酪農王国オラッチェ(函南町)木村岳司さん ドイツで醸造を習得 「職人」の気構え実践【しずおかクラフトビール新世代⑩】

 ビールの本場ドイツのベルリン工科大で醸造を学び、公的資格「ブラウマイスター」を取得した酪農王国オラッチェ(函南町)のビール工房工場長木村岳司さん(45)は、「職人」という言葉に特別な思いを込める。「顧客の好み、与えられた条件に従ってベストの仕事をするのが職人。そのためにはビールづくりの全てを知っておかないと」

タンクから発酵中のビールを取り出す木村岳司さん=16日、函南町の酪農王国オラッチェ
タンクから発酵中のビールを取り出す木村岳司さん=16日、函南町の酪農王国オラッチェ
ピルスナー(左)と伊豆エール(右)
ピルスナー(左)と伊豆エール(右)
タンクから発酵中のビールを取り出す木村岳司さん=16日、函南町の酪農王国オラッチェ
ピルスナー(左)と伊豆エール(右)

  自分のつくりたいビールを追求するのも醸造家の在り方として認める。一方で、ドイツの伝統的なものづくりの考え方に共鳴する。「販路や会社の方針などに対して柔軟でありたい。ドイツで、そういう人間として育てられたから」
  国内の大学では法律を学んだ。在学中にドイツ人留学生らを通じて、ビールの多様性を知り、醸造への憧れがふくらんだ。「ビール職人はカッコいい。その一念だった」。資金をため、26歳で渡独。現地の大学入学に必要だったため、中西部の都市ボーフムのビール工場などで約1年半修業した。
  2005年10月、ベルリン工科大ビール醸造学部に入学。驚いたのは、講義の多様性だった。試験醸造も経験したが「実習より理論が主体。化学、微生物学、分析化学がメインだった」。ビール工場の管理者を育てようというドイツならではの教育方針に感嘆した。
  10年から醸造に関わる酪農王国は、1997年オープン。県内屈指の古参醸造所として知られる。地下300メートルからくみ上げる水と、有機栽培の二条大麦を使ったビールづくりが特色だ。麦を発芽させるモルトの製造設備も備える。
  有機栽培のモルトは粒がそろわないため、使い勝手が良いとは言えない。一般的なモルトに比べ、麦汁ろ過の作業時間が伸びる場合もある。だが環境に負荷をかけないオーガニック製品を、職人として肯定的に捉える。「制約はあるが、設立当初からの方針にできる限り対応する」
  1516年にバイエルン大公が公布した、ビール醸造の材料を「麦、ホップ、水、酵母」だけとする「ビール純粋令」を意識する。「麦の自然な甘みがしっかり感じられる、飲みやすいビールをつくり続けたい」
 (文化生活部・橋爪充)

■ピルスナーと伊豆エール
 「風の谷のビール」ブランドのピルスナーは、国内のビールで初めて「有機農畜産物加工酒類」の認証を受けた。柔らかい口当たりで、麦と酵母の甘みとうまみがじわりと広がる。きめ細かく、持ちが良い泡も長所の一つ。温泉地では、「熱海ビール」「箱根ビール」という名称で流通している。
  伊豆エールは、地元で採れた二条大麦を自社の工房で加工したモルトと、英国産モルトを使用。フルーティーな香り、口に含んだ瞬間に感じられるホップの苦みが特徴。後味の切れがよく、すっきりした印象を残す。

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