ぎ。心地よい疲労と充実感に加え、まだ一日が始まったばかりという“お得感”が何となくうれしい。
 
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朝散歩の後、朝食を楽しむ参加者

 

三島の朝食開発 和洋中5店舗「朝の街」発信へ

 歴史や自然が豊かな三島市を「朝の街」として売り出すNPO法人「地域活性スクランブルフォーラム」はこのほど、市内の飲食店が開発した朝食メニューの試食プロモーション会を同市のフランス料理店「おんふらんす」で開いた。当面は毎月のペースで開催する朝のイベントに合わせ、各店の朝食を参加者に提供する予定。

地元食材を使って開発した朝食の試食会=三島市のおんふらんす
地元食材を使って開発した朝食の試食会=三島市のおんふらんす
 メニューを考えたのは和洋中5店舗で、特産の箱根西麓三島野菜など地元食材を使った朝食をそれぞれお披露目した。市内を巡る「朝散歩」の後に提供する朝食を想定し、おなかに優しい中国がゆ、季節野菜のスープ、焼き魚などが並んだ。料理人は「1日をしっかりがんばれるよう、栄養とカロリーが取れるメニューにした」などと思いを語った。
 市内では三嶋大社や源兵衛川などを巡る朝のウオーキングが企画され、スクランブルフォーラムと「みしま朝散歩の会」がそれぞれ参加者を募って開催している。いずれは前泊を含めた観光商品として三島の“朝旅”をPRする考えで、地元ならではの朝食も目玉の一つ。井村大輔理事長は「夜にぎわう地域はあっても、朝を売りにする街は少ない。コロナ禍のピンチをチャンスに変えたい」と語った。
〈2022.03.6 あなたの静岡新聞〉
地域再生大賞