静岡市役所「途切れた点字ブロック」長年放置 改善要望も対応せず「バリアフリー意識どこへ」

 静岡市葵区の市役所静岡庁舎新館・葵区役所内で、視覚障害者を導く点字ブロックが有人の総合案内に向かう途中で切れ、点字などを施した館内マップ「触知案内図」も誤ったまま長年放置されていることが、24日までの取材で分かった。視覚障害者らが数年来にわたって改善を要望しているのに同市は対応せず、関係者は「バリアフリーの意識や障害者への合理的配慮が感じられない」と不満を漏らす。

庁舎内の触知案内図を確認する土居由知さん。総合案内(左奥)までの点字ブロックは途切れている=23日午後、静岡市役所静岡庁舎新館・葵区役所
庁舎内の触知案内図を確認する土居由知さん。総合案内(左奥)までの点字ブロックは途切れている=23日午後、静岡市役所静岡庁舎新館・葵区役所

 静岡庁舎前の歩道から続く点字ブロック。御幸通り側と青葉通り側のどちらの出入り口から建物に入っても、数メートル間隔で途切れ途切れになり、中央付近の総合案内までつながっていない。想定される通り道の2~3割程度しか敷かれてなく、さらに途中には現在、休憩用のベンチが並ぶ。「ひどい状態。最初から庁舎内は1人で歩けないようなもの」。県視覚障害者情報支援センターの土居由知さん(52)=同市葵区=は憤る。
 出入り口付近と2階に置かれた触知案内図は、現在位置を示す点字と突起のサインが図内の2地点に付いていたり、上下のエスカレーターが下りしか表示されていなかったりする誤りが散見される。健常者向けに印刷された案内図だけを更新して点字などは改修せず、数年前の部署表記のままになっている部分も数多くあった。
 土居さんによると、少なくともおととしから数回にわたり、市の施設管理や福祉の部門に点字ブロックの改修を要望。市視覚障害者協会の会員らも個別に要請するが、土居さんは「これまで一向に変わる様子がない」と対応を疑問視する。
 取材に対し、施設管理する市管財課は度重なる改善要望に応えてこなかった理由を「課内全員に連絡が伝わっていなかった」などとした。その上で同庁舎がバリアフリー法の趣旨に沿った対応が不十分なことを認め、「案内図の不備も含めて早急に改善を検討したい」としている。

 ■「認識不足で怠慢」県立大・立花教授
 静岡市役所静岡庁舎新館・葵区役所内で、点字ブロックや触知案内図の不備が放置されていることについて、県立大短期大学部の立花明彦教授(障害者福祉)は「障害者差別解消法で定められた『環境の整備』に反すると言っても過言ではない」と指摘。自身も強度の弱視の立花教授は市のこれまでの対応を「認識不足と怠慢が露呈した」と批判する。
 多様な市民が集う市役所庁舎では視覚障害者が適切に人的支援を受けられる態勢が必要。同法に合わせ、視覚障害者を交えた庁舎内のバリアフリーの点検も不可欠で、粗雑な管理状態は「作業を怠ったと言われてもやむを得ない」と断じる。
 また同市は2016年、同法に準じた対応を市職員に求める手引きも作成している。立花教授は「マニュアルに基づく実行の実態も速やかに確認する必要がある」と強調した。

 <メモ>静岡市役所静岡庁舎新館・葵区役所内の点字ブロックは、1986年の建設時から総合案内までつながっていなかったとみられる。市管財課によると、追加工事の箇所はあるが敷設のレイアウトは大きく変更していないという。一方、旧清水市が83年に建設した清水庁舎・清水区役所は現在、総合案内まで点字ブロックが敷設されている。また、2005年に建てられた駿河区役所も同様の点字ブロックを完備している。

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