国交省「攻め」に転換 静岡県と協議進まず、意見積極発信

 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の流量減少問題を議論する専門家会議の設置を巡り、県と国土交通省の協議が進まない中、国交省が“攻め”の姿勢に転じた。これまで会議の人選案など水面下で慎重に交渉を進めてきたが、3月に入ってからは報道陣の前で県への疑問や意見を積極的に発信。同省幹部は「表舞台で理屈で闘う」と話し、同省と県の違いを前面に出して県民の判断を仰ぐ。

専門家会議の人選を巡る協議後に記者会見する難波喬司副知事(左)と国土交通省の江口秀二技術審議官=23日、国交省
専門家会議の人選を巡る協議後に記者会見する難波喬司副知事(左)と国土交通省の江口秀二技術審議官=23日、国交省

 専門家会議の人選を議論した23日の国交省と県の協議。「静岡県はリニアの早期実現に協力する立場だったと理解している」。難波喬司副知事と会談した同省の水嶋智鉄道局長は冒頭、報道陣の前であえて念押しした。
 矛先は明らかに川勝平太知事に向く。人選案は2月、水嶋氏が知事と静岡市内で2回にわたって会談し、直接協議を試みた。県の感触をつかみ、人選案に意見を取り入れて専門家会議の開催にこぎ着ける狙いがあったが、知事ははっきりした見解を示さないまま3月13日の会見で委員候補の公募を発表し、即日実施に踏み切った。同省側は唐突な発表と受け止め「知事は本当は議論を前に進める気が無い」との不信感が省内に広がった。
 同省からは焦りもにじむ。昨年10月には藤田耕三事務次官が県庁に出向き、今年は水嶋鉄道局長が知事と会談を重ねるなど、あの手この手を繰り出してきたが、手応えは鈍いまま。事業主体はJR東海とはいえ、目標の2027年開業が遅れれば、沿線地域や企業活動への影響は大きいとみている。
 県は23日の協議で、公募した委員候補を4月中旬に国交省に提示するとした。記者会見した国交省の江口秀二技術審議官は「4月中旬になると1カ月先。水問題が大事なのは分かっているが、一方でリニアの早期実現という目的もある」と述べ、県のスピード感に疑問を呈した。
 難波副知事は、国交省が県の公募を無視して会議を立ち上げた場合の対応を会見で問われ、「そんなことはないと思っている。信頼関係はある」とけん制した。

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