記者コラム「清流」 友好への思い忘れない

 「近代日本の国際化において大切な場所だったのだと、市民の記憶から忘れ去られるのが怖い」。ウクライナ侵攻開始から2年、幕末からロシアとゆかりのある下田では友好行事がぷっつり途絶えた。昨秋にロシアと下田の関係性を尋ねた際、在任中に交流に尽力した元市長の石井直樹さんが心情を明かしてくれた。
 その石井さんが先日、永眠した。16日には下田港開港周年事業の一環で、ロシア使節プチャーチン提督が率いて来航した軍艦ディアナ号乗組員らの慰霊祭が控える。久しぶりの関連行事となる。
 ロシア政府を断罪しつつ「政治と交流の歴史は切り離して考える必要がある」との言葉が思い起こされる。下田だからこそ発信できる平和へのメッセージもあるはずだ。石井さんが残した思いをかみしめたい。
(下田支局・伊藤龍太)

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