JRの「科学的根拠」疑問視 静岡県に厳しい対応を求める声 島田で地下水利用対策協【大井川とリニア】

 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の水問題を巡り、下流域の地下水利用者でつくる大井川地域地下水利用対策協議会は16日、県の担当者を招いてJR東海との協議状況に関する説明を聞いた。JRが示す科学的根拠を疑問視する声が地下水利用者から相次ぎ、県に厳しい対応を求める意見が上がった。

県の担当者に要望を伝える大井川流域の利水者=16日午後、島田市内
県の担当者に要望を伝える大井川流域の利水者=16日午後、島田市内

 JRが300万~500万トンと試算する山梨県への湧水流出量に関し、出席者は「本当にその量で済む裏付けがあるのか」と質問。流出した水を10~20年かけて戻すJRの提案について「国交省専門家会議が評価したという話だが、子どもでもおかしいと分かる」とただし、県担当者に「(JRに)強く言ってほしい」と求めた。
 上流に降った雨が地下に浸透したり地表に湧き出たりしながら、下流に流れ下る状況を描いたJRの流域概念図に関しては「どんな数値を根拠に科学的と言っているのか」という声もあった。県担当者は地下水の成分分析の結果から、下流の地下水が上流の地下から直接供給されていないと分かったと応じた。
 下流域に立地する養鰻業や酒造業の経営者や、食品や薬品などを製造する工場の担当者ら185人が出席した。地下水利用者を対象に県の担当者が説明するのは初めて。
 (政治部・大橋弘典、島田支局・池田悠太郎)

 県理事「着工前の現状把握を」
 大井川の地下水利用者にJR東海との協議状況を説明した県くらし・環境部の織部康宏理事は、中下流域の地下水に影響が生じた場合、リニア工事との因果関係の立証が難しいとして「着工前の現状を把握し、工事後に比較できるように整理する必要がある」との見解を示した。
 織部理事は工事の影響について「地下水の流れを切断するほか、重金属などの有害物質が流出する可能性がある」と強い懸念を示した。影響が時間を空けて生じる恐れもあるとした上で「原因特定の方法と(影響が出た場合に)どのような形で補償するのかを事前に決定することが重要だ」と説いた。
 大井川下流域では約410の事業所が約千本の井戸を堀り、地下水を利用している。

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