駿河湾サクラエビ「着実に回復」 漁獲自主規制以降、秋漁で水揚げ最大

 2023年の駿河湾サクラエビ秋漁(漁期11月1日~12月25日)が終了し、総水揚げ量は192トンと静岡県桜えび漁業組合が漁獲自主規制を導入した18年秋以降で秋漁として最大となったことが26日までに分かった。産卵場の湾奥に注ぐ富士川水系で不法投棄への監視が強まり、アユの遡上(そじょう)が増えるなど河川環境改善と資源回復基調との関連を指摘するサクラエビ漁師もいる。

12月上旬 一晩30トン超えの豊漁も  23年秋漁の操業は、22年より3日間多い通算17日間。「猛暑で水温が高く群れがまとまらなかった」(由比港漁協幹部)ため、出漁初日の11月1日は、1・1トン(22年秋漁初日は3・2トン)の水揚げに沈んだ。その後1週間の休漁を経て、8日に4トン、9日に6・5トンと上向いた。
 12月4日には一晩で31トン(船から水揚げ用の15キロケースで2千杯以上)の豊漁を記録。5、6日も連日25トン以上を水揚げし、23年秋漁のピークを迎えた。
 価格面では、23年秋漁の初競りでは水揚げ量の少なさから、湾全体で15キロ㌜当たり平均約7万9千円でスタート。水揚げが増えるにつれて下落傾向となり、12月7日と9日朝の競りでは4万円台も記録した。秋漁を通じては、約6万1千円(宵売り含まず)と約4万6500円だった22年秋漁に比べ1万4500円上昇した。新型コロナ禍が本格的に明け、伊豆の旅館や東京の料亭などで需要が戻りつつあるとみられる。
 23年秋漁の総水揚げは、22年より10トン多い192トンと、産卵前のエビを漁獲しないなどの自主規制を導入し、戦後初めて網を入れられなかった18年秋以降で最大。23年は春秋通じた総水揚げが498トンと22年の3割程度増加し、資源回復傾向が見て取れる。県桜えび漁業組合の実石正則組合長は「資源はゆっくりでも着実に回復している。来年の春漁は期待できる」とした。
 別の漁師は富士川水系で少なくとも09年以降続いた、砕石業者による高分子凝集剤入り汚泥の不法投棄に対する行政の監視の目が強まったことを挙げる。今春は富士川の支流でもアユの遡上が見られ、駿河湾沖の黒潮大蛇行の長期化にもかかわらず、湾奥の産卵場の環境改善が進んだ。
(清水支局・坂本昌信、大村花)

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