リニア着工「地元理解前提」 国交省、流域10市町に説明

 国土交通省は21日、リニア中央新幹線南アルプストンネル工事に伴う大井川流量減少問題を巡り、流域10市町の首長らとの意見交換会を島田市で開いた。会合は非公開。出席者によると、国交省側が市町に「地元住民の理解、協力が得られなければ着工できない」との見解を示した。染谷絹代島田市長は終了後、JR東海に国交省の見解と同様の対応を求める要望書を、10市町で提出する方針を明らかにした。=関連記事22面へ

大井川流域10市町の首長らが出席して行われた国土交通省との意見交換会=21日午後、島田市
大井川流域10市町の首長らが出席して行われた国土交通省との意見交換会=21日午後、島田市

 同省鉄道局の上原淳局長と江口秀二技術審議官が出席し、7日に開いた国交省専門家会議での座長コメントを解説する資料を配って議論の内容を説明した。上原局長は「地元の理解は着工の前提条件」と述べ、具体的な事例として自治体条例に基づく自然環境保全協定の締結を挙げた。
 座長コメントについては「不確実性がある流量予測に基づいていて誤解を招く」と県が反発していて、北村正平藤枝市長ら複数の出席者から「是正されていない」「慎重にやってほしい」など批判の声が出た。染谷市長はこの日の議論で「理解が深まった」としつつも「専門家会議は有識者の議論の結果を出す場所で、着工について結論を出すのではない」と強調した。
 上原局長は「文書だけではなく、直接質問を受けながら説明する手法を取っていく」と述べ、今後も流域市町との意見交換を続けていく考えを示した。

 ■流域「中間まとめ拙速」 専門家会議進行 国と相違
 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の流量減少問題を巡り、21日に島田市で開かれた流域10市町の首長らと国土交通省との意見交換会。国交省の専門家会議が次回会議で水問題に関する中間取りまとめを予定していることなどに関し、流域市町と国交省の間で見解の食い違いが浮き彫りになった。

 非公開の会合だったため、終了後に国交省鉄道局幹部と流域首長がそれぞれ記者団に議論の内容を説明した。
 藤枝市の北村正平市長は中間取りまとめに関し「拙速にやるのはやめた方がいいと発言した」と述べた。しかし、国交省鉄道局の江口秀二技術審議官は「(意見交換会で)時期尚早という話はなかった。取りまとめの作業は当然必要になってくる」と次回の専門家会議で取りまとめる方針を堅持した。
 中間取りまとめに関してはこれまでに、川勝平太知事も「早すぎる」との見解を示している。
 専門家会議後に非公開で協議して作成する文書「座長コメント」が改善されていないことについては、吉田町の田村典彦町長が「コメントは誤解がつきまとうので、なくてもいい」と指摘。国交省側は「座長コメントをさらに(首長に)解説する取り組みが必要で、その点は理解いただけた」と受け止めた。
 同省の上原淳鉄道局長は「会議のプロセスについて理解を得られた」と述べたが、牧之原市の杉本基久雄市長は「議論の内容がそういうことだと理解しただけで、水が確実に戻る、納得できるということではない」とくぎを刺した。

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